TOP PHOTO:店の看板を引き継いだ6代目の西澤義弘さんと真澄さん夫妻。共通の趣味はバイクに乗ること
江戸創業の昔ながらの麹造り
「西麹屋本舗」は長野市にある江戸時代後期から続く老舗の麹店です。そして「24koujiya」は6代目の西澤義弘さんと真澄さん夫妻が立ち上げたオリジナルブランド。蔵の手前にアンテナショップを構え、自蔵の味噌や麹を量り売りし、甘酒ドリンクや発酵調味料を作り、販売しています。
2022(令和4)年2月に父の弘知(ひろとし)さんが会長職に退き、義弘さんが家業を継ぎましたが、家族経営の小さな蔵ですから、蔵仕事は父と母の豊子さん、そして真澄さんも一緒に行います。とくに麹造りは、昔ながらのやり方を貫きます。
まず、甑(こしき)という大きな木桶で米を蒸し、冷めぬうちに種麹をまぶし、床(とこ)に入れて寝かせます。ひと晩経って麹菌が米にまわったところを丁寧にほぐします。これを麹蓋(こうじぶた)に盛り込んで1枚ずつ室(むろ)へ並べます。麹菌が活動しやすい環境を整え、さらにもうひと晩寝かすと、ふわふわと菌糸をまとった米麹が完成します。
麹ブーム前夜とその後の変化
2010年代、日本全国に起こった麹ブームは、西麹屋も席巻しました。それ以前は、麹を買い求める常連客は年齢層が高め。その数は年々減っていました。義弘さんは当時を語ります。
「昔から味噌を使ってくれる常連の方が高齢になり、若い世代が味噌汁を食べなくなって、味噌の売り上げは減っているのが現状。麹はどう使ったらいいかわからないという方が増えていました」
麹に加えて味噌造りをはじめたのが祖父。甘酒と醤油豆をはじめたのは父。では、自分の代で何ができるか。義弘さんは真澄さんと結婚して、できることを模索しはじめていました。その矢先。
「電話がどんどん来て、スーパーに卸す問屋さんからものすごい注文があって、週3回の仕込みでも追いつかないくらい」。その状況は5、6年ほど続き、その間に真澄さんは娘ふたりのお母さんになっていました。
「せっかく子どもが生まれたのに遊んでやれず、妻には無理をして手伝ってもらって申し訳なかったです」。それでも麹が広く認知されたのは良かったと、義弘さんは振り返ります。
麹屋として、あり続けるために
「塩麹は調味料として定着して、手作りする人が増えましたが、使い方がよくわからないという方もいらっしゃいます」。そんな人たちのために真澄さんはSNSで発信をはじめ、ホームページを作り、20(令和2)年にショップを構えました。6代目なりの変革は「今のところ全部、妻のおかげ」と義弘さんは笑います。
ショップを訪れる世代は幅広く、赤ちゃん連れの若いお母さんから、杖をついたお年寄りまでやってくるようになりました。とくに感じるのは、子育て世代が増えたこと。「私もそうですが、子どもができると食生活を見直すきっかけになるんですね」と真澄さん。さらに買い手だけでなく、じつは造り手も若い人が増えているとか。「規模は小さく、家でできる範囲で若い人が次々と新規参入しています」。
義弘さんは今後について語ります。
「うちも、もっと少ない量で頻繁に仕込むようになるかもしれない。そうすれば常に新鮮な麹を使っていただけますから。変化しながらでなければ、続けられないですよね」
麹を使った商品いろいろ
こうじ専門店 24koujiya
長野県長野市柳原1893-6
☎ 026-217-1929
11:00~16:00
日・月曜、祝日定休、臨時休業あり
☞ 公式サイト
撮影:宮崎純一、取材・文・編集:山口美緒・塚田結子(編集室いとぐち)
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