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郷土料理「おやき」を知れば、長野の暮らしが見えてくる!?

長野県の郷土料理のひとつ「おやき」。
かつては囲炉裏で作られていたのが、かまど、ガスコンロと変わるなかで作り方も進化。
今ではさまざまな調理法のおやきが味わえます。

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長野県の郷土食「おやき」って
どんな食べ物?

長野県内を旅行すると、いたるところで目にする「おやき」の文字。実際に食べたことがある人もいるのではないでしょうか。おやきは長野県を代表する郷土食のひとつで、小麦や雑穀、そば、米などの粉を水で溶いて練った生地に、野菜などの調理した具材を包んだおまんじゅうのようなものを言います。
その歴史は古く、縄文時代にはおやきの原型と思われる雑穀を使ったやきもちのような加工食品が作られていました。長野県では諏訪エリアにある富士見町の曽利遺跡から、具がないパン状の炭化物が発掘されています。北信濃エリアにある小川村の筏ヶ原(いかだがはら)遺跡からは縄文時代中期の土器が出土され、粉を練って焼いた跡が発見されています。

小川村は「ふるさと信州風景100選」に選定された、のどかな山里です。
村内のいたるところで北アルプスを眺めることができます

焼く、蒸かす、焼き蒸かす。
種類豊富なおやきの作り方

一説でおやき発祥の地と言われる小川村や長野市西北部は稲作には不向きで、代わりに小麦や雑穀が栽培されてきました。農作業の合間に食べる食事もおにぎりではなく、灰焼きおやきなどが出されました。灰焼きおやきは、いろりのほうろくや渡しで表面を焼いてから、熾火(おきび)で温まっている灰のなかに入れて蒸し焼きにしたもので、かつては保存食としても重宝されていました。 そこから里や町へ、そして現代へとおやきが伝わっていくうちに囲炉裏からかまど、ガスコンロと調理する熱源が変化していき、「焼き」「蒸かし」「焼き蒸かし」「揚げ蒸かし」「揚げ焼き」などさまざまな作り方が生み出されていきました。

小川村にあるおやき屋「小川の庄」創業当時の様子。
今も変わらず村の元気なお父さん、お母さんが出迎えてくれます

あなたはどっち派? 
夏が旬のナスのおやき

おやきの具材は野沢菜やあんこがよく知られていますが、季節ごとに旬の野菜を使っているのも特徴です。
なかでも夏が旬の丸ナスは、煮崩れしにくく煮物料理によく使われる野菜です。収穫量が多かった地域では、この特徴をいかして輪切りにした丸ナスに味噌をはさんだ蒸かしおやきが作られてきました。一方、長ナスの栽培が主流の地域では、刻みナスの焼きおやきが一般的です。ナスのおやきを比べても地域によって作り方が異なり、地元では「どっちが好き?」なんていう話で盛り上がることもあります。

丸ナスの蒸かしおやきは、肉厚でしっかりとした歯ごたえがあります。
間に挟んだ味噌が程よい塩加減でナスと好相性です

地元のお父さん、お母さんと
触れ合いながら味わう
縄文おやき

実際におやきを食べたくなったら、長野市街地から車で30分ほど西に進んだおやき発祥の地・小川村へ。細い山道をぐるぐると進んだ峠にある「信州小川の庄 縄文おやき村」では、縄文時代の竪穴式住居を模した囲炉裏の部屋で、地元のお父さん、お母さんが手作りした灰焼きおやきを味わうことができます。現在は衛生上、灰に入れることはなく、ほうろくで焼き色を付けたら渡しの上でじっくり火を通します。できたては生地の表面がパリッと香ばしいのが特徴です。
また、おやき作りの体験もできます。お母さん指導のもと、生地を均等に伸ばしたら、たっぷりの具を両手で包み込むように詰めていきます。包んだ後はお父さんに任せて、焼き上がるまでお味噌汁やお新香をいただきながら休憩。おやきを通じて地元の人とおしゃべりする時間も、旅の良い思い出になるでしょう。

囲炉裏に薪をくべて、大きなほうろくでおやきの表面を焼いていきます。もくもくと立ち上がる煙で柱や壁は燻され、黒光りしています

おやきの具材はなんでもあり。
自分にとっての定番を
見つけよう

もうひとつ紹介するのは、善光寺門前にある「門前農館さんやそう」です。地元農家のお母さんたちが毎朝手作りするおやきは、薄くてもちっとした生地にたっぷりの具が詰まった蒸かしタイプのおやきです。この店で定番とされるおやきは11種類もあり、オーソドックスな野沢菜、なす、切り干し大根などのほかポテト、あんいりさつまいも、煮卵なども含まれています。長野県で古くから日常的に食べられてきた「おやき」は、作り方、具材などバリエーション豊かな郷土料理です。あなたのお気に入りの味を見つけてみませんか?

薄い生地ながらもちっとした食感の蒸かしおやきは短い時間で
調理できるので、商売人が多い地域で発達していきました

長野県にはおやきのお取り寄せを行っているお店も数多くあるので、ふるさとの味を自宅でも楽しんでみてはいかがでしょうか。

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