
須坂市「髙顕寺」にて、現在87代目となる住職による講話に耳を傾ける
妙徳山は長野市と須坂市の境にある標高1200mあまりの山。そのふもとにあるのが「髙顕寺」です。開基は今から1250年ほど前と伝えられる古刹で、1792年(寛政4年)に建立され、本堂は1866年(慶応2年)と1906年(明治39年)に修築しました。
まずは髙顕寺の境内、不動明王がまつられている「大谷不動里堂」に集合し、現在87代目となる住職の講話からツアーがスタート。髙顕寺、大谷不動尊の歴史や不動明王の成り立ちなど、余談をはさみながら楽しいお話をお聞きし、次のポイントへと向かいます。

住職の楽しい講話にすっかり引き込まれてしまいました

画家や市民が寄贈した本堂の天井絵
江戸時代には商人などが行き来し賑わった大笹街道
大笹街道は、江戸時代に善光寺平と現在の群馬県を結ぶバイパスとしてつくられた街道です。関東へ物資を運ぶ重要な脇街道でした。
善光寺から関東に出るためには、北国街道や中山道を通るのが一般的でしたが、大笹街道を使うことで、江戸まで最短距離で移動でき、距離が短くなることで輸送コストをおさえることもできるので、一時は北国街道をしのぐほど賑わったといわれています。
起点は北国街道の宿場町・福島宿(須坂市福島町)。鮎川に沿って段丘をのぼると仁礼宿に至ります。仁礼宿からは菅平を越える険しい山道となり、冬になると雪でさらに過酷になったといわれています。冬の厳しさに反し、春から秋にかけての街道は自然の彩りに満ちており、善光寺参りや草津温泉への湯治を目的に、多くの旅人や文人なども通ったといわれています。「東海道中膝栗毛」の作者・十返舎一九もそのひとり。山道が難路であったことを書き残しています。
山岳ガイドによる参道トレッキング
車で送迎してもらい大笹街道の黒門入口に到着しました。黒門は、信仰の対象と道中を区切るために建てられたといわれており、大笹街道と大谷不動の分岐点に設置されています。ここから大谷不動尊まで1.5キロほどの山道を登ります。
道中のガイドをしてくれたのは株式会社マウンテンワークス代表の三苫育さん。元北アルプス南部常駐隊員で、現在は多数の山岳ガイドのほか、山岳調査や捜索なども行っている山のスペシャリストです。

山岳ガイドの三苫育さん

いつ建立されたかはわかっていませんが、1983年(昭和58年)に復旧。現在は黒御影石製になっています
三苫さんに続いて山道を進みます。トレッキングと登山の中間くらいの勾配なのですが、運動不足かつ、ほぼ登山経験ゼロの筆者の感覚でいうと「正直、けっこうキツイです…」。
澄んだ空気、紅葉が色づく山林の景色、途中にある石仏などの解説を聞きながら、大谷不動尊を目指します。

この日、上りはじめはまだ紅葉がはじまったばかりでした

山の上の方は見事に紅葉が色づいていました

街道には険しい冬の道で行き倒れた人のための供養と道中の安全を願ってたてられた石仏が点在しています
1時間ほど歩き大谷不動尊に到着。黒門から登山道だと思ってのぼってきた道、実は修行僧や参拝者が歩いて通った参道とのこと。「長い参道だったなぁ」と振り返る間もなく「では、滝まで行ってみましょうか」と三苫さん。内心「まだ歩くのか…」と思いましたが、こんな貴重な機会滅多にないので、気持ちを奮い立たせ後に続きます。
500mほどのぼった先にある「一の滝」まで続く道は、先ほどより道幅は狭く、勾配もある道のりでした。ゴツゴツした岩をのぼった先にあるのが直瀑30mの「一の滝」。この日は天気が良く、流れも穏やかだったので、かなり近くまで寄って流れ落ちる滝の様子を眺めることができました。水流と水音、そしてマイナスイオンをたっぷり浴びて、道中の疲れがふっと和らいだ瞬間でした。

ゴツゴツした岩を登った先に一の滝があります

迫力ある滝を間近で見ることができました

山の上から望む北アルプスの山並み
大日大聖不動明王が祀られる「大谷不動奥の院」
大谷不動奥の院は日本三大不動尊のひとつ「米子不動」と背中合わせの位置に建っています。建設は江戸末期から明治中期といわれ、2009年に120年以上風雪に耐えてきたお堂の建て替えを行いました。
大谷不動を管理しているのは、地域の山林を維持管理する一般社団法人仁礼会の方々。山と森を守るためにさまざまな活動を行っています。
須坂市を流れる百々川(どどがわ)や米子川は、上流にあった鉱山の影響で赤褐色に変色。鉄分などを含んでいるため、生き物や作物が育たないといわれてきました。仁礼地区に流れる宇原川は水質が良いと、昔から重宝されたといわれています。
そういうことから大谷不動奥の院は、水の神や五穀豊穣の神として崇められ、善光寺平にまで信仰が広がっていったといわれています。

山の上で心を清める坐禅と護摩焚き体験
大谷不動尊に到着後、昼食をいただいた後は本堂で瞑想を体験を行います。姿勢を正し、心を無の状態にすることで集中力が鍛えられるといわれる瞑想。実際体験してみて、開始早々は、物音が気になったり、家に着いたら何を食べようかな、などと雑念に気を取られていましたが、徐々に座っていることだけに意識を集中できるようになりました。

そしていよいよ護摩焚きがはじまります。不動明王が見守る神聖な雰囲気のなか、副住職が護摩を焚き、住職と副住職による読経がはじまります。各々が願うことを心の中で唱えながら、護摩焚きの様子を見守ります。赤々と燃え盛る炎と太鼓や鐘が鳴り響く読経の迫力に始終圧倒される時間でした。
たくさんの人が参加し行うイメージがある護摩焚きですが、今回はツアーの参加者のみのプライベート体験。贅沢かつ貴重な時間を過ごすことができました。

心身健康を目指す、ヘルスツーリズムのすすめ
山から下りた後は須坂市に新しくできた「須坂健康の森 RVリゾート」へ。日帰り温泉施設「湯っ蔵んど」に隣接するトレーラーハウス型の宿泊施設です。疲れた心と体を癒やし未病を防ぐ“ヘルスツーリズム”に力を入れている施設で、滞在しながらさまざまなプログラムを体験できるのが特徴です。
今回私が体験させてもらったのは「ニュースキャン」と「ヒーリング」。「ニュースキャン(波動検査装置)」は、体から発する周波数を測定し、健康状態をチェックし、自己回復力を促す効果が期待できるという機器です。そして、優しい手の温もりに包まれるタッチヒーリングを施術してもらい、山歩きで疲れた体がとてもすっきりしました。

キッチン、風呂、トイレ完備なので長期滞在にも最適

足のトリートメントのおかげで翌日は筋肉痛になりませんでした

「健康の森RVリゾート」独自のメソッドで癒してもらいます
髙顕寺住職の講話からはじまり、大谷街道を歩く山道トレッキング、大谷不動尊での瞑想と護摩焚きなど。一連の体験を通し自身の心と向き合った後は、「健康の森RVリゾート」で自身の体としっかり向き合う。1日を通して心身が浄化され、健康への意識がかなり高まったことを実感しました。
須坂で体験できるヘルスツーリズムツアー。草木の芽吹きを感じられる来春のツアー再開を今から楽しみにしています。
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