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北の小布施栗、南の信州伊那栗(長野県)。 秋の味覚、どちらを選ぶ?

秋の味覚の代表格、栗。長野県では小布施の栗が有名ですが、このところ「北は小布施町、南は飯島町」と、上伊那郡飯島町の「信州伊那栗」も注目を集めています。

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縄文の頃から食されてきた栗

実りの秋。りんごやなし、ぶどうなど、さまざまな果物が収穫される時季ですが、そのひとつに栗があります。焼き栗をはじめ、栗きんとんやマロングラッセ、モンブランなどのスイーツのほか、栗おこわといった食事にいたるまで、その食べ方はさまざまです。
長野県では縄文時代から山栗が食されてきました。山栗とは山野に自生する原種の栗のこと。縄文の遺跡が出土している茅野市(尖石遺跡)、富士見町(井戸尻遺跡)などは、山栗やくるみ、トチ、ブナ、コナラといった堅果類と呼ばれる木々の森が広く分布していた地域と一致するそう。とりわけ山栗やくるみはアク抜きをせずに食べることができたので、当時の食糧源として重宝だったようです。山栗は小さくてむくのが大変ですが、現在は大きくて病害虫にも対抗できるよう品種改良された筑波、丹沢などが全国各地で栽培されるようになりました。
長野県で栗といえば小布施町ですが、最近注目されているのが上伊那郡飯島町を中心に栽培される信州伊那栗です。伝統の小布施栗と躍進する信州伊那栗。ふたつの産地をご案内します。

飯島町で栽培される信州伊那栗の畑。樹高を2.5mに保つことで日照を確保し、
おいしい実をつける「超低樹高栽培」で、女性や高齢者も手入れしやすいのがメリット

一度は味わいたい、将軍に献上された「小布施栗」

北信濃の小布施町は、全国に知られる栗の名産地。その歴史は古く、一説には室町時代から栗の栽培がはじまったといわれています。水はけのよい扇状地という地形と酸性の土壌、北信濃特有の気候が生み出すおいしさは江戸時代すでに評判を呼び、時の将軍への献上品とされたほど。当時すでに全国レベルのブランドだったというわけです。ちなみに小布施を訪れた俳人・小林一茶が、庶民には手の届かない存在だった栗が落ちている姿をみて「拾われぬ 栗の見事よ 大きさよ」と皮肉のこもった句を詠んだのも有名なエピソード。

大粒の栗をどっさり炊き込んだ秋の味覚、栗おこわ。
小布施には栗おこわや栗菓子を楽しめる店がたくさんあります

小布施で初めて栗菓子がつくられたのは1808年。現在も小布施町に本店を置く栗菓子の老舗、桜井甘精堂の初祖・桜井幾右衛門による「栗落雁」でした。それから栗羊かんや栗鹿の子などが生まれ、明治時代には「小布施に銘菓あり」といわれるように。今も小布施に本店を置く栗菓子の名店は数多く、大ぶりの実が入った栗おこわやどら焼き、濃厚な味わいのソフトクリームにジェラート、さらに行列必至の新栗の期間限定モンブランなど多彩な味わいを楽しめます。
小布施を訪れたらぜひ歩いてほしいのが、北斎館の前からはじまる遊歩道「栗の小径」。1980年代に行われた町並み修景事業の一環でつくられた情緒ある空間で、優しい感触の栗の間伐材が敷き詰められています。

「高井鴻山記念館」から「北斎館」へ続く「栗の小径」。土壁に黒瓦、栗の木の風合いが落ち着いた雰囲気

研究と情熱が実を結んだ、平成生まれの「信州伊那栗」

小布施町から南へ約150km。南信州にも栗の一大産地があります。伊那谷の中央に位置する飯島町で2003年から本格的な生産がはじまった「信州伊那栗」は、JA上伊那による厳しい基準をクリアした「超特選栗」のブランド。地元農家と行政、さらに地元の和洋菓子店「信州里の菓工房」とが地域一丸となって連携し、誕生したプロジェクトです。
気候や土壌、日照時間、標高、降水量など、質の良い栗を栽培するのに恵まれた伊那谷の環境を生かし、全国的に有名な栗の博士・塚本實さんと栗の名工・新田耕三さんの指導のもと技術提携や情報交流が行われ、独自の「超低樹高栽培」で開発・栽培・拡大が実現。長年にわたる果樹栽培の実績豊かな地元農家の取り組みと情熱が身を結び、良質な栗が生産されるようになったのです。

和でも洋でもおいしい!伊那栗を生かした多彩なお菓子

「栗農家の皆さんが丹精込めて作った栗を“お菓子”というツールに変えることで、広く全国へ発信していきたい」と、JAと連携して信州伊那栗を使った和洋菓子の開発・販売を行うのが信州里の菓工房。栗きんとんからパウンドケーキ、コンフィチュールまで、和洋を問わず栗の味わいを生かしたお菓子を発信しています。季節ごとの限定品もあり、訪れるたび違う出会いがあるのもうれしいところ。
なかでも秋限定の「できたてモンブラン」は、生クリームと砂糖を限界まで減らして栗ペーストをたっぷり絞った魅惑の一品です。通常のモンブランの栗の量が全体の重さの3~4割なのに対して、同店のモンブランの重さに占める栗の割合はなんと7割!新鮮さを保つためお取り寄せはできず、新栗シーズンに店舗を訪れなければ食べられない特別な味わいです。
おみやげにおすすめなのは「栗あんぱん」。栗きんとんが1個丸ごと入ってボリューム満点ながら194円とリーズナブルで、食べやすいサイズ感もあって男女問わず人気なのだそう。
歴史ある「北の小布施栗」に、新世代の「南の伊那栗」。食べ比べて、長野の秋を堪能してみてはいかがでしょうか。

伊那栗の新栗収穫期にしか味わえない「できたてモンブラン」は「信州里の菓工房」の人気メニュー
粒あんと栗のハーモニーがたまらない「栗あんぱん」は、栗そのものが苦手な人も喜ぶおいしさ

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