
日本三大不動尊で御祈祷をうけツアースタート
国指定の名勝「米子大瀑布」。不動滝と権現滝、ふたつの滝が織りなす荘厳の風景を背にして建つのが「米子瀧山不動尊 開山の地奥之院本堂(飛び地境内)」。奈良時代に開山された古刹で、滝そのものをご神体として崇められています。そしてここから12㎞手前にあるのが「本坊米子瀧山不動尊(里堂)」。本日のツアーはこちらからスタートします。
「本坊米子瀧山不動尊(里堂)」は、古くから「米子のお不動さん」として親しまれており「本尊不動明王」は日本三大不動尊の一つに数えられています。
こちらで住職から歴史や民間信仰としての背景を伺ったあと、滝行のための御祈祷を受けました。
神聖な米子大瀑布は、古くから地元の人々にとって、自然の力を象徴する神聖な場所とされてきました。そのため、滝を御本尊として祀る米子不動尊では、滝行を行う人の身を清める意味でも事前に御祈祷を受けることになっています。
米子不動尊や民間信仰としての歴史を伺うことで、自らがこれから体験する一連の流れがただのアクティビティではなく、意味のある行為に繋がると感じました。

御祈祷が終わると、不思議と清々しい気持ちが胸に広がり、これからの滝行やトレッキングに向け、心の準備が整ったような気がしました。
そして御祈祷を終えた後は、ツアーガイドと共にトレッキングを開始する場所まで車で移動します。山道への入口には駐車場があり、整備されたトイレも完備されているので安心して旅の準備をすることができます。

滝へ続く道中は、自然の中を歩くトレッキングコースになっています。特殊な装備などは不要。途中、岩場もありますが、軽登山として楽しめる程度の道のりを進んでいきます。

四季折々表情を変える山林の景色を楽しみながら進む道中。振り返ると善光寺平を見渡せるスポットに到着しました。県外の方にはもちろんですが、いつもと違う視点から長野市の風景をのぞめるとあって、地元の方にもおすすめのコースです。

ただの石に見えていたものが、ガイドさんから「昔の人が雨宿りをする場所だった」ということを聞き驚きました。スポットごとに背景の説明を聞けるので、自分がしている体験の価値を上げてくれている気がします。

先へ進むにつれ、道は次第に険しくなり、急な上り坂が続いてきました。そこまで負荷は高くないものの、途中から携帯電話の電波が入らなくなるため、一人での登山は慣れていないと危険です。本日のように複数人でのツアーだと安心だと実感しました。

そうして進んでいるうちに、徐々に滝の音が聞こえはじめ、だんだんと滝の姿が見えてきました。岩肌を削るように、轟音とともに豪快に流れ落ちる光景は、言葉では言い表せないほど壮大で、自然の力強さに圧倒されました。

煩悩を取り払い集中力が増すといわれる滝行体験で心を浄化
山小屋「根子岳山荘」に到着しました。2023年に開通したトレッキングコースに合わせて、宿泊できない状態だった山荘が少しずつ復旧され、2024年はカフェがオープン。現在は、宿泊施設、温泉を整備するための支援を募っています。
こちらで白装束に着替え、滝行に備えます。

この日は晴れていたとはいえ、ここは標高1,300mほどの場所。滝行を行うところまでの移動は白装束に草履だけということもあり、寒さが身にしみます。歩く地面は滝の影響で湿っているので、草履での歩行は滑ってしまわないか心配でしたが、思いのほか安定して歩くことができました。
白装束を身に着けていることもあり、完全に非日常の体験をしているんだという感覚があるなか、目的地まで進みます。50m以上離れた場所に立っていても風向きによっては水しぶきがかかるので、遠くからでも滝の迫力、そして水の冷たさを感じました。

滝行を行う場所への入り口に到着。塩で体を清めてから滝のなかへと進んでいきます。 水の中に足を入れると水の冷たさに驚きました。冷水が身体に触れていくにつれ身が引き締まり、心拍数が上がっていくのを感じます。
住職やツアーガイドのアドバイスのとおり、呼吸を止めずに、深い呼吸を繰り返すことに集中して滝が落ちる場所に進んでいきます。ここで膝よりも高い位置まで水に浸かります。全身に滝の水がかかり、顔や身体に打ちつけるたびに、不思議と寒さは薄れていき、心の中の不安や悩みが流れ去っていくのを感じました。
御本尊でもある滝に打たれるときは、住職よりレクチャーをいただいた金剛合掌で祈ります。そうしているうちに心身ともに強くなっていく自分を感じることができました。
滝行を終えた後、身体は冷え切っていましたが、心は非常に軽く、清々しい気持ちに包まれていました。この滝行を通じて、自然の力を直接感じることができ、普段の生活では味わえない深い浄化を体験したと実感しました。

「根子岳山荘」の淹れたてコーヒーで和みの時間を
滝行を終え「根子岳山荘」に戻ります。「根子岳山荘」には温水シャワーも完備されているので、一気に体温が回復しました。 滝行を行う上で、特に秋などの気温が下がる時期に行う場合は非常にありがたいサービスです。シャワーで体を温めて着替えてから、持参した昼食を食べました。
食後には、こだわりのコーヒー豆を使用したコーヒーをいただき、さらに体が温まりました。カフェでは須坂市の洋菓子店が作ったケーキとドリンクのセットも楽しめるので、次に来た時はぜひいただいてみたいと思います。 カフェスペースには森林を見渡すデッキもあり、自然を感じながら休憩をすることができます。山荘のマスターから、近隣の観光情報なども聞き、アットホームな時間を過ごすことができました。

米子硫黄鉱山跡の歴史に思いを馳せ帰路へ
帰り道は「根子岳山荘」付近に存在していたという、米子硫黄鉱山跡を通りました。1743年(寛保3年)に採掘が行われるようになりました。明治中期には、複数の企業が鉱山経営にのりだしましたが、徐々に硫黄需要は減少し、1960年には閉山したという歴史がある場所です。

傾斜のある山々のなかに、突然広大な平地が現れました。硫黄の需要が増加した第二次世界大戦時には、この地で鉱山従業員やその家族 1,500人程が暮らし、精錬所のほか、社宅、売店、学校、映画館、診療所、共同浴場があり、ひとつの集落をとして成り立っていたとうことをツアーガイドが説明をしてくれました。案内板に書かれている当時の地図を見ながら、今はなき集落を想像しました。一人では見落としがちな史跡の意味や背景を知ることで、思いも深まり有意義な時間になりました。

山道を下り、「米子瀧山不動尊 開山の地奥之院本堂(飛び地境内)」へ戻り、修了式を行いました。住職より、滝行を行ったことを証明する終了証をいただき、一緒にツアーに参加した方やガイドの方と一日を振り返りツアーは終了しました。
すべての行程において自分と向き合う機会が多くあり、一日を通して身を清められた気分になりました。人生の節目に滝行や身を清める行為を行う理由が分かったように感じました。

四季折々でまた違った情景を感じることができるので、今度は違う季節に参加してみようと思います。
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