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土地のものをいただく 「農と食」

田畑を耕し育てた野菜やくだもの。山を歩き採取した山菜やキノコ。それらを丁寧に下処理して料理したひと皿。私たちに豊かな土地の恵みをもたらす人たちは、私たちを自然とつなげてくれる存在でもあります。

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TOP PHOTO:夏と秋の端境期に採れた野菜は個性的なものばかり。鮮やかな青い花はバタフライピー。あやさんお気に入りのマメ科の植物で、花をお茶に入れます

 

長野のおいしいを支える農業

長野県には、その豊かな風土で育まれた、さまざまな山野草や農産物を楽しめる店が多くあります。長野の旅では、そんな滋味にあふれた料理を求めて訪れる人も多いのではないでしょうか。長野を舞台に腕を振るう料理人を支えるのが、すぐ目の前にある自然の山や川、そして、田畑を耕す農家のみなさんです。
料理人とコミュニケーションを取りながら旬のもの、目新しいもの、安全なものと、ニーズに応えて農産物を栽培します。そんな農家がいるからこそ、長野の料理シーンはさらなる彩りを放ちます。

 

農業を楽しみ、安心な野菜を育てる

五味 航(わたる)さんとあやさんが営む「つむぐ農園」は、北アルプスを望む塩尻市片丘にあります。航さんの両親が営む岡谷の農園を離れ、夫婦で独立したのが2021(令和3)年4月のこと。なだらかな傾斜地に点在する畑で、主力のとうもろこしほか30種以上の野菜を育てています。
農園を訪ねた9月上旬は、一番人気のスイートコーンが終わり、秋の野菜が充実するまでの端境期。「今は何もないんですよ」と言いつつも、畑をまわると「もちもち太郎」という名の紫とうもろこし、サラダでも食べられる2色のケール、甘い香りが特徴のフェンネルなどなど、個性的な野菜がずらりとそろいました。
「自分たちが好きなものしか作らない。変わった野菜は育てていても楽しいです」。その言葉どおり、ふたりが大切にしているのは、農業を楽しむこと。そして「子どもたちが畑でパッと採って食べても安心なこと」。農薬は極力使わないため「チョウチョが飛んでいるのは、うちの畑くらい」と航さんは笑います。

紫とうもろこしは背丈を超える高さまで育ちます
サラダケールはアクが少なく生でも食べられます

直接つながる人に野菜を届けたい

つむぐ農園の販路はECサイトを通じた直売が9割を占めます。「お客様の声を聞けるのが楽しい」というあやさんは、農園のSNS更新を担当し、こまやかなやりとりでファンを増やしています。
飲食店へも提供していて、そのひとつが塩尻市奈良井の「BYAKU Narai」。料理長の友森隆司さんとあやさんは以前からの知り合いで、宿の開店をきっかけに取引がはじまりました。「トモさんから言われて育ててみたのが、トロンボーンチーノという名のズッキーニです。料理人の発想は独特で、野菜作りにフィードバックできることが多い。刺激を受けます」。
「農家は泥臭い仕事もありますが、子どもたちには楽しむ姿を見せたい。自分の手で生み出したものを、お客さんにおいしいよって言われるのが一番うれしいこと。大規模流通で食を守ることは大事ですが、そこは敵わないから、うちは手の届く範囲の人に、いいものを届けていきたいです」

実家が兼業農家の航さんとアパレルショップ店員だったあやさん。今はふたりで農園を切り盛りします

信州塩尻 つむぐ農園

長野県塩尻市片丘10671-12
tsumugunouen@gmail.com
公式Facebook

撮影:宮崎純一、取材・文・編集:山口美緒・塚田結子(編集室いとぐち)

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