
TOP PHOTO:©NPO法人 海野宿トラスト
海野宿とは
海野宿の歴史

長野県東御市に位置する宿場町『海野宿(うんのじゅく)』。北国街道の宿場として江戸時代初期・1625年(寛永2年)に開かれました。往時は伝馬屋敷(※)や旅籠(はたご)が軒を連ね、加賀藩など北陸諸大名の参勤交代や善光寺参詣の旅人で大いににぎわったといいます。
明治時代に入り宿場としての役目を終えると、養蚕業が盛んになり、それぞれの家には蚕室(棟)が建てられたりと、養蚕の村としてまち並みも変化していきました。
現在の海野宿には、江戸時代の旅籠屋造りや二階を張り出させた出梁造り(だしばりづくり)、かやぶき屋根の町屋、明治時代以降に建てられた蚕室など約100棟が現存。さまざまな時代を象徴する建築が調和し、宿場情緒が漂う景観をつくっています。
歴史的価値が評価され、1986年(昭和61年)に文化庁の「日本の道百選」、1987年(昭和62年)には国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されました。以降も保存活動が続けられ、往時の風情と人々の営みが共存するまちとして訪れる人を魅了しています。
(※)伝馬屋敷(てんまやしき):人馬を提供する義務を負っていた問屋や家、その屋敷地
海野宿の見どころ

情緒あふれるまち並みが魅力の海野宿。立ち並ぶ建物には、江戸時代・明治時代それぞれの建築様式が見られます。
中でも、二階部分の出格子が長短二本ずつ交互に組み合わさった「海野格子」は、海野宿ならではの意匠です。また、屋根の妻壁を高くした本卯建(ほんうだつ)、軒下に造られた軒卯建(のきうだつ)といったものも江戸時代の名残り。街道中央を流れる用水と石橋も、当時から変わらず受け継がれています。
明治時代の建築様式としては、蚕の飼育に必要な通気のために二階の屋根に設けられた小屋根(気抜き窓)や、二階と一階の屋根の間に意匠を凝らした袖卯建(そでうだつ)などが特徴です。まち歩きの際は、それぞれの建物の細部にも注目してみると、時代ごとの工夫や生活の跡が見えてきます。
海野宿の詳細は以下もご覧ください。
☞ 信州とうみ観光協会公式サイト
☞ NPO法人 海野宿トラスト公式サイト
海野宿内のスポット
TRAVEL STOP うんのわ

海野宿に到着したらまず訪れたいのが『TRAVEL STOP うんのわ』。築100年を超える古民家を改修し、“旅の停留所”をコンセプトにした滞在型観光拠点です。観光案内所や休憩スペースのほか、宿泊施設とレストランも併設。さらにレンタサイクルの貸し出しもしています。
レストラン「古民家 Ristorante & Caffe 菜花」では、地元の旬の食材を使ったランチやカフェメニューを提供。予約制のディナーでは、本格的なコース料理が味わえます。
観光案内から休憩、食事、宿泊まで、旅に必要な機能がそろうスポット。海野宿はもちろん、湯の丸高原や八重原など周辺エリアへ足を延ばす際の拠点としても便利です。

TRAVEL STOP うんのわ
【住所】長野県東御市本海野1013(Google Maps)
【アクセス】上信越自動車道「東部湯の丸IC」から車約9分、しなの鉄道「田中駅」から徒歩約27分、しなの鉄道「大屋駅」から徒歩約23分
【詳細・問い合わせ】公式サイト
海野宿資料館

海野宿の成り立ちや明治の頃に盛んだった養蚕文化を紹介する『海野宿資料館』。建物は寛政年間(1790年頃)のもので、宿場時代を象徴する旅籠造りと明治・大正・昭和初期と養蚕・蚕種業に対応した造りを併せ持つ、海野宿らしい建築です。
館内には、奈良時代から続く海野郷の歴史や、豪族・海野氏に関する資料、宿場の暮らしや養蚕にまつわる道具などを展示。「海野宿玩具館」との共通入館券もあり、あわせて訪れるのもおすすめです。
海野宿資料館
【住所】長野県東御市本海野1098(Google Maps)
【アクセス】上信越自動車道「東部湯の丸IC」から車約8分、しなの鉄道「田中駅」から徒歩約23分、しなの鉄道「大屋駅」から徒歩約27分
【詳細・問い合わせ】公式サイト
【備考】12月21日~翌2月末日は冬季休館
海野宿玩具館

全国各地の郷土玩具を紹介する『海野宿玩具館』。長野市出身の故・平沢長久氏が約40年かけて収集し、東御市に寄贈したコレクションを中心に公開しています。
地域ごとに並ぶ素朴な造形の玩具の数々。子どもの遊び道具であると同時に、魔除けや祈願の意味を込めたものも多くあります。
館内には、農民美術運動の先駆者・山本鼎(やまもとかなえ)らが手掛けた作品も展示されています。
海野宿玩具館
【住所】長野県東御市本海野855-1(Google Maps)
【アクセス】上信越自動車道「東部湯の丸IC」から車約9分、しなの鉄道「田中駅」から徒歩約27分、しなの鉄道「大屋駅」から徒歩約27分
【詳細・問い合わせ】公式サイト
【備考】12月21日~翌2月末日は冬季休館
白鳥神社

海野宿の東端に鎮座する『白鳥神社(しらとりじんじゃ)』は、平安・鎌倉時代の豪族・海野氏の氏神として創建され、戦国時代には真田氏もあつく信仰を寄せた神社。のちに地域住民の産土神として崇敬されてきました。
本殿は1791年(寛政3年)の建立、拝殿は1881年(明治14年)の建築。境内には石造りの鳥居や道祖神が残り、樹齢700年を超えるといわれるケヤキの御神木が参拝者を迎えます。
白鳥神社
【住所】長野県東御市本海野1116(Google Maps)
【アクセス】上信越自動車道「東部湯の丸IC」から車約8分、しなの鉄道「田中駅」から徒歩約21分、しなの鉄道「大屋駅」から徒歩約29分
【詳細・問い合わせ】公式サイト
媒地蔵尊(なかだちじぞうそん)

旧青龍山地蔵寺の本尊で、白鳥神社の西側(旧地蔵寺跡)に祭られている『媒地蔵尊(なかだちじぞうそん)』。その昔、加賀藩のお殿様が参拝したところ、良縁に恵まれなかったお姫様が結婚できたという逸話が残されていることから、縁結びのお地蔵様として知られています。良縁成就を願う人々が多く訪れ、毎年11月3日の縁日は特ににぎわいます。
媒地蔵尊
【住所】長野県東御市本海野1125(Google Maps)
【アクセス】上信越自動車道「東部湯の丸IC」から車約8分、しなの鉄道「田中駅」から徒歩約22分、しなの鉄道「大屋駅」から徒歩約28分
【詳細・問い合わせ】公式サイト
本陣跡・馬の塩なめ石

江戸時代、海野宿には問屋を兼ねた本陣1軒と脇本陣2軒が設けられていました(現在、本陣の建物こそ残っていません)。近くには馬が休憩時に塩をなめて体力を回復したという『馬の塩なめ石』が現存。当時、宿場間の荷物・人の継ぎ送りとして馬は非常に大事にされ、馬を休ませる時には塩を舐めさせていたと伝わります。人と馬が行き交った宿場町の記憶をいまに伝えるスポットです。

本陣跡・馬の塩なめ石
【住所】長野県東御市本海野1052-2(Google Maps)
【アクセス】上信越自動車道「東部湯の丸IC」から車約8分、しなの鉄道「田中駅」から徒歩約25分、しなの鉄道「大屋駅」から徒歩約25分
【詳細・問い合わせ】公式サイト
【番外】観光ガイドの利用もおすすめ
海野宿をより深く楽しみたいなら、観光ガイドの利用がおすすめです。まち並みの保存活動を続ける住民の方々が案内役となり、宿場内の各スポットを一緒に巡りながら、宿場町の成り立ちや歴史的建造物、暮らしに根づく文化などを解説してくれます。
歩くだけでは見過ごしてしまう細部に気づけるのが、ガイド付き散策の大きな魅力。歴史や文化に興味がある方はもちろん、初めて海野宿を訪れる方にもぴったりです。
所要時間はおよそ1時間〜1時間半。ガイド料は2000円から(人数に応じて変動)。個人からグループまで対応しています。
お申し込みは以下より。
https://unnojuku-trust.com/guide/
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飲食・カフェとお土産

海野宿内の風情あるまち並みには、ひと休みできる飲食店やカフェが点在。多くの店舗が食事や喫茶に加え、ギャラリーや物販も手掛けています。
そばや洋食、甘味を楽しむのはもちろん、クラフト作品や本との一期一会に期待。散策の合間に立ち寄り、落ち着いた雰囲気の中、ゆったりとした時間を満喫してみてはいかがでしょう。
✓ 喫茶&ギャラリー 茶楽庵(ギャラリー・喫茶)
✓ 麦(カフェ・ギャラリー)
✓ 古本カフェ のらっぽ(古本販売・カフェ)
✓ ガラス工房 橙(ギャラリー・ガラス製品販売・カフェ)
✓ 福嶋屋(手打ちそば・くるみおはぎなど)
✓ まるごと(ラーメン・土産販売など)
✓ 古民家 Ristorante & Caffe 菜花(ランチ・カフェ・ディナー※予約制)
宿泊


海野宿内には4つの宿泊施設があります。一棟貸しの「上州屋」や「旅舎ときの譜」、「NAGANO branch Hotel」、そして滞在型交流施設「うんのわ」。いずれも古民家をリノベーションした歴史を感じる佇まいが特徴です。
上州屋は築約150年の古民家を改修した一棟貸しの宿。敷地内には自由にロウリュができるプライベートサウナ(水風呂と外気浴デッキ付き)、明治期建築の土蔵を活用した静謐(せいひつ)な図書館、蚕室を改装した寝室などが整い、心身を解きほぐすひとときが味わえます。
旅舎ときの譜は、築100年ほどの町家を一棟貸しする宿泊施設。二間続きの和室や台所、寝室、庭が備わり、まるで暮らすように滞在できるのが魅力です。静けさに包まれ、穏やかな時間が流れます。
古民家をフルリノベーションした「NAGANO branch Hotel」は、吹き抜けや大きな土間が迎える、懐かしさとモダンが調和した空間。2層構造の館内にはリビングダイニングやキッチン、寝室が備わり、快適に滞在できます。自転車置き場もあり、サイクリストにもおすすめ。
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各宿泊施設の詳細は下記をご覧ください。
✓ 上州屋
✓ 旅舎ときの譜
✓ NAGANO branch Hotel
✓ うんのわ
イベント
海野宿ひな祭り

毎年3月上旬から下旬にかけて開催される『海野宿ひな祭り』は、宿場の家々が一斉にひな人形を飾る華やかなイベント。2015年(平成27年)に地域活性化の取り組みとして始まり、春の風物詩として定着しました。
通りに面した格子戸の内側にひな人形を飾るのが特徴で、格子越しに姿をのぞかせる演出は海野宿ならでは。夜間にはライトアップも行われ、昼間とは異なる幻想的な雰囲気に包まれます。

【開催時期】3月上旬〜下旬
【詳細・問い合わせ】https://unnojuku-trust.com/event/
海野宿ふれあい祭り

毎年11月に開かれる『海野宿ふれあい祭り』は、地域と観光客が一体となって楽しむ秋の恒例イベント。もともとは1990年(平成2年)、白鳥神社の新嘗祭にあわせて地元住民が来場者に手作りのほうとうを振る舞った「ほうとう祭り」として始まり、その後「ふれあい祭り」として規模を拡大。いまでは市外・県外からも多くの人が訪れる人気行事となりました。
当日は白鳥神社本殿前の特設舞台で舞姫による「浦安の舞」が奉納され、昔ながらの装束をまとった人々が街道を練り歩く「時代衣装行列」が行われます。沿道には露店が並び、宿場町の風情と祭りのにぎわいを満喫できます。

【開催時期】11月上旬
【詳細・問い合わせ】https://unnojuku-trust.com/event/
【備考】2025年は11月2日(日)に海野宿開宿400年記念行事と合同開催。記念講演会や前夜祭、文化財建物の公開など特別企画も予定。
アクセス情報
車の場合
・上信越自動車道「東部湯の丸IC」より約10分
周辺に以下の無料駐車場(8時〜17時)が整備されています。
・第1駐車場(海野宿東側):普通車29台、車いす用2台、二輪車用1カ所
・第2駐車場(海野宿南側):大型車5台、普通車60台、車いす用2台、二輪車用1カ所
・第3駐車場(海野宿南側):大型車15台
詳細
https://unnojuku-trust.com/access/
公共交通機関の場合
・しなの鉄道「田中駅」より徒歩約20分
・しなの鉄道「大屋駅」より徒歩約20分
田中駅・大屋駅前から「とうみシェアサイクル」を利用して、自転車で気軽にアクセスすることもできます。また、タクシー感覚で利用できる予約制バス「とうみレッツ号」も便利です。
詳細
☞ とうみシェアサイクル
☞ とうみレッツ号
文:松尾 奈々子
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