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長野県産ワイン「NAGANO WINE」の魅力|特徴とソムリエ厳選・お酒を飲まない人も楽しめるワイナリー

今や日本有数のワイン産地として注目を集める長野県。今回はソムリエの花岡純也さんに「NAGANO WINE」の特徴や最新の動向を伺いました。初心者やお酒を飲まない人でも楽しめるワイナリーもあわせてご紹介。信州の景色や食とあわせて味わうことで広がる、新しい旅の魅力をお届けします。(2025/8/29)

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TOP PHOTO:信州の澄んだ空気と山並みを眺めながら、ゆったりと過ごせるサンサンワイナリーのテラス(写真提供:花岡純也)

「NAGANO WINE」とは

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長野県各地で育つワイン用ブドウ (写真:NAGANO WINE公式サイトより)

「NAGANO WINE」とは、長野県産のブドウを原料に、県内で醸造されるワインの総称です。長野県はワイン用ブドウの生産量日本一を誇り、2025年6月時点で90のワイナリーがあります。その数は山梨県に次ぎ、現在も増加傾向にあることから、将来的には日本最多となる見込みです。県内のワイナリーはスタイルもさまざまで、大手メーカーの工場から家族経営の小さな醸造所までが点在し、個性豊かなワインが生み出されています。

歴史と広がり

長野県のぶどう栽培の歴史は古く、江戸時代にはすでに松本市山辺地区でぶどう品種「甲州」が育てられていました。明治時代になると政府の殖産興業政策を受け、県内でもぶどう栽培やワイン醸造が奨励されます。

塩尻市の桔梗ヶ原(ききょうがはら)では冷涼な気候に合う品種が根づき、やがて本格的な栽培とワイン造りが始まりました。昭和初期には大手メーカーも進出し、長野はブドウとワインの産地として少しずつ存在感を高めていきます。

転機となったのは、後の「五一わいん」の創業者・林五一の挑戦でした。1950年代、彼は桔梗ヶ原でワイン用ブドウの品種「メルロー」の栽培に取り組み、厳しい条件の中で試行錯誤を重ね、ようやく根づかせました。そして、1989年(平成元年)、桔梗ヶ原産メルローを使ったワインが国際ワインコンクールで大金賞を受賞。翌年も続けて受賞し、桔梗ヶ原は世界から注目を浴びるメルローの産地となりました。

2000年代に入ると、小規模で個性的なワイナリーが各地に誕生。2003年(平成15年)にはエッセイストで画家の玉村豊男さんが創設した「ヴィラデストワイナリー」が東御市にオープンし、美しい眺望とともにワインを楽しめる新しいスタイルが人気を集めました。
これをきっかけに、畑や周辺の景観などを満喫しながら巡る“ワインツーリズム”の魅力が一気に拡大。長野県は産地ごとの魅力を打ち出すため「信州ワインバレー構想」を掲げ、現在では5つのエリアに区分して発展を後押ししています。

「NAGANO WINE」の詳細は下記の公式サイトもご覧ください。
NAGANO WINEオフィシャルサイト

「NAGANO WINE」が注目される理由

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信州の自然に抱かれて育つブドウ。風土こそが、豊かな味わいの源です (写真:サンクゼールHPより)

恵まれた自然条件

「ワインはブドウだけで造られるお酒で、水を一滴も加えません。だからこそ、ブドウの品種や産地、生育状況がそのままワインの味を決めるんです」と花岡さん。

ぶどう栽培に理想的な自然条件を備えている長野県。山々に囲まれた土地は年間を通じて日照時間が長く、雨は少なめ。斜面に広がる畑は水はけが良く、ブドウが余分な水分をため込まず健やかに育ちます。
何よりその風味を大きく左右するのが、昼夜の寒暖差。昼間の強い日差しで甘みを蓄え、夜の涼しさによって酸味を残し、果実はバランスの取れた味わいに仕上がります。

また、標高350〜1200mの幅広い地域に畑があるのも長野ならでは。標高の低い畑では温暖な気候を生かした品種、標高の高い畑では冷涼な気候に適した品種を栽培し、それぞれのブドウの個性を引き出しています。この多様さが「NAGANO WINE」最大の特徴で、風土の豊かさが「NAGANO WINE」の奥行きを支えているのです。

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高品質なワイン用ブドウが栽培できる長野県 (写真提供:花岡純也)

多彩な味わいと食文化との相性

自然条件の多様さはワインのスタイルにも表れ、赤・白・ロゼに加え、スパークリングまで幅広くそろいます。軽やかで香り高い白ワインは魚や野菜料理に、果実味あふれる赤ワインは肉料理や味噌・醤油など発酵調味料を使った料理とよく合います。和食と相性が良いのも特徴の一つです。
長野県が誇る信州サーモンや信州黄金シャモ、春の山菜や秋のきのこ、ジビエなどの食材と「NAGANO WINE」を合わせれば、地域ならではのマリアージュを堪能できます。

品質を守る制度と受賞歴

長野県では2003年に「長野県原産地呼称管理制度」を導入し、県産ブドウを使用し県内で醸造されたワインのうち、厳しい審査をクリアしたものだけに認定マークを付与しています。さらに2021年(令和3年)には国の地理的表示制度「GI(Geographical Indication)長野」に登録され、国際的にも品質が保証されるようになりました。

実績は受賞歴にも裏打ちされています。日本ワインコンクールでは2022年から4年連続で金賞数全国1位を獲得。「NAGANO WINE」の品質が国内外に認められている証です。

ちなみに「GI長野」の認定ワインには赤や青色のシール、より厳しい基準を満たしたものには金色のシールが貼られています。お土産選びの参考にしてみてください。

「GI長野」の詳細は下記ページをご覧ください。
https://www.nagano-wine.jp/charm/badge/

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「GI長野」認定品に貼付されるシール。産地と品質を保証する目印です (写真:NAGANO WINE公式サイトより)

信州ワインバレーを知る

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塩尻から千曲川、八ヶ岳まで。地図で見ると、ワイン産地が長野県全体に広がっていることが分かります ※ワイナリー数は2025年6月末時点 (画像提供:花岡純也)

長野県内のワイン産地は「信州ワインバレー」と総称され、地理や気候の違いに応じて5つのエリアに分けられています。それぞれのバレーに個性豊かなワイナリーが点在し、土地の風土と結びついた独自のワイン文化が息づいています。

各エリアの特徴

①桔梗ヶ原ワインバレー(塩尻市)

電車旅で気軽にワイナリーを巡りたいなら桔梗ヶ原ワインバレーへ。
JR「塩尻駅」周辺に老舗ワイナリーが集まり、駅から歩いて行けるアクセスの良さが魅力です。奈良井川とその支流に挟まれた台地は、レタス産地やそば切り発祥の地としても知られています。ここから日本を代表する「メルローの産地」の歴史が始まりました。


②千曲川ワインバレー(東御市・小諸市・佐久市など)

温泉や古いまち並みとワインを一緒に楽しむなら千曲川ワインバレーへ。
浅間山の麓から長野市北部まで、千曲川沿いの右岸と左岸に広がる畑とワイナリーを巡れば、地域ごとに異なる表情を感じられます。東御市や小諸市では高原らしい爽やかな景色、小布施町や高山村では充実した観光スポットと組み合わせて楽しむもよし。


③日本アルプスワインバレー(松本市・安曇野市・大町市など)

絶景のもとワインを味わうなら日本アルプスワインバレーへ。
北アルプスの雄大な山々を望む畑が広がり、旅の途中に立ち寄れば景色そのものがごちそうになります。松本市山辺地区は長野県ぶどう栽培発祥の地。安曇野では田園風景とアルプスのパノラマを同時に楽しめます。


④天竜川ワインバレー(伊那市・松川町周辺)

フルーツ好きは天竜川ワインバレーへ。
昔から果物の産地として有名で、リンゴやブドウを使った果実酒も多彩。中央・南アルプスに囲まれた盆地で育まれる果樹文化と酒造の背景を味わうことができます。


⑤八ヶ岳西麓ワインバレー(茅野市・原村・富士見町)

高原ドライブやリゾート気分とともにワインを堪能するなら八ヶ岳西麓ワインバレーへ。
2023年に誕生した県内で最も新しいワインバレーで、標高800~1200mの冷涼な高原に続々とワイナリーが設立されています。高原野菜や花の栽培でも知られるリゾートエリアで、澄んだ空気と八ヶ岳をはじめとする山々の眺望に囲まれて味わうワインは格別です。


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「ワインツーリズム」におすすめのワイナリー

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コモロッコファーム&ワイナリー(小諸市)の樽庫 (写真提供:花岡純也)

近年注目されている「ワインツーリズム」は、ワイナリー見学やワイン・ジュースの試飲だけでなく、現地の歴史や自然、温泉、直売所、郷土食など、その地域のさまざまな魅力を味わう旅のスタイルです。

ここでは、花岡さんおすすめの“ワインを飲まない人でも気軽に楽しめる”受け入れ態勢が充実したワイナリーをピックアップ。南信州を流れる天竜川沿いでは、リンゴ栽培も盛んなことから、リンゴの醸造酒であるシードルを手掛ける施設(シードルリー)もご紹介します。
あわせて、「まずはこれを飲んで欲しい」というワイン・シードルもまとめました。

【塩尻市】サンサンワイナリー(桔梗ヶ原ワインバレー)

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北アルプスを望む絶好のロケーションに位置するサンサンワイナリー (写真提供:花岡純也)

桔梗ヶ原から100mほど標高の高い柿沢地区にある「サンサンワイナリー」。社会福祉法人サン・ビジョンが運営する全国的にも珍しい「農福連携」のワイナリーです。障がい者就労支援事業所と協力し、ぶどう栽培から醸造までを一貫して行っています。畑を歩けば、ぶどうづくりに込められた思いを感じられ、予約制のガイドツアーではサステナブルな取り組みを知ることができます。

施設にはショップや試飲コーナーのほか、レストランを併設。北アルプスを望む絶景を見ながら、地元食材を活かした料理を堪能できるのはサンサンワイナリーならでは。ワインに詳しくなくても特別なひとときを過ごせます。


「まずはこれを飲んで」

花岡さんおすすめワイン

一つ目は「柿沢シャルドネ ネイキッド」。その名の通り“すっぴん”のシャルドネで、樽熟成を行わず、果実本来の味わいをダイレクトに味わえます。
もう一つは「柿沢ロゼ」。赤ワイン用品種メルローを贅沢に使ったロゼで、「冷やすと白ワインのように、温度が上がるにつれて赤ワインのようにも楽しめる秀逸な一本」と太鼓判を押します。

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ワインの個性を飲み比べできる試飲カウンターも (写真提供:花岡純也)

サンサンワイナリー

【住所】長野県塩尻市大字柿沢日向畠709-3(Google Maps
【アクセス】長野自動車道「塩尻IC」から車で約5分、JR「塩尻駅」からタクシーで約12分
【詳細・問い合わせ】公式サイト

【小諸市】コモロッコファーム&ワイナリー(千曲川ワインバレー)

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小諸の街並みを一望できる高台に建つコモロッコファーム&ワイナリー (写真提供:花岡純也)

小諸の新しい魅力を発信する「コモロッコファーム&ワイナリー」は、2023年に飯綱山公園の複合施設「STARRACE KOMORO(スタラス小諸)」に誕生しました。農業法人Greve.t(グレーベ)が運営し、耕作放棄地をぶどう畑に生まれ変わらせる挑戦を続けています。

ワイン好きはもちろん、観光やレジャー感覚で訪れる人にとっての楽しみも豊富。隣接するドッグランや美術館、レストランと合わせて立ち寄れば、一日を通じて充実した時間を過ごせます。ショップではオリジナルグッズや剪定枝などユニークな商品が並び、循環型農業の一端にふれられるのも特徴。試飲はワインサーバーを導入したセルフスタイルで、気軽に多彩な銘柄を味わえます。


「まずはこれを飲んで」

花岡さんおすすめワイン

「en. Blanc(アン・ブラン)」
シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブランをブレンドした白ワインで、若々しい果実味とキリっとした酸味が魅力。「天気のいい日に外で気軽に楽しみたい一本。ピクニックやテラスで飲むと最高ですよ」とのこと。

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ワインサーバーを導入した試飲コーナーで、さまざまなワインをテイスティング (写真提供:花岡純也)

コモロッコファーム&ワイナリー

【住所】長野県小諸市諸東房151-1(Google Maps
【アクセス】上信越自動車道「小諸IC」から車で約5分、JR「小諸駅」からタクシーで約10分
【詳細・問い合わせ】公式サイト

【松本市】山辺ワイナリー(日本アルプスワインバレー)

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開放的な風景を一望できるテラスは、ワイン片手に憩う特等席 (写真提供:花岡純也)

松本市の東部、山辺地区にある「山辺ワイナリー」は、2002年(平成14年)にJAと地元農家が出資して設立。ここ山辺は長野県におけるぶどう栽培の発祥の地とされ、石碑も建つ由緒ある土地です。ワイナリーでは松本平産のブドウ100%にこだわり、地域農家とともに丁寧にワインを醸造。2007年(平成19年)からは自社畑でも栽培を開始し、欧州系品種のラインナップも拡大しています。

美ヶ原高原やビーナスラインの入口に位置し、観光客が立ち寄りやすいのも魅力。ワイナリー隣接の直売所では地元農家が持ち寄る野菜や果物、ブドウも販売され、ワインを飲まない人でも買い物を楽しめます。


「まずはこれを飲んで」

花岡さんおすすめワイン

一つは「ナイアガラ甘口」。マスカットを思わせる華やかな香りが広がり、夏場はオンザロックで気軽に楽しみたい。
もう一つは「コンコード甘口」。99%以上が長野県で栽培されている品種で、甘酸っぱさが心地よく、赤ワインに馴染みのない人も親しみやすい味わいです。
どちらも“ワイン初心者にこそ”という2本。

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ガラス越しに樽貯蔵庫を眺められる直売所。自社ワインがずらりと並びます (写真提供:花岡純也)

山辺ワイナリー

【住所】長野県松本市大字入山辺1315-2(Google Maps
【アクセス】長野自動車道「松本IC」から車で約20分、JR「松本駅」からタクシーで約15分
【詳細・問い合わせ】公式サイト

【伊那市】カモシカシードル醸造所(天竜川ワインバレー)

リンゴの果汁から造られるお酒「シードル」。アルコール度数がワインより低めで気軽に果実酒を楽しめるとあって近年注目されています。特に、天竜川ワインバレーが位置する南信エリアはリンゴの生産が盛ん。「ワインはハードルが高い」という方に向けて、シードルリーもご案内します。

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醸造所に併設されたカフェでは、シードルや軽食を味わいながらくつろげます (写真提供:花岡純也)

中央アルプスの麓、広大なリンゴ畑に囲まれた「カモシカシードル醸造所」は、シードル造りを中心に据えた施設。敷地内には蒸留所やブランデー熟成庫も備え、果実を余すことなく生かした多彩な取り組みが行われています。

天竜川を挟んで南アルプスの山々が一望でき、背後には中央アルプスが連なるという贅沢なロケーション。四季折々に表情を変える果樹園の風景と山並みは、訪れる人を穏やかな気持ちにさせてくれます。併設するカフェでシードルや軽食をいただく、至福のひとときをどうぞ。


「まずはこれを飲んで」

花岡さんおすすめシードル

季節ごとに仕込む「セゾンシリーズ」の甘口。
なかでも「1eセゾン」は早生種のリンゴを仕込み、酸味が効いた爽やかな味わいで夏にぴったり。一方「3eセゾン」は晩生種を使用し、奥行きのある風味と余韻が印象的です。「同じ地域のリンゴでも収穫時期でこんなに違う。シードルの奥深さを体感できます」。

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醸造家が自らサーブするシードル。こだわりや思いを聞きながら試飲できます (写真提供:花岡純也)

カモシカシードル醸造所

【住所】長野県伊那市横山10955-14(Google Maps
【アクセス】中央自動車道「小黒川スマートIC」から車で約5分、JR「伊那市駅」からタクシーで約10分
【詳細・問い合わせ】公式サイト

【番外編】新ワイナリーが続々誕生「八ヶ岳西麓ワインバレー」

2023年に新登場した「八ヶ岳西麓ワインバレー」には現在、5つのワイナリーが登録されています(※)。生産量が少ないワイナリーも多いですが、いずれのワイナリーも個性豊かで注目度は抜群。各ワイナリーや販売店などで手に取って味わってみてください。
(※)2025年6月末時点

<Pick up> kifutato wines(原村)

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八ヶ岳西麓の自然に溶け込む、シンプルで温かな雰囲気のkifutato wines (写真提供:花岡純也)

標高1000mを超える冷涼な高原の地・原村に2024年(令和6年)、新たに誕生した「kifutato wines(キフタトワインズ)」。名前は両親と双子姉妹の頭文字をつなげたもの。家族の物語を映すようなドメーヌワイナリーです。ぶどう栽培は2015年(平成27年)に始まり、霜害や積雪といった高原特有の自然環境に立ち向かいながら畑を守り育ててきました。

醸造を担うのは双子の姉の桐子さん、ラベルデザインは妹の楓子さん。野生酵母による自然発酵を基本とし、加熱処理や過度なフィルタリングを避けることで、素材の持つうまみを素直に表現するスタイルが特徴です。


「まずはこれを飲んで」

花岡さんおすすめワイン

「move on BAKE(Merlot)」
ファーストヴィンテージながら果実味豊かで力強さを感じる赤ワインです。「ポテンシャルの高さを強く感じる一本。生産本数が限られているため、見かけたら即購入をおすすめします」。
※ワイナリーでの販売は終了しています。酒販店にてお買い求めください。

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ワインの味わいはもちろん、個性あふれるラベルも魅力 (写真提供:花岡純也)

kifutato wines

【住所】長野県諏訪郡原村払沢12642-1
【詳細・問い合わせ】公式サイト


取材・文:松尾 奈々子 協力:ソムリエ・花岡 純也(長野県観光機構)

花岡純也(はなおかじゅんや)

JSA認定ソムリエ。信州ワインバレー構想推進協議会副会長。長野県ワイン協会公認アンバサダー。GI長野官能審査員。日本ワイナリーアワード審査員。
長野県観光機構CX事業部(卸酒販)兼務パブリック事業2部(ツーリズム)

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