まずはこれを飲んでほしい 「地酒屋宮島」店主が選ぶ 長野県の〝基本〟で〝一押し〟の日本酒

長野県のお酒に特化し、県内外から厚い信頼が寄せられる「地酒屋宮島」の店主・宮島国彦さんに、「これを押さえておけば絶対!」という酒蔵と日本酒をうかがいました。旅のおともに、お土産に、長野県の地酒をお楽しみください。

更新日:2021/05/06

LINE Twitter Facebook

01.夜明け前 特別本醸造「辰の吟」

小野酒造店|辰野町

「本醸造」とはお米をあまり削らず、醸造アルコールを添加した日本酒のこと。空前の純米酒ブームのなかで、〝添加〟という言葉だけで敬遠する人もいるかもしれませんが、そう判断するのはあまりにもったいないことです。醸造アルコールは植物由来の安全安心なもの。香りを引き出したりのど越しをよくしたりと、決して悪酔いの原因になるものではないのです。
とくに「辰の吟」は一般的な本醸造と比べても香りが華やかでフルーティーな味わい。こうしたお酒は新酒の頃はトゲトゲとしがちですが、それもない。以前、ブラインドで利き酒をした際、全国屈指の有名ブランドを押しのけて一番おいしいと感じたのが「辰の吟」だったほどなのです。

地酒屋宮島が「地酒屋」に舵を切ったきっかけの酒蔵。「〝辰〟野町」の「〝辰〟年」生まれの蔵元が造るから「〝辰〟の吟」。本醸造でありながら「吟」と名付けるところに、この1本にかける思いがうかがえます

合わせる料理:(熟成前)フルーツ (熟成後)カカオやカラメル系

食中酒として万能ですが、開けたては季節のフルーツと合わせても。1年ほど熟成させて熟れた香りが出てきたら甘いものと合わせてみてください。カカオやカラメル系によく合います。

02.水尾 特別純米「金紋錦」

田中屋酒造店|飯山市

こだわりは田中隆太社長が探し抜いた水尾山の「水」と、幻ともいわれる酒米「金紋錦」です。金紋錦は今でこそ県内の多くの酒蔵が用いていますが、その使用許可をめぐり奔走したのが隆太社長でした。造りの難しい米で、金紋錦ならではの香りと旨み、熟成時の深い旨みを引き出せるのは長年向き合ってきた水尾だからこそ。穏やかなメロン香も特徴です。
隆太社長は、湧き出るような情熱と豪快で気持ちのいい性格で、周りからも慕われています。2019年10月の台風で甚大な被害に遭った際も、本当に数多くの酒屋仲間や飲食店、水尾ファンとともに何日もかけて復旧作業を手伝いました。そのときに「ああ、自分はただただ水尾の大ファンなんだ」ということに気付かされました。いちファンとして、水害からの復興はもちろんずっと応援したい蔵です。

大吟醸のフルーティーな香りに比べ穏やかな香りが特徴です
「いい酒を造りたい」という隆太社長の思いが、水や米へのこだわりにつながっています

合わせる料理:川魚、あっさりめの白身魚、信州そば

新潟県境の水質ということもあるのか、すっきりとしていて魚介類によく合います。とくに熟成前のフレッシュなときは、信州そばとの組み合わせがおすすめです。

03.佐久乃花 純米吟醸「無ろ過生原酒」

佐久の花酒造|佐久市

今や長野県地酒界のスターで、「地酒屋宮島」でも10年以上人気No.1を誇る日本酒です。父の代からお付き合いがありましたが、地酒に注力しはじめた頃、雑誌に大きく取り上げられたことがきっかけで、じっくり飲んでみて衝撃を受けました。飛び抜けた香りに、酸味や旨みも豊かで上品。すぐさま蔵に出かけ、取引してもらえるよう無理をお願いしました。
酒質が大きく変わったのは現在の高橋寿知社長の代から。今でこそ主流の無ろ過生原酒に全国でもいち早く取り組み、先がけとして知られます。純米吟醸「無ろ過生原酒」は酵母違いで長野酵母Cと長野酵母Dとがありますが、今回ご紹介するのは長野酵母Cのほう。Dよりも香りが控えめで、芳醇な感じが楽しめます。

ラベルの大きな「花」が目印。お祝いの贈り物や奉納などにもおすすめ。長野県の無ろ過生原酒の先駆けとなったのはこの佐久の花酒造でした

合わせる料理:洋食

酸味はぶどうを連想させるものなので、辛口の白ワインのような感覚で料理を合わせていただけます。香り・旨みも強いので濃いめの味つけでも。

04.信州亀齢 純米「ひとごこち」

岡崎酒造|上田市

果実味というよりは白玉のような米粉の香りが特徴で、非常に上品な仕上がりの日本酒。火入れしているにもかかわらず発泡が残るのは、搾りや瓶詰めにもさまざまな工夫をしているからこそです。
実は「地酒屋宮島」は、この信州亀齢を醸す岡崎醸造の直営店として創業したのがはじまり。その縁もあって4代に渡るお付き合いだからこそ、厳しい局面もたくさん見守ってきました。「このままじゃ潰れる!」 と一念発起した蔵元の岡崎美都里さん・謙一さんご夫妻が、蔵や道具の掃除からはじまり、造り方・貯蔵・流通まですべて見直し、5年計画で立て直しを図っていたその4年目、2015年に関東信越国税局酒類鑑評会の吟醸部門で最優秀賞(第1位)を受賞。躍進でした。これからの長野県の地酒界を牽引する存在になることは間違いありません。

上田駅からほど近く、北国街道の趣を残す柳町に建つ1665年創業の老舗酒蔵。全国有数の女性杜氏のひとり・岡崎美都里さんが、東北の蔵を中心に何度も訪れて勉強を重ねた夫の謙一さんとともに醸しています

合わせる料理:まずはお酒だけで

「単品で飲んでおいしい日本酒」を目指して酒質を設計し、つくりあげています。その心意気を汲んで、まずは日本酒だけで召し上がってみてください。

05.豊香 純米「原酒」

豊島屋|岡谷市

通常、酒造りには日本酒専用の酒米を用いますが、こちらは一般米(酒食用の米)の「ヨネシロ」を用いています。蔵元の林慎太郎さんがサンプルを持ってきてくれたのは2008年のこと。でもあえてヨネシロを使う情熱や展望が伝わってこなくて、A4用紙3枚にわたる手紙を送ったのを覚えています。そうしたら、ヨネシロという寒高冷地での栽培に向いている米を、八ヶ岳山麓にある自分たちの酒蔵が契約農家の皆さんに広げることで、ともに成長していきたいという情熱にあふれた思いを聞いて…そこから取引がはじまりました。
今でもヨネシロは純米酒のみで使用しているように、その特徴を引き出して大事に使っていきたいという思いがあるんでしょうね。豊香の名前の通り熟れた果実のような甘い香りで、味わいも濃醇。でも、キレが良いから、あと口がいい。「甘くて、辛い酒」です。

限定流通の「豊香」シリーズはコストパフォーマンスの高さも注目。ちなみにシリーズ最初の1本がヨネシロで造ったものでした。ほかに「たかね錦」「しらかば錦」など長野県ゆかりの酒米にも積極的に取り組みます

合わせる料理:フルーツ

「日本酒にフルーツ?」と意外に思われるかもしれませんが、ぜひお試しください。イチゴやリンゴ、干し柿のほか、よく熟れたものほど絶妙に合います。

地酒屋宮島
店主 宮島国彦

1967年上田市出身。90年以上続く地酒屋宮島の4代目。1998年きき酒師取得。2000年信州の地酒専門店として店をリニューアル。長野県小売酒販組合連合会青年協議会の初代会長などを歴任。現在は上田小売酒販組合理事長、長野県おいしい信州ふーど公使(日本酒)、長野県原産地呼称管理委員会日本酒・焼酎委員。2021年4月からはFMとうみにて「地酒コーナー」のパーソナリティーを担当(毎週木曜17:40~17:55)。詳しくはこちら

紹介した酒蔵はこちら

長野県の日本酒をもっと詳しく知りたいなら

おすすめの記事

この体験をシェアする

LINE
Twitter
Facebook