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進化するワーケーションプログラム「レボ系アクション」
今回紹介する「レボ系アクション」の前身となる「レボ系ワーケーション」は、2020年頃から、長野県千曲川流域エリア(千曲市・上田市・東御市・立科町・軽井沢町)を舞台に行われているワーケーション事業です。主導しているのは、株式会社ふろしきやの田村英彦さんと山崎哲也さん。分野や地域を超えたさまざまなプロジェクトには、これまで延べ700名以上が参加し、地域内に点在するプレイヤーたちと共に、たくさんの出会いと数多くの事業を生み出してきました。
上田市で行われたサウナ×ワーケーション。さまざまな場所を巡りながら、自分のアイディアを声に出す機会が設けられているのもプログラムの特徴
地域にある資源とは、必ずしも自然や人に結びつくものだけではない。移動する際の鉄道や、そこで提供される食、体験も資源として幅広く捉えていく
山崎さん「ワーケーション事業を通じて人生が一番大きく変わったのは、実は私なのかもしれないと思っています。普段の職場や地域という枠を越えて出会った人たちに刺激をもらい、実践として一緒に仕事をすることで、今までの自分の考え方や働き方を見つめ直し、個人事業やプロジェクトの立ち上げなど、さまざまにアップデートを重ねている実感があります」
こうした実践的なワーケーションスタイルを体系化して生まれた「レボ系アクション」は、「ワーケーション」と「シミュレーション」、「アクセラレーション」の3つの要素で構成されています。
ひとつはこれまでの流れを色濃く残す「ワーケーション」。昨年に続き、五感を使って地域を感じ、そこで過ごすからこそ生まれる実感や直感を大切にできるプログラムです。
田村さん「たとえば高原に来て、涼しいなあ、緑が気持ち良いなあって感じることってありますよね。日常から離れて心に余白を作ることって、大切だと思うんです。その中でいろんな人と出会える機会を設けて、あの考え方が素敵だな、とか、一緒に何かできそうだな、とか、地域に点在するプレイヤーと一緒に、刺激や共感が生まれる場を作っています。1日から参加でき、県内の方にもおすすめのプログラムですが、こうした機会は定期的に持つのが大事だとも思っています」
次の「シミュレーション」は、今年度から新たに始まる、越境型の人材育成を軸としたプログラムです。自ら現場に入って事業づくり体験することで、そのおもしろさを学びとり、「持ち帰ることで日常の業務にも活かしてほしい」と田村さんはいいます。
田村さん「昨年実施したプログラムでは、ワーケーションを通じて人と出会い、地域を体験し、最後に構想合宿として、それぞれの事業実現に向けた物語をつくる機会を設けました。ただ、これだけではカバーできない領域があることも見えてきて、生まれたのがシミュレーションです」
地域の課題をどのように捉え、どのように自分の行動に繋げていくか。日常の中で、これらの工程をじっくり体験する機会は、意識していないと生み出すことができません。そこで今回は、自ら事業を展開している人だけでなく、企業などの組織に所属している人が、組織に応援してもらう形で参加できる「研修」を想定し、新規事業開発に初めて触れる方でも楽しめるような内容が検討されています。
田村さん「地域を越えて複数の企業人が集まり、それぞれが育っていくための場として、シミュレーション形式の研修を行います。具体的には、千曲市内の特定の地域を『ひとつの企業』として設定し、参加者には、そこに派遣されてきた特命係長という立場になってもらう。ロールプレイングゲームの要領で、事業づくりのイロハを体験してもらおうと考えています。シミュレーションといっても、実際に住民の方との交流を設けたり、感じている課題を引き出したりする部分はかなりリアルなもの。そこにフィクションを織り交ぜて、楽しさ重視のプログラムになっているのが特徴ですね。個人の成長はもちろん、それを企業に持ち帰ったときに何が生まれるのか、という点も大切にしています」
最後の「アクセラレーション」は、昨年度の追いかけ取材で伺った構想合宿と同じ内容。今年度も冬の女神湖に集合し、じっくりがっつり時間を費やして、自らの事業を練り上げます。
山﨑さん「家族や職場、日常から離れて本当に自分のやりたい事業の企画に没頭できる時間というのは本当に贅沢だなと感じています。合宿では、私も半分参加者のような立場でプロジェクトの立ち上げを行いましたが、終了後はフルマラソンを完走した後のような達成感と、心地よい疲れを感じました」
田村さん「ワーケーション、シミュレーション、アクセラレーションと、だんだんステップが上がっていくイメージをしてもらえると良いと思います。レボ系アクションの中で、それぞれの立場やフェーズに合わせて参加できるようにしたいなと思っていて。9月14日(月)に銀座NAGANOで開催された東京キャラバンを皮切りに、11月の上田・東御・立科を舞台にしたミートアップキャラバンヘとつながっていくので、気になる方はホームページなどで情報を追いかけてもらえたら嬉しいです」
「レボ系の日常」は新しい自分と出会う交差点
冒頭から登場している「レボ系」と言う言葉について、もう少しお話を聞いていきます。
田村さん「レボ系の『レボ』は、レボリューションの省略形。日本語では『大きく変わる・変える』といった意味合いで使っています。事業を開始した2020年頃は、地域を越えた出会いと対話を通して、個々人には豊かな人の繋がりと仲間を、社会にはインパクトあるプロジェクトや事業を生み出したい、そこから大きな変化を作っていきたいと考えていました。今もこの想いは変わりませんが、一方で、何かをはじめるときに、正しさや『こうあるべき』という思考の根強さも感じていて。今はそうした思考を一旦置いて、もっと自分らしさを大切に、一歩を踏み出す実践者カルチャーを広めたい想いが強くあります」
実践者というのは、あくまで「自分がやる」という主体的な目線を持った人のことです。
田村さん「側で見ていて『こうしたら良いのではないか』と考えることと、『自分がやる』という覚悟を持って行動することの間には、大きな壁があるように思います。私たちがフィールドとしている千曲川流域には、具体的な行動に結びついているか否かにかかわらず、そうした姿勢やリーダーシップを持った人がたくさんいます。その上で、周囲と手を取り合って進めていくのが重要なのだと、私たちもこの事業を通じて痛感しているところです」
田村さん「レボ系アクションでは、そういう実践者が生み出す、世の中に希望を灯す新しい選択肢を「斜め上」』と表現しています。日常では出会えない新しい自分や人との交差点。今年度のワーケーションは、そうした「斜め上」を生み出している人や地域に気軽に出会えるツアーを企画しているので、一歩を踏み出そうとウズウズしている人たちにも参加してもらえたら良いなと思っています」
ワーケーションの良さは、自分を日常から切り離して余白を作れるところ。次の章では、地域にどんなレボ系な人たちがいるのか、関わる面々を少しだけ紹介します。
立科町、東御市、上田市から千曲市まで、広がるレボ系のカルチャー
アクセラレーション(構想合宿)の舞台でもある立科町からは、 一般社団法人信州たてしな観光協会の渡邉さんが参加。立科町では、2016年頃から「立科 WORK TRIP」という枠組みで企業型ワーケーションを推進し、女神湖の湖畔でコワーキング施設を運営するなど、地域の中にさまざまなつながりを生み出そうとしています。
渡邉さん「立科町には、賞味期限30秒のリンゴジュースがあるんです。ジューサーにリンゴを入れて搾るだけの、一見なんてことないジュースなんですが、あれが最高にうまい。カプチーノみたいに泡が立っていて、30秒で酸化がはじまってしまうから、産地の近さとか新鮮さとか知恵とか、これこそ資源だって思わせてくれる一品です」
リンゴのシーズンは晩夏から秋にかけて。それ以外の時期は、畑が広がっているだけのことがほとんどですが、生産者の話を聞いて畑を歩き、雨でも晴れでも何かしらのつながりを体感してもらえる仕掛けを用意しています。
「立科町の景色そのものが資源であって、新緑も紅葉も、やっぱり四季を通じて良いところがたくさんあります。リンゴの時期じゃなくても伝えたいメッセージは同じだし、それをコンテンツ化しているような人が現れはじめているのがおもしろいところかなと思います」
東御市からは、宿場町の趣を色濃く残す「海野宿」で、一棟貸し宿「上州屋」を運営する浅川さんが関わっています。
上州屋は、『ときと、ひとを、ほどく』をコンセプトに掲げるプライベートワークプレイスであり、宿であり、サウナであり、図書館である――という複合的な施設。クリエイティブの制作や企業のプロジェクト合宿、チームビルディングなど、幅広く活用されている場所です。
浅川さん「海野宿は、こだわりのワインにレストラン、農家さんも宿も、たくさんのコンテンツが揃っている場所です。それらをどのようにつなげて伝えていくか、大変な課題ではありますが、だからこそトライする価値があると思っています。まずはここに来て、ゆったり時間が流れる宿場町ならではの良さ、思考や人の関係性がほどけていく体験をしてもらえたら嬉しいです」
海野宿から徒歩圏内、上田市の大屋駅前にある「OYA EKIMADO(大屋駅窓)」。築126年の古民家を改装して作られた複合テナント施設を運営している安藤さんは、「人が集まり、会話が生まれ、新しいことを試せる場所」をコンセプトに活動しているプレイヤーのひとりです。
上田市と東御市という行政区分の境に位置していることもあり、なかなかムーブメントが起きていない状況を、周辺エリアとの連携によって変えていこうと取り組みを広げています。
安藤さん「毎年『大屋角打ち』を開催し、地域のワインや食、人が集まる場を開いています。少しずつですが、『大屋に行ってみよう』という人が増えていることを感じていますし、やはりここは、完成された観光地ではないからこそおもしろいのだと思っています。最終的には、大屋を訪れた人が単なる『観光客』ではなく、大屋に関わる『仲間』になっていく。そんな関係人口が少しずつ増えていくことが、これからの大屋の可能性だと思っています」
また、2026年8月に先駆けて開催されたプレ構想合宿には、長野信用金庫の近藤さんが参加。金融の視点から、実践者カルチャーについて話します。
近藤さん「2015年に長野しんきんに入社して、現在の部署では、創業やスタートアップの支援や企画立案を担当しています。販路拡大、公共連携、PFIを含むことや、DX、サスティナブル、脱炭素のローンの開発などにも取り組んでいますね。モットーは仕事を楽しむことと、スピーディーに行動すること。今は、創業カレッジの参加者が200名を越えたことを受け、その人たちの継続支援や集積の場、さらにそこに地域の経営者さんたちも加われるような場所として、コワーキングスペース立ち上げに取り組んでいます」
出身は、あんずの里として全国的に有名な千曲市の森地区だという近藤さん。地域の人として今年度始まったシミュレーションにも加わりながら、「長野信用金庫として支援体制や情報の集積ができるような活動をしていきたい」と想いを語ってくれました。
一歩踏み出した先に、頑張り合う人を応援する仕掛けを
最後にお話を伺うのは、ワーケーション初期からの参加メンバーであり、モビリティー起点のまちづくりを考え、行動し続けている清水さんです。今では企画者の一員のような立場で、新たに始まるシミュレーションや、アクセラレーションの伴走役も務めています。
清水さん「関わりはじめた当初は、MaaS(Mobility as a Service:モビリティ・アズ・ア・サービス)という新しい交通サービスの概念を、どこか特定の地域を決めてみんなで試したい想いがあって、仲間と場所を探していました。知り合いがいたわけでも、ゆかりがあったわけでもありませんが、千曲川流域エリアの魅力にハマって関わりを続けています」
新しい交通サービスについて、交通事業者と利用者の関係は、「どうしても一方通行になりがちだ」と清水さんはいいます。
清水さん「交通手段を提供する側からすると、利用者は不特定多数に見えがちです。特に地方の鉄道や路線バスは、事業者と地域住民が『双方向』の関係を作っていかないと利用者を増やすことが難しく、路線を維持していくことができません。だからこそ、みんなで一緒に議論しながら、課題を解決していく仕組みを作りたいという意識がありました。一方で、私が身を置いていたスタートアップの宿命として、少ない人数で売上を立てていく必要があるため、仕事としてひとつの地域に深く入り込み、丁寧に課題解決を行うのは現実的に難しい側面があります。パートナーに現地に入ってもらい、裏側でプロダクトを作ることもできますが、5年ほどワーケーションで地域に関わる中で『やっぱり現場に入り込まないと、本当の課題解決にはならない』と感じたんです」
そこで清水さんは、仕事の枠組みだけに捉われず、半分プライベートのような形で田村さんのプロジェクトに参加。そこで起きたのは、会社の中にいるだけでは得られない変化でした。
清水さん「地方自治体の方々とワーケーションを通じて深く話す中で人脈が広がり、県の行政アドバイザーを務めたり、観光庁の専門家として登録されたりと、新しい仕事やキャリアパスが生まれていきました。『自分には何ができるのだろう?』と自分自身にも問い直し、今は、プライベートと仕事がシームレスにつながっていく感覚がおもしろいですね。結局、私は『人』が好きなんだと思います。一生懸命頑張っている人が好きだし、そういう人を応援したい。自分が貢献できる場所をどう作っていけるか、これからも模索しながら動き続けたいと思っています」
田村さん「事業を考えたり、課題に向き合ったりするなかで『正解』ばかりを探してしまうと、どうしてもその選択肢は似通ったものになります。でも、私たちが暮らす長野県、さらにそこに暮らす人たちとの出会いは、もっと多様で、もっと個性に満ちています。出会いを通じて生まれる『らしさ』を大切に、まっすぐ進むだけでは見つからなかったはずの温かな物語を生み出したい。今年みんなで目指す『斜め上』には、そんな想いを詰め込みました」
山積する課題に対し、個人も企業も急速に変容していくことを求められる今の時代。どうせ取り組むなら少しでもワクワクする方へ、「個」という余白や可能性を持って進みたい。千曲川流域に点在する実践者カルチャーを見つけ出して編み直す「レボ系アクション」は、きっと誰にとっても、新しい自分と出会い、一歩進むための機会になっていくことでしょう。
詳細や最新情報は、公式サイトにて随時公開いたします。皆さまのご参加をお待ちしております!
HP:https://furoshiki-ya.co.jp/workationlab
note:https://note.com/workation_lab
※本事業は、「令和8年度 長野県 地域発 元気づくり支援金」活用事業です。
取材・文:間藤まりの 写真:株式会社ふろしきや
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