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採れたて新鮮野菜がおいしい!夏に行きたい長野県の農家レストラン

野菜がおいしい都道府県ランキングでは、常に上位にくる長野県。特に今、夏野菜が最盛期を迎えています。
新鮮夏野菜を自ら育て、調理し提供する。そんなサステナブルな農家レストランをご紹介します。

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日本の夏、長野県の夏
野菜がおいしい季節が到来

四方を山々に囲まれた地であるからか、長野県で夏を感じられる期間は短い。
そんな貴重ともいえる長野県の夏を満喫するためにも、今年は“新鮮な夏野菜”を堪能したいと思う。

“県民あるある”だと思うが、長野県に住んでいると、野菜はかなり身近な存在。
会社員だった頃は、夏になると誰かの実家で採れたトマトやキュウリが玄関先に置かれる風景が日常でもあった。
しばらく長野県を離れ、野菜は買うものだと認識していた私にとって、職場の「ご自由にお持ちください」はありがたく、夏の楽しみのひとつでもあった。


キュウリにトマト、ナスにズッキーニ、オクラ、トウモロコシ
そのまま食べても充分おいしい、長野県の夏野菜。

そんな夏野菜を自ら育て、野菜の持つポテンシャルをさらに引き出してくれるシェフがいるという。そんな彼らの元を訪ねてみたい。

白馬で体感する“サステナブル・ガストロノミー”
「LE VERDURE(レ ヴェルドゥーレ)」

ランチ、ディナーともにコースのみ(5,500円~)。パスタやパンは自家製の小麦粉を使用

季節を感じる珍しいイタリア野菜を最高の状態で

月に一度「ピザの日」を開催。8種類の中から好きな1枚+前菜で2,500円

畑仕事をする守本シェフ。野菜からインスピレーションを得てメニューに仕上げることが喜びという

北アルプス山麓に抱かれた白馬村。広大な農地で多くの農作物を作り、レストラン、カフェ、グランピング施設などを経営する農業法人「白馬農場」が、2023年4月、新たなイタリア料理店をオープンさせた。
白馬から大町へ抜ける県道を少しだけ入ると、周りの景色とは異なる洒落た建物が目に入る。知らないと通りすぎてしまうような隠れ家レストラン、それがが「LE VERDURE」だ。

「この店のコンセプトは“この場所・この時間半この季節にしか出逢えない、白馬の魅力を味わう”。この店で、野菜本来の価値を感じてほしい。成熟した一番おいしい瞬間をこの場所で味わってほしい、そんな想いでこの店をオープンさせました」。この日たまたまお店にいた会長の津滝さんが話してくれた。

農作物は出荷するときは未完の状態。購入し食すときが、実は熟し食べごろになる。まだ少し固いからもう少し経ってから食べようと冷蔵庫の奥へしまいこみ、この“一番おいしい瞬間”を逃してしまうという経験が一度や二度ではないのは私だけだろうか。

ここでは、野菜のプロフェッショナル集団が育てた素材を、シェフが目利きし、一番おいしい状態で収穫。野菜の種類によって調理法を変え、さらにおいしいスペシャリテへと仕上げていく。
「野菜のおいしさがストレートに伝わるのがイタリア野菜だと、僕は思っているんです。素材の味を大事にしているので、イタリア料理はシンプルなものが多いんですよ」(津滝さん)

この店で腕をふるうのは、シェフの守本直樹さん。津滝会長がずっと思い描いていたイタリア料理店オープンの話を知人づてに聞き「野菜を作る料理人になること」が夢だった守本さんは、即白馬への移住を決めた。

毎朝畑へ出向き、野菜を見極め、その時その瞬間、野菜の味が一番引き立つ料理をその日に決める。自分で作った野菜を自分で調理し提供するなんて、料理人としては理想的な環境ではないだろうか。
「都会で名の知れたシェフたちが“ローカルなモノにこそ価値がある”と、今、地方に注目しています。白馬はそういう方たちが多く集まる場所でもあるんですよ」(津滝さん)

こちらでいただけるのはランチ、ディナーともにコースのみ。まずは素材本来の味がダイレクトに感じられる“新鮮な生野菜”を。次は焼いたり揚げたり、守本シェフが野菜のポテンシャルを引き出した至高の一皿を。形が悪い野菜や端材はスープやだし、ドレッシングなどに生かし、大切に育てた野菜を最後までおいしくいただく。これぞ、サステナブル・ガストロノミーを実践する地産地消レストランだ。

雄大な山並みが望めるロケーションもごちそうのひとつ

昼夜で趣がかわるロケーションも魅力のひとつ。ディナーは夕暮れ時のマジックアワーの時間帯に合わせて料理を提供

カウンター席からは、守本シェフのライブ感溢れる動きが間近で楽しめる

古民家で使用されていた梁や柱を移築。新しさの中にも積み上げた歴史を感じる趣ある空間

2階が宿泊スペースとなっているオーベルジュタイプ。時間を気にせず優雅な美食ステイが叶う

「LE VERDURE」から車で5分ほどの場所にある『白馬農場ジェラテリア』では、野菜や果実のフレッシュさを生かしたジェラートが楽しめる

通り沿いではなく、坂道を少し上った先にこの店は建つ。あえてこの場所を選んだのは、窓から見えるこの雄大な景色を存分に楽しんでもらいたいから。今の季節は新緑がまぶしく、秋になると紅葉が色づき、冬は雪景色。季節や時間帯によって、さまざまな風景を見せてくれる、このロケーションも立派なごちそうのひとつだ。

2階は1日1組限定の宿泊スペースとなっているので、時間を忘れ、ゆっくり食事とお酒を堪能できる。部屋から眺める景色もまた格別。ベッドルームは2部屋あり最大4名まで宿泊可能なので、友人や家族を招いてもゆっくり寛げる。

翌日は、白馬農場が運営するジェラテリアへ。「農かふぇ」に併設されたジェラートショップで、隣にある広大な畑で収穫したブルーベリーをはじめ、トウモロコシ、枝豆などの夏野菜のフレーバーも楽しめる。 ほかにも、グランピング施設や農業体験など体験型のアクティビティもそろうので、家族の思い出作りにも最適だ。

「白馬の夏は一瞬に過ぎる」と津滝さん。短い白馬の夏を、ここならとことん味わいつくすことができそうだ。


〈LE VERDURE(レ ヴェルドゥーレ)〉
住所:長野県北安曇郡白馬村神城15560
TEL:0261-85-2161
https://www.farmhakuba.jp/ristorante.html
Google Maps

身土不二の農家食堂
「傍 katawara」

野菜プレート、天ぷら5品、そば2種が付いた「天ぷら&おそば」(1,870円)。温かいそばに変更可

右が「あっさりトマトつゆ」。トマトの主張はそれほど強くはなく、後味がほんのり香る。「変わりつゆ」は春はさくら、秋はきのこなど季節によって変わる

「あっさりトマトつゆ」などに使われるトマトは5種類ほどを栽培

無農薬栽培で育てるのは難しいといわれるトウモロコシ。おいしく育ったら「季節のスープ」に登場

イタリアンの後は和食かな。やっぱりそばかと思い立ち、茅野市にある「傍 katawara」へ。のどかな里山の風景が続く八ヶ岳エコーライン沿い、仲の良いご夫婦が営む農家食堂だ。

今にも雨が降りだしそうな危うい天候だったので、着いて早々、ご家族で管理されている畑に連れて行っていただいた。
約束を取り付ける電話口で「そんな大規模なものではなく、家庭菜園のようなものなので。企画の趣旨にあっていなかったらごめんなさい」とご主人の高志さんから聞いていたので、期待せずに誘導された車の後を着いて行く。途中、小さめの畑を何度も通りかかり、その都度「家庭菜園ならここの畑かな。あれ違った」「あ、こっちだったかな、あ。これも違うか」を繰り返し、目的地へ。

着いてびっくり。「全然、家庭菜園規模じゃないじゃないですか!」とワタシ。「え、そうですか?お店で出す分しか作っていないので、本当に小規模でお恥ずかしいです」と高志さん。屋外の2つの畑に加え、立派なビニールハウスが3棟ある。
「もう10年やっていますが、無農薬で育てているので、虫が付いたり、成長しなかったりなど、まだまだ失敗ばかりなんです」(高志さん)
トマトやトウモロコシをはじめ、現在は20~30種類ほどの野菜を育てているが、はじめたころは50種類以上も作っていたという。「当初は手当たり次第でした。たくさん失敗してたくさん学んで、だんだん感覚をつかめてきたかなという感じです。でもまだまだです。自然相手なので難しいですよね」(高志さん)。

トマトやズッキーニ、インゲンなど、夏は色とりどりの野菜が実をつける。お店で出すフードメニューは至ってシンプル。そばと前菜がセットになったメニューが中心だ。今朝収穫した野菜を見て、さおりさんが前菜(野菜プレート)の内容を決める。

そばつゆは昆布やカツオ、サバからとった魚介の「かえしつゆ」、「変わりつゆ」、「こっくりごまつゆ」の3種類。
夏の「変わりつゆ」は「あっさりトマトつゆ」。畑で育てたトマトの旨味成分だけ抽出し、だしと松本の老舗醤油屋さんの醤油のかえしを合わせた、この店ならではのそばつゆだ。そばは八ヶ岳産のそば粉を使った自家製麺。「白そば」と、そば殻のまま挽いた「黒そば」の2種類を味わえる。「おいしいお蕎麦屋さんはたくさんあるので、ボクたちにしかできない形を追求していかないと難しいかなって。それで今のスタイルができあがりました」(高志さん)

自分たちが大切だと感じるものを後世に伝えていきたい

仲良し夫妻。二人とも茅野市出身だが、東京で出会い結婚し2011年、東日本大震災を機にUターン

店内のほか、桜の木があるテラス席もあり。今年の9月で10周年を迎える

レジ横では「テイクアウトおやつ」を販売。写真はそば茶入りのオートミールクッキー

駐車場はゆったり。自家農園はここから歩いて15分ほどの場所にある

敷地内にある140年以上前に建てられた蔵では、たまにイベントを開催

野菜とそばを売りにした「傍katawara」のスタイル。店の評判は上々で、週末は行列ができるほどだ。「お店の中が狭いだけなんですよ。来てくださる方にはお待ちいただくことになってしまうので申し訳ないんですが…」と、さおりさん。夫婦そろって腰が低い。でもそれもきっと人気店である所以なのだろう。

観光客も多く通る道沿いなので、長野県の魅力を知ってもらいたい、地元を好きになってもらいたい、そんな想いで「自分たちで作れないものは、なるべく地元のものを使うように心がけている」という。

そしてもう1つ、2人が大事にしているのがフードロスに関して。「野菜は捨てるものがほとんどないように、そばつゆに使ったトマトの絞りカスはパウンドケーキに入れてケークサレに」(さおりさん)。「試しにやってみたらおいしかったんだよね」(高志さん)。

自然の恵みを余すことなくいただき循環させるサステナビリティな農家食堂。
夏野菜を求めるとSDGsにつながるのか。今年の夏は発見がいっぱいだ。


〈傍 katawara〉
住所:長野県茅野市泉野5931-100
TEL:0266-55-6101
https://www.applenoodleinc.work/
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まだある農家レストランを訪ねて。

北アルプスを望むロケーションに建つ高原レストラン ©GoNAGANOアーカイブ記事

「なるべく旬の野菜と合わせるなど工夫して、見て楽しい、食べてもおいしい料理に」(児玉さん) ©GoNAGANO観光データベース

長野県にはまだまだサステナブルな取り組みを行う農家レストランやカフェがいっぱい。大町市・中山高原にある「農園カフェ ラビット」は、長野県の「信州ジビエマイスター」「おいしい信州ふーど(風土)名人」でもある、児玉信子さんがオーナーシェフを務めるレストラン。自家農園で作った無農薬野菜、ジビエを中心とした料理を提供している。


〈農園カフェ ラビット〉
住所:長野県大町市大町8295-48中山高原
TEL:0261-85-2120
https://cafe-rabbit.com/
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有機米のおにぎりと手打ちそば

米本来の味が楽しめるおにぎりやそばなど、おいしい水を生かしたメニューがそろう ©GoNAGANO観光データベース

稲本来の力を生かす減農薬栽培、無農薬栽培へ取組んでいる ©GoNAGANO観光データベース

有機栽培農家「細井ファーム」が運営する農家レストラン。無農薬、無化学肥料で栽培したお米で握ったおにぎり。自家栽培のそば粉で店主が毎日手打ちをする蕎麦などが楽しめる。


〈蕎麦とおにぎり農家れすとらん 信州坊主ほのか〉
住所:長野県安曇野豊科高家781‐3
https://honoka.naganoblog.jp/
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取材・文:大塚 真貴子  撮影:平松 マキ

<著者プロフィール>
大塚 真貴子(Ohtsuka Makiko)
長野県出身。東京で情報誌を中心とした雑誌、書籍などの編集・ライターを経て、2008年に地元である長野市にUターン。地域に根差した出版社において情報誌の編集に17年間携わり、フリーランスのローカルエディター・ライターとして独立。趣味は飼い猫(ねこみやくん)を愛でること。

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