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特集『新緑の長野へ。“ハレの日旅”』 春爛漫! 春色の花々を愛でる、自分だけの風景と出合える旅へ

自然が豊富な長野県の春は、雪解けとともに一斉に花々の共演がはじまります。草花は春の暖かい日差しを敏感に感じ取り、力強く芽吹いて、季節が移り変わるこの季節を色鮮やかに演出します。春に見頃を迎える花は桜だけではありません。華やかで明るくコントラストのある春の風景を見にいきましょう。

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TOP PHOTO 写真提供:蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン

 

桜よりも一足早く咲くピンクの花【あんず】の日本一の名所「千曲市あんずの里」

標高380~450mのなだらかな傾斜地に広がる、ふんわりと花霞がかかったようなあんずの花畑(写真提供:信州千曲観光局)

105台が駐車可能な公営駐車場に併設された「窪山展望公園」からの眺め(写真提供:信州千曲観光局)

森地区と倉科地区に広がる「あんずの里」。一面の花畑を撮影に訪れるカメラマンも多い(写真提供:信州千曲観光局)

樹齢数百年ともいわれる大きなあんずの古木も(写真提供:信州千曲観光局)

貴重なあんずの古木を移植し、旧家の門構えを修復して、「あんずの里」の原風景を再現した「あんずの里スケッチパーク」(写真提供:信州千曲観光局)

正面に冠雪の北信五岳を望む。観光農園ではなくあんずの生産のための畑だが、観賞用に散策路が整備されているのがうれしい(写真提供:信州千曲観光局)

あんずの生産量全国トップクラスの長野県。その6割を占める一大産地の千曲市のなかでも特に水はけがよい森地区と倉科地区は「あんずの里」とよばれ、なだらかな傾斜地の一面にあんず畑が広がります。開花時期の3月下旬から4月上旬には、ひと目で多くの花が見渡せることから「一目10万本」「日本一のあんずの里」と表現されるほどの風景が楽しめるのが魅力。期間中は例年、約10万人もの花見客が訪れています。「上平展望台」や「窪山展望公園」まで行くと、天気のよい日は美しい北アルプス、戸隠連峰の山々の残雪と青空、薄紅色の花のコントラストも楽しめます。
千曲市にあんずが伝わったのは、江戸時代前期の元禄時代。伊予宇和島藩主・伊達宗利公の息女・豊姫が第三代松代藩主・真田幸道公に輿入れした際、故郷を懐かしんで持ち込んだあんずの種が原型といわれており、土地が栽培に適していたことから地域に根づいていきました。また、あんずの種は咳止めとして生薬に用いられるものがあり、その効能を評価した松代藩が栽培を奨励したことも、この地であんずが多く栽培されたきっかけとなったといわれています。毎年4月初旬から中旬には「あんずまつり」も開催されます。


INFORMATION
〈千曲市・あんずの里〉
長野県千曲市森・倉科地区一帯
TEL 026-261-0300(信州千曲観光局)
https://chikuma-kanko.com/

初夏の高原を可憐に彩る【ミズバショウ】の穴場スポット「むれ水芭蕉園」(飯綱町)

飯綱東高原の「いいづなリゾートスキー場」の隣に位置し、至るところに群生するミズバショウが楽しめる「むれ水芭蕉園」(撮影:阿部宣彦)

木道が整備され、静かな湿原に響く水の流れる音や小鳥の声などを聞きながら散策できる(撮影:阿部宣彦)

純白のミズバショウと緑の葉、黄色いリュウキンカの共演は高原の湿原ならではの風景(撮影:阿部宣彦)

楚々と咲く小さな白いニリンソウは春山を代表する花のひとつ(写真提供:飯綱町観光協会)

「むれ水芭蕉園」から車で20分ほどの町内の「丹霞郷」は約1,500本の桃の花が咲き、北信五岳とのコントラストが楽しめる(写真提供:飯綱町観光協会)

妙高戸隠連山国立公園の一角に位置し、飯縄山と霊仙寺山の麓に広がる標高910mの「むれ水芭蕉園」。春の雪解け水が流れる5haのなだらかな湿原に約41万株のミズバショウが咲き誇ります。清楚な佇まいが春の訪れを告げる、湿原の花の代表格。入場無料の園内には一周530mの「丘の道コース」と、820mの「丘の道・花の道(外周)コース」の木道の遊歩道が整備され、15~30分ほどで周回ができます。開花時期は例年、4月中旬~5月上旬。ハンノキ林の下、ミズバショウを囲むように咲く約10万株の黄色の可憐なリュウキンカも見られます。
長野県内のミズバショウの群生地としては、「奥裾花自然園」や「戸隠森林植物園」「栂池自然園」などが有名ですが、「むれ水芭蕉園」は無料駐車場が併設されていて、長野市街地から簡単にアプローチできるのに意外と知られていない穴場スポット。静寂な自然の中で、美しい風景を独り占めできるような楽しさも味わえます。
「水芭蕉園」から道路を挟んで反対側には、5月上旬から半ばにかけて約10万株のニリンソウが群生する「ニリンソウ園」も。また、同じ時期、同町内の「丹霞郷」では日本の原風景ともいえる桃の花ののどかな風景が広がります。


INFORMATION
〈飯綱町・むれ水芭蕉園〉
長野県上水内郡飯綱町川上2755-539
TEL 026-253-7788(飯綱町観光協会)
https://1127.info/sightseeing/828/

国内有数の豪雪と高原の環境が生み出す【湿原植物】と野鳥の宝庫「斑尾高原」(飯山市/新潟県妙高市)

豊かな森と水に恵まれた標高1,000mに位置する斑尾高原。3つある湿原のうち、沼の原湿原は最大の広さと花の豊富さを誇る(写真提供:斑尾高原観光協会)

花を包み込む白い仏炎苞(ぶつえんほう)が凜と立ち並ぶミズバショウ(写真提供:斑尾高原観光協会)

平坦な湿原内は一部木道が敷かれ、ところどころにベンチもあるのでゆっくりと自然散策が楽しめる(写真提供:斑尾高原観光協会)

春から夏の終わりまでさまざまな湿原植物が咲くことから、沼の原湿原は「原生花園」の別名も(写真提供:斑尾高原観光協会)

沼の原湿原から車で10分ほどの希望湖(のぞみこ)は周囲を深い森に囲まれ、ミズバショウの群生地のほか、飯山市天然記念物のヤエガワカンバやブナの巨木などが楽しめる(写真提供:斑尾高原観光協会)

斑尾山の北約3km、長野県と新潟県境に位置する斑尾高原には3つの湿原があり、それぞれに湿原植物が楽しめます。なかでも最大の広さを誇るのが沼の原湿原(妙高市)は21haの広大な湿原に四季を通じてさまざまな花が咲き誇る宝庫。とくに4月下旬から5月下旬にかけては、雪解けとともに開花する10数万株ものミズバショウやリュウキンカの大群落と残雪の競演が見事です。生息する野鳥の種類も豊富で、メジロやウグイス、イカル、モズなどのほか、生息分布が限られた貴重な鳥・ノジコが見られることもあり、静かな森の中、鳥のさえずりを聞きながら、バードウォッチングとともに花の鑑賞を楽しめます。
江戸時代中期、享保年間の記録によると、かつてこの湿原地帯には沼部落がありましたが、少しずつ人口が減少。大正(1926)15年に電力会社の貯水池として用地買収されると、住民全員が離村したそうです。その結果、人家がなくなったことで、ミズバショウやリュウキンカをはじめとする湿原高山植物の生息地として絶好の条件に。人知れず大群落が形成されたのです。
湿原内にはいくつかのルートが設定されており、湿原の最奥まで進んで一周するロングコースは2.8km(約1時間半)、ショートコースは1.6km(約50分)。東湿原を歩くバリエーションコースは約1.3km(40分)です。ミズバショウの季節が終わると、5月下旬から6月中旬にかけては白いミツガシワの花が湿原を被いつくし、カキツバタ、ニッコウキスゲへと移ります。


INFORMATION
〈斑尾高原〉
長野県飯山市斑尾高原
TEL 0269-64-3222(斑尾高原観光協会)
https://www.madarao.info/

自然風景を取り入れた【英国式庭園】で四季折々の花々が楽しめる「蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン」(茅野市)

庭園内でもひときわカラフルなチューリップ。原種系の早咲きから遅咲きまで、次々と咲きつないでいく(写真提供:蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン)

4月に咲くフリチラリアは「バラクラ」のシンボルフラワー。イギリスでは「フリチラリアが咲く庭には妖精がいる」との言い伝えも(写真提供:蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン)

4月下旬の春の風景。多様な植物で構成される英国式庭園ならではの景観(写真提供:蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン)

5月に咲くワスレナグサの群生。新緑と青のコントラスが清々しい(写真提供:蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン)

6月はバラが開花をはじめる季節。見ごたえがあって香りも豊か(写真提供:蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン)

純白のランブリングレクターは、シェイクスピアの作品にも登場するオールドローズ(写真提供:蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン)

ポールズ・ヒマラヤン・ムスクのトンネルは多くの人が撮影する人気スポット(写真提供:蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン)

1990年の初夏に蓼科高原に開園した、約1万haの広大な「蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン」。英国園芸の第一人者であるケイ山田氏の統一デザインのもと、設計から石工、ガーデナーまで、庭園の全てを英国人専門家により創園された日本初の本格的英国式庭園です。英国式庭園とは、自然風景を求める思想から生まれたもので、庭にイギリスらしい風景を取り入れた空間。自然のランドスケープだけでドラマティックな四季の移ろいを感じる庭がつくられています。
「バラクラ」とは、ケイ山田氏のファッションブランド「バラ色の暮し」の略称。その名称からバラ園と思われがちですが、四季を通じて花が咲き替わるようにデザインされているのが大きな魅力です。イギリスから移植した2,500本もの草花をはじめ、5,000種類を超える植物コレクションが週ごとに違う表情を見せてくれるので、いつ行っても新しい景色と出合える楽しみがあります。花々のやさしい色と香り、飛び交う蝶やハチ、小鳥のさえずりなど、空間全体で人と自然の共存を感じることができます。


INFORMATION
〈蓼科高原 バラクラ イングリッシュ ガーデン〉
長野県茅野市北山栗平5047
TEL 0266-77-2019(4~10月 9~18時、11~3月 9時30分~17時、不定休 ※入園料等の詳細は公式サイトをご確認ください)
https://barakura.co.jp/



取材・文:島田 浩美

<著者プロフィール>
島田 浩美(Hiromi Shimada)
長野県飯綱町生まれ。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を経て、長野市の出版社にて編集業とカフェ店長業を兼任。2011年、同僚デザイナーと独立し、同市内に編集兼デザイン事務所および「旅とアート」がテーマの書店「ch.books」をオープン。趣味は山登り、特技はトライアスロン。体力には自信あり。

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