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特集:長野の旅欲!食欲!
「長野の秋。“おいしい”の原点に出会う旅」
地力に敬意を抱き
新しいひと皿を生み出す

 

更新日:2022/10/28

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TOP PHOTO:麻釜で野菜を茹でる片桐さん。イタリアでスローフードに触れたことも土地に根ざして丁寧に食材を選び提供する大切さを再認識させてくれたそう

 

アスリートとして感じた食の大切さ

長野県屈指の温泉街、野沢温泉。そのシンボルである外湯「大湯」のほど近くにハウスサンアントンはあります。 厨房で腕を振るう後継ぎの片桐健策さんは、アルペンスキーの元全日本チャンピオン。オーストリアを拠点に活動していた選手時代も、幼少の頃から身近にあった味噌、みりん、醤油、鰹節といった発酵調味料を持ち込み、自ら調理し食す毎日だったそう。「食べたもので身体が変わることを、アスリートとして実感してきました」。引退後は料理の道へと進み、修業を経て家業に入ります。
 

世界と地域・伝統と革新、双方向の視線

「発酵ロール」。器は地元のブナ材から削り出して制作してもらったオリジナル

左からパンパンに発酵した発酵プラム、自家製味噌、水キムチ、ブルーベリービネガー

「信州サーモンとぼたんこしょうのやたら仕立て」

村内の古民家の古材を使った趣のある館内

常に世界と地元・野沢温泉の両方を意識し、発酵が世界のトレンドになった際も「ほとんどが野沢温泉にある」と思ったそう。
料理人としてあらためて地元に、発酵に向き合い、まずは味噌や梅漬けなど伝統的な発酵食から手作りするように。今ではブルーベリービネガー、水キムチなど、じつに多様な自家製発酵食を作ります。さらに目を見張るのが、それらを使ったアイデアに満ちた料理です。
「発酵ロール」は、乳酸発酵させたビーツ、発酵プラムの果肉、鹿の干し肉の削り節などを、ブルーベリービネガーで漬けたりんごのピクルスで包んだフィンガーフードです。
「信州サーモンとぼたんこしょうのやたら仕立て」は、醤油麹で和えた信州サーモンに、信州の伝統野菜・ぼたんこしょうなどの夏野菜と大根の味噌漬けを細かく刻んだ北信濃の郷土食〝やたら〟を添えたもの。なすときゅうりの自家製しば漬け、発酵ビーツなどを使ってよりさわやかに仕上げています。
「伝統を継承しつつ、組み合わせを考えながら皿の上で新しい味わいを作り出していく即興の料理が好きです」
 

50年かけて作られる「循環のサラダ」

「循環のサラダ」。野菜は友人が営む農園「樹木」のものを中心に厳選

片桐さんが取り入れる野沢温泉のもうひとつの魅力が温泉です。「麻釜(おがま)」は、野菜を茹でたり、あけび細工の蔓を浸して柔らかくしたりする共同源泉。片桐さんも徒歩5分の麻釜に毎日通い、野菜を茹でます。普通に茹でるのとは格段に違い、温泉特有の香りのほか、甘みや旨みもより強く感じられます。
天候によって湯釜の温度は異なるため、茹でながら触れて、食べて、確認し、それぞれの野菜が持つ力を最大限引き出します。
そうして供されるのが、麻釜で茹でた10種以上の野菜を塩とオリーブオイルでマリネした「循環のサラダ」です。
「山に降った雨をブナの森が吸い込み、それが僕たちの暮らしに届くまで50年かかるといわれています。その水があってはじめて野菜は育ち、温泉が湧きます。つまり、シンプルに見えますが、この料理は50年かけて作られたといっても過言ではないんです」
 

循環のひとつとなることを目指して

これからは薪という〝人類のプリミティブ〟な料理方法も取り入れていく予定です。それは、発酵、温泉、薪という人の、暮らしの原点に立ち返り、それを通じて自身も野沢温泉に生きる調理人として食のあり方を伝え、守ることで、循環の流れを生み出したいという強い意志のもとたどり着いた形。さらなる躍進が耳目を集める料理人です。

Haus St. Anton

長野県長野市柳原1893-6
☎ 0269-85-3597
*前日までの要予約
公式サイト

撮影:平松マキ、取材・文・編集:山口美緒・塚田結子(編集室いとぐち)

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