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初夏の昼下がり、軽井沢のクラシックホテルでスイーツを楽しむ。

新緑が美しい初夏の軽井沢。夏のトップシーズンを迎える少し前、比較的街も人も落ち着いているこの時期に、由緒あるクラシックホテルでホテルメイドのスイーツを味わってみませんか? ちょっとぜいたく優雅な午後のティータイムを、ぜひご一緒に。

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ジョン・レノンが愛したアップルパイ&ロイヤルミルクティー

何度となく訪れた軽井沢の地。ブライダル誌の編集を担っていた頃は、頻繁に訪れていた地であるが、最近はアウトレットに買い物に来る以外はずいぶんと足が遠のいてしまっていた。
改めて軽井沢を訪れてみたいと思ったのは、2024年に万平ホテルがリニューアルされたというニュースを耳にしたからだ。

1764年、万平ホテルの前身、旅籠「亀屋」として創業。
今から261年前というと、時は江戸時代。徳川第10代将軍の徳川家治が幕府を担っていた頃だ。旧中山道沿い、江戸から数えて18番目にあたる宿場町として栄えていた軽井沢。1886年には、英国の宣教師、アレキサンダー・クロフト・ショー氏が来日。軽井沢の美しい自然と風土が気に入り、その魅力を多くの人に伝えたことから、外国人が多数訪れるようになり、避暑地として発展していったという。

1894年、万平ホテルの創業者・佐藤万平と宣教師が出会い、西洋の文化を取り入れた「亀屋ホテル」をオープン。ホテルの名称を「万平ホテル」としたのは1902年のことだった。

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“万平ホスピタリティ”はそのままに快適な空間として生まれ変わった万平ホテル。和風意匠を感じるアルプス館の外観は2018年に登録有形文化財に指定された

「建物の老朽化が進んでおり、部屋が寒かったり、周囲は自然に囲まれておりますので、虫が入ってきてしまったり、いろいろ問題があったので以前からリニューアルは考えておりました」と広報の西澤さん。ホテルの象徴ともいえる本館アルプス館のハーフ・ティンバー風の外観は国指定登録有形文化財にも指定されているため、「本来なら建て直した方が早いのですが、重要文化財のため取り壊すわけもいかず、復元と同時進行の作業だったため工事は非常に大変だったと聞いております」。
細心の注意を払いながらの大規模工事に加え、軽井沢では夏のハイシーズン中の工事ができないため、1年半以上もの間ホテルを休館。

創業130年を迎えた2024年10月、満を持してグランドオープンした。

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エレベーターを新たに設置し利便性も向上した「アルプス館」 ©万平ホテル

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クラシックモダンな「愛宕館」は全室に温泉の内風呂を設けた ©万平ホテル

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軽井沢の自然と一体となれるロケーションが望める「碓氷館」。テラス付きの部屋もある ©万平ホテル

いつかは宿泊してみたい憧れのクラシックホテル。冬期は休業していたが、リニューアルを機に通年営業になったことは朗報だ。軽井沢がより静かな時を刻む冬の時期、一年仕事を頑張ったご褒美として、近い将来宿泊するぞという決意を胸に、今回の目的であるホテルスイーツを味わうことに。

万平ホテルといえば、まず思い浮かぶのがアップルパイ。
万平ホテルをこよなく愛したジョン・レノンも、カフェのおなじみの席に座り、好んでアップルパイをオーダーしていたことでも知られている。

長野県産紅玉リンゴのコンポートをたっぷり入れて、2種類のパイ生地を層にして焼き上げるオーセンティックなアップルパイ。
「底には少し塩味を感じられるパイ生地を敷き、上にケーキクラムを載せ、その上にリンゴのコンポートの層になっております。見た目はシンプルですが、手間をかけて作っております」。そう説明してくれたのはペストリーシェフの長谷川さん。40年以上洋菓子を作り続けているベテランパティシエだ

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「伝説のアップルパイ」(1,500円)と「ロイヤルミルクティー」(1,300円)。アップルパイとコーヒーなど飲み物がセットになった「ケーキセット」(2,400円)もある

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パティシエの長谷川正則さん。神奈川県葉山にあるホテルや軽井沢のホテルで40年間ほど勤務したのち、2025年3月より万平ホテルのパティシエに就任した

ジョン・レノンがアップルパイとともに欠かさず頼んでいたといわれるのがロイヤルミルクティー。それまで紅茶にミルクを注いだ本場英国式のミルクティーを提供していたが、牛乳に茶葉を入れ、煮出して作る方法をジョンが伝授したのだという。

彼が愛したアップルパイとロイヤルミルクティーのセットを、必ず座っていたというカフェの特等席でゆっくり味わってみる。するとどうだろう、頭のなかに名曲のフレーズが降りてきた~! ……とはならないが、心とお腹はすっかり満たされた。

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開放的なテラス席。愛犬と一緒に優雅なティータイムを ©万平ホテル

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カフェテラスの利用は9時30分~18時(17時LO)©万平ホテル

クラシックホテルにふさわしい、こちらのロールケーキもぜひ味わいたい一品だ。ちゃたまやのブランド卵「浅間小町」を使用し、ふわふわ&しっとりに焼き上げたスポンジに甘さ控えめの生クリームと旬のフルーツをくるんだ王道ロールケーキ。ふわふわ食感に、思わず笑みがこぼれてしまう。
「お客様から、舟型のレモンタルトを復刻してほしいという声をいただいておりますので、こちらも近々お出しする予定です」(長谷川さん)

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「万平プレミアムロールケーキ」(1,800円、ドリンクセット2,700円)。テイクアウト不可、イートインのみ

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アルプス館1階、カフェの横にあるショップではホテルのオリジナルアイテムや信州土産などを購入できる

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お土産用のアップルパイはふじリンゴをぜいたくに丸ごと2個を使用

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新商品、万平ホテルメイドの「カレーパン」(500円)もショップで購入可能(数に限りあり)。スパイスが効いたカレーが入った食べやすい形のカレーパンは散策のお供にもおすすめ

2024年12月より、老舗ベーカリー「ブランジェ浅野屋」が万平ホテルと同グループの傘下となり、2025年5月、ホテル入口にベーカリー「浅野屋万平ホテル店」がオープン。

そんな話を西澤さんに伺っていたら、偶然、支配人の西川さんが我々の元へとやってきた。なんでもこちらのベーカリーでは、支配人の西川さんも接客を行うことがあるのだという。「オープンしたばかりなので、まだあまり知られてないんです」と西澤さん。人が増える夏のシーズン前が狙い目か。ホテルを訪れる際は、ぜひこちらのベーカリーものぞいてみたい(「浅野屋万平ホテル店」土・日曜、祝日9時~17時(売り切れ次第終了)の営業)

ホテルメイドのアフタヌーンティーで優雅なティータイムを。

軽井沢でぜひ味わいたいホテルメイドスイーツ。もう1件ご紹介するのは、軽井沢のメインストリートから一本入った静かな道沿いに建つ「旧軽井沢ホテル音羽ノ森」。こちらで楽しめるのは、豪華3のアフタヌーンティーだ。

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音羽ノ森の雰囲気にぴったりな優雅な「アフタヌーンティーセット」

19世紀のイギリス発祥のアフタヌーンティー。貴族が夕食までの空腹を満たすために、サンドイッチとお菓子を紅茶と一緒にたしなむようになったことから広まったといわれる。以前知り合ったイギリス生まれの方に「本場イギリスでは1日に何度もティータイムを設け、その時間をとても大切に過ごしている」と聞いたことがある。

午後のひとときを優雅に楽しむ習慣として広まったアフタヌーンティー。数年前に日本でもブームとなり“ヌン活”なんて呼ばれた時期もあったが、現在は落ち着きを取り戻し、また静かに非日常感を楽しめる本来のアフタヌーンティーの姿に戻ってきたように思う。

そんな中感じるのは、丁寧に対応してくれる格式あるホテルだからこそ、アフタヌーンティー本来の魅力を存分に堪能できるということだ。

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「アフタヌーンティーセット」(ひとり3,300円※写真は2名分)要予約制で2名~、14時~16時30分

心だけは貴族になったつもりで、目の前に運ばれてきた3段のアフタヌーンティーをいただくことにする。一番下の段は地元産の野菜をふんだんに使ったサラダが添えられたサンドイッチ。全粒粉のパンに信州サーモンのマリネと、スモークした信州ポークがサンドされている。2段目は英国式のアフタヌーンティーには欠かせないスコーンと焼菓子。スコーンは売店でも販売している自家製ジャムをつけていただく。生地をしっとりさせるためにヨーグルトを加えるのがパティシエ・中村流。そして3段目はいちごタルトやチーズケーキなど、見た目にも鮮やかなスイーツが数種類載っている。

1段目から順番に食べ進めていくのが正式な作法だが「気にせず、自由に楽しんでください」と、中村さん。心は貴族、だがしかし、色とりどり&香り高いスイーツを前に抑制は利かず…。できたらしょっぱいと甘いを交互にいただきたいな、なんて(笑)。自由に楽しんでいいと言っていただいたことをいいことに、欲望のままに手を伸ばすとしよう。

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パティシエの中村大さん。京都の洋菓子店に勤めたのち地元に帰郷。2023年より音羽ノ森のパティシエとして勤務

アフタヌーンティーのお供といえば、飲み物も欠かせない。一般的なのは紅茶だが、こちらでは3種のオリジナルハーブティを用意。軽井沢で栽培されたハーブを音羽ノ森のイメージに合わせブレンド。「オトワクラシック」「オトワグリーン」「サムシングブルー」と3種類から選ぶことができ、今回いただいたのは「オトワクラシック」。まるで森の中にいるような、すっきりした清涼感に包まれる一杯だった。

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ホテルの朝食で提供している「ヨーグルトムース」。朝食以外でも味わいたいというゲストのニーズを反映し、この度アフタヌーンティーセットに登場

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9~10種類と、とても軽食とはいえないボリューム感。昼食は抜いてくることおすすめします…

アフタヌーンティーセットをいただけるのは、ロビー、中庭テラス席、通りに面したテラス席。なかでも人気があるのは、ロビー奥に位置するクラシック感ある半円型のソファ席。席の予約も可能だ。

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中庭のテラス席。さまざまな植物が色づいたガーデンテラスになっており、優雅なティータイムを過ごすことができる

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スコーンに付くジャム、チーズケーキなどはホテル内のショップでも購入可能

1982年に開業した「旧軽井沢ホテル音羽ノ森」。
純西洋風木造建築で重要文化財に指定、渋沢栄一をはじめとした政財界の要人や文化人などが滞在していたことでも知られる「旧三笠ホテル」をイメージして建てられたといわれる。ホテルの敷地内には、宣教師アレキサンダー・クロフト・ショーの功績をたたえつくられた「旧軽井沢礼拝堂」があり、司祭が誓いの言葉を導く、本格的な英国国教会の挙式を行うことができる。

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「旧軽井沢礼拝堂」。外観は自由に見学できる。鍵が開いていれば中の見学も可能

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ウエディングや宴会などで利用できる別館のパーティールーム。気品あふれる雰囲気

軽井沢にある格式高い2つの憧れホテル。少し敷居が高いと感じても、スイーツ目当ての利用だったら気負いがない。日々の生活に疲れを感じたら、品格あるホテルで丁寧なおもてなしとともにいただくスイーツで日々の活力を取り戻す。そんな使い方もありなのではないかと思う。

〈万平ホテル〉
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
https://www.mampei.co.jp/
Google Map:https://maps.app.goo.gl/Q9BSz5M8zqmuW2TS7


〈旧軽井沢ホテル音羽ノ森〉
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1323-980
https://www.hotel-otowanomori.co.jp/
Google Map:https://maps.app.goo.gl/vcRvKm8yaKThJPaB6


撮影/宮崎純一 取材・文/大塚真貴子

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