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「川で過ごす時間を楽しむ」フライフィッシングの世界! 長野県は渓流釣りパラダイス 難しいからこそおもしろい! 「自然を相手に“魚から学ぶ”ディープな釣りの世界」身も心もリフレッシュ

まだまだ寒さが残っていますが、春の兆しを感じる日も増えてきましたね。長野県内の渓流釣りが続々と解禁しています。管轄する漁協(漁業協同組合)、河川によって遊漁期間は異なりますが、春の足音とともに解禁する場所が増えていきます。一年中釣りができる一部の本流(キャッチ&リリース区間有り)や冬季ニジマス釣り場などもありますが、イワナやヤマメを始めとするトラウト(鱒)を狙う釣り人にとっては、待望のシーズンインです。

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山岳県長野はトラウトの宝庫!

真夏でも早朝は涼しい。白馬村を流れる姫川支流、松川。八方尾根と白馬三山を望む
季節は夏から秋へ。木漏れ日を水面に映す遠山川支流にて
初夏のきらめき。流れを割って出た瑞々しいヤマメの姿。梓川支流にて
夏の終わり。しっとりとした軽井沢の渓流にはバンブーロッドがよく似合う

ご存知のとおり長野県は「海なし県」ですが、山地が多い=河川に非常に恵まれています。寒冷な気候はトラウトの生息環境にも適しています。南・北・中央アルプスや八ヶ岳を始めとして山々が聳え、山肌には豊かな森、刻まれた深い渓谷に滔々と流れる清らかな水は、健やかな渓流魚たちを育みます。
一般的に川の上流域にはイワナが生息します。とくに険しい山岳渓流エリアでは、天然のイワナとも出会えます。さらに中流域の本流や里川、湖沼も数多くありますので、季節やスタイルに合わせてフィールドを選ぶことができます。また、日本海側と太平洋側それぞれに流れる河川があることから、ヤマメとアマゴ、それぞれを狙うことができるのも特筆すべきかもしれません。

トラウト豆知識『ヤマメとアマゴの棲み分けと見分け方』

千曲川支流のヤマメ。パーマーク(体側の斑紋)が特徴的だが、トラウトたちの蒙古斑のようなもの。成長に伴い薄く、または消える
早春の天竜川支流で釣れたアマゴ。パーマークの上に散りばめられた朱点が美しい

ヤマメとアマゴ:ヤマメ(サクラマス)とアマゴ(サツキマス)は非常に似ていますが、一般的にアマゴの体側には朱点が入っていることで見分けることができます。ヤマメは「日本海側に注ぐ河川」と「“東日本”の太平洋側に注ぐ河川」に生息し、アマゴは「太平洋側に注ぐ西日本の河川」に生息しています。この場合の“東日本”は大まかにいうと神奈川県を南端としています。ただし、公私に関わらず無配慮な放流がされていた時代もあり、「アマゴのエリアでヤマメが釣れる」こともあります。

行き帰りのアプローチが長く、「沢登り」してたどり着くような渓(たに)の奥には、天然魚たちがひっそりと、それでいて力強く息づいています。釣り人に叩かれていない分、無垢な魚たちが多く、たどり着くことさえできれば釣り自体は比較的容易です。一方、数多の流れを集めた本流(中流域)は、60cmを超えるような大型トラウトたちも悠々と泳いでいます。車道からのアクセスもよいのですが、その分“スレた”狡猾な魚が多く、ポイントも絞りにくいために一匹を釣り上げるのは簡単ではありません。会心の一本が釣れたときは感動もひとしおです。

難しいからこそおもしろい!川での時間にリフレッシュ

姫川支流にて。水面でライズするイワナ。息を潜め、飽くことなく観察し続ける
新潟県との県境にほど近い、千曲川支流にて。エルモンヒラタカゲロウのオス
9月中旬。千曲川本流から遡上してきた見事なイワナ。体長は44cmあった
紅葉の頃、犀川本流にて。身をひるがえした瞬間、銀色に光る魚体に見惚れてしまう

竿を使う釣りには、主にエサ釣り、ルアーフィッシング、フライフィッシングがあります(他にテンカラやアユの友釣りなども)。
フライフィッシングは、虫や小魚を模したフライ(洋式毛鉤)を使って魚を誘い出す釣り方です。季節やフィールドなどの違いで、釣り方や使用するロッド(釣り竿)やライン(釣り糸)の種類、使い分けも煩雑です。非常にゲーム性の高い釣りですが、“ハードルが高い”イメージがあるのではないでしょうか? 実際に自然の河川で一匹の魚を手にするまでの道のりは他の釣り方に比べて遠いでしょう。思ったとおりにフライを投げ、流すためには、日々の練習が必要かもしれません。
道具立てやテクニック以外にも難しさがあります。満足いく釣果を得るためには、自然環境も含めてしっかりと観察、理解を深めることが必要になります。ときに米粒より小さなフライを巻く「タイイング」も奥深く夢中になってしまいます。鮮度の高いネット情報も有益ですが、古い書籍や専門誌のバックナンバーにも多くのヒントを見つけることができます。気づくと(水生)昆虫図鑑がずらりと本棚に並んでいたりします。

ディープな世界へようこそ! 一朝一夕には成立しない釣り。一から始めると学ぶことは多いです。
“難しいからこそおもしろい”のかもしれません。“魚を数多く釣る”ことを目的にせず、“会心の一本”を! はたまた流れに沿って移動しながら、渓で過ごす時間を楽しむ……。一日ロッドを降り続けると、心地よい疲労感と共に身も心もリフレッシュしていることでしょう。それもフライフィッシングの醍醐味のひとつです。
今シーズン、フライフィッシングを通して長野の渓流釣りの魅力を伝えられるよう、不定期連載していきます。
第一回目は【長野県・鱒の歳時記】です。季節ごとの川と魚の様子、フライフィッシングの楽しみを紹介します!

【長野県・鱒の歳時記】 春 待ちわびた季節の訪れに心躍る!

千曲川支流の溪へ。雪も残る河原だったが、足元には春の訪れを知らせるフクジュソウが花開いていた
姫川支流の解禁日。雪を踏み締めたどり着いた小渓で沈めたフライを丹念に流すと微かなアタリがあった
解禁当初の天竜川本流にて。長いやり取りの末、立派な体躯のニジマスがネットに収まった
3月の解禁当初。“サビ”が抜け、散りばめられた白点が美しいイワナ。姫川支流にて
2月中旬の天竜川水系にて。石の裏にいたナミヒラタカゲロウの幼虫。羽化するのが楽しみ

2月16日は県内の渓流釣り解禁の第一弾。しかし長野県の山間の支流、渓流のほとんどは雪に覆われています。そのため、釣りのフィールドとしては平地を流れる本流がメインになるのがこの時期です。人気河川の有名なポイントでは、期待に胸を膨らませた太公望たちが連なる様子も見受けられます。
さらに3月から4月にかけて、数多くの河川が解禁していきます。気温は徐々に上がっていき、林床ではフクジュソウやカタクリの花が綻ぶ頃です。高い山々から流れ落ちる沢水はまだ冷たく、魚たちの動きは鈍いです。けれどポイントをうまく選ぶことで、釣果も期待できるようになります。湧水や地熱の影響など、少しでも水温の高い場所を狙うのも一手ですね。
さて、この時期水中では何が起こっているのでしょう? 幼虫だった水生昆虫(カゲロウやカワゲラ、トビケラなど。渓流魚たちの主食)が、成虫(亜成虫)になるために水面に向かい、やがて羽化していきます。それに合わせて魚たちの食の対象も変化します。当然、その状況をじっくりと観察して、釣り方を選ぶ必要があります。往々にしてシビアで繊細な釣りとなることでしょう。
季節が進むと雪解けが始まります。すると川に雪代(ゆきしろ)が流れ込むようになってきます。そのため増水と濁りで釣りが困難になりますが、それが落ち着くといよいよ長野の春も本番です。足繁く通い続けることで、小さくても宝石のように燦く一匹がきっと飛び出してくれるはずです。渓流シーズンのスタートです!

【長野県・鱒の歳時記】 初夏 生命感にみなぎる川面でフライフィッシング!

県北端の支流へ。山あいに漂う甘い匂い。正体を探すとキリの花が彩りを添えていた
志賀高原から流れ出す雑魚川。漁協による放流はなく、自然繁殖したイワナたちが息づく。ほぼ全ての支沢を禁漁とし、種沢となっている。
梓川の支流。日に日に緑濃くなっていく渓。爽快さを感じる沢歩きに身も心も癒される
周りをよく観察していると、いろんな発見があるかも。天然のワサビを見つけた!
モンカゲロウの羽化する季節になると、心弾むような高揚感を感じてしまう
流れを読み、フライに生命感を与えて泳がせるウェットフライの釣りもおもしろい
ドライフライの代名詞的フライ、エルクヘアカディスは様々なバリエーションで魚を誘うことができる
日中、草陰で羽を休めるヒゲナガカワトビケラの成虫。きっと夕方はこのパターンで釣れるはず!
本物そっくり!? ライズ狙いで川面を流下するエルモンヒラタカゲロウにマッチさせた
梅雨がひと休みしたかのような数日間。小谷村の山あいでウェットフライに喰いついた良型イワナ
梅雨の長雨が続いた後、ようやく濁りが取れた犀川にて。黄色味の強いタイプのブラウントラウト

あえて夏を二つに分けてみました。まずは初夏。木々の新緑が美しい季節、フジやキリの花が咲き、萌色の山肌に彩りを添えます。至るところで生命の息吹を感じる初夏。水生昆虫たちが盛んに羽化して川面を飛び交い、草陰で羽を休めています。フライフィッシングが最も楽しい季節かもしれません。
ときに川虫たちがまとまって一気に羽化する瞬間に出会うことがあります。スーパーハッチです。それに狂喜乱舞するかのようにトラウトたちのライズ(水面付近での魚の捕食行動)が始まります。食べている虫にフライを合わせる「マッチ・ザ・ハッチ」の釣りは、フライフィッシングならではの醍醐味でしょう! まるで謎解き気分です。
夕暮れ迫る川辺に立ち、せせらぎに喉を震わせるカジカガエルたちの声に耳を傾けます。暮色の川面に起きるライズを見ているだけで満ち足りた気分になってしまう、そんなかけがえのない時間を過ごせることにフライフィッシングの懐の深さを感じてしまいます。

【長野県・鱒の歳時記】 盛夏 山岳渓流の醍醐味を存分に味わう

白馬村、姫川源流部のバイカモ。湧水のおかげで真夏でも水温は低く、トラウトたちの活性も高いエリア
北アルプスの清冽な水に磨かれたイワナ。周囲の色味を映すかのような淡い体色だった
滝壺に悠々と泳ぐ山奥のイワナ。地域差、個体差が大きいのが渓流魚。ヒレの縁取りが印象的だった
昼なお暗い、小谷村の山中で。岩陰に潜む源流イワナを求めて仲間たちと遡行していく
千曲川水系で釣れた尺越えヤマメ。精悍な面構えと太く美しい魚体に見惚れてしまう

梅雨が明けるといよいよ夏本番です!
盛夏。平地を流れる里の河原はびっしりと緑に覆われ、むせ返るほどの草いきれ。日中は水温が上がってしまうため、釣りは朝夕が狙い目になってきます。酸素量が多く虫たちが流下しやすい場所を狙うといいでしょう。
山岳エリアはメインシーズンを迎えます。瑞々しい夏の渓。ブナやミズナラが覆う源流でイワナを追い求める釣行は、ゴロゴロとした岩の間を抜け、ときに急な斜面を登りつつの「沢登り」です。山奥のイワナは無垢そのもの。落ちてくるもの全てに興味を示すと言っても過言ではないほどです。水生昆虫に加えて、昆虫たちの活動も盛んになります。次の釣りに備えてフライを巻く楽しみも増えます。
ビギナーにとっても釣りやすい季節でしょう。大きなドライフライに向かって魚が飛び出す様は小気味よく迫力があり、ドキドキさせられっぱなしです。

【長野県・鱒の歳時記】 初秋 食欲の秋は大物狙いのチャンス!

犀川本流のヤマメ。滅多に出会えないが、その分釣れたときの感動もひとしお
大物と出会えるのもこの時期の醍醐味! 千曲川本流から遡上した見事なイワナ
犀川本流のニジマス。日中も涼しくなってくる頃、魚たちの喰いもたってくる
禁漁まで数日となった9月下旬。犀川の支流へ足を運ぶと秋色に染まったヤマメが果敢に飛び出した
南信の秘境、遠山川で秋の訪れを感じながら、のんびりとラインを伸ばす。自由を満喫する
山道の途中で足元にヤマグリを見つけた。季節の巡り、実りの秋を感じる

お盆を過ぎれば山あいの緑が徐々に色褪せていきます。赤紫のハギの花に混ざってススキの穂が伸びだす頃。食欲の秋です。産卵を控えたトラウトたちも同じようで、「秋の荒喰い」とも呼ばれるくらい食欲旺盛になっています。
ダムや本流から支流へ遡上する魚たちの中には飛び抜けた良型も混ざっています。大物たちと出会うチャンスです。ただし、百戦錬磨の大物だけに経験豊富、“スレ”ていて一筋縄ではいきません。シーズンの総決算! 良型を手にすることができるのか、腕の見せどころです。
流れに沿って遡行していくと、天然のナメコやマイタケなどのキノコ類や山栗なども目につき、釣りへの集中が削がれそうになってしまうのが悩みです。
9月末で自然渓流のほとんどが禁漁時期となります。そのため、秋を感じながらの釣りは、わずかなチャンスしかありません。台風の多い季節でもあるので、天気予報のチェックが日課のようになってしまいます。川面を吹く風に、釣り人は一抹の寂しさを感じ得ません。

【長野県・鱒の歳時記】 晩秋から厳冬期 モノトーンの世界で侘び寂びを感じる

冷え込みが厳しくなってくると川面にうっすらと霧が立ち込める。紅葉に染まる山肌を朝日が照らす
紅葉に負けじとばかり、レッドバンドが一層鮮やかになった犀川のニジマス
ときに60cmを越えるような大きなブラウントラウトも姿を見せてくれる犀川
新年を迎えた犀川にて。厳しい寒さが骨身に染みる。凍りつくラインとガイドを解かしながらの釣り
銀色のグラデーションが美しいニジマス。修行のような釣行の末に釣れた一本。震える手は感動からか?寒さのせいか?

山々が色づく頃、ほとんどの自然渓流は禁漁期に入りますが、そんな季節でも釣りが可能な河川がわずかにあります。例えば有名なのが、長野市内で千曲川と合流する犀川です。犀川殖産漁協の管轄する本流は、一年中釣りが可能です。
太い流れに揉まれた大型のトラウトは、引きごたえも十分。簡単には取り込ませてくれず、多くの釣り人を唸らせます。発達したヒレや太い魚体は見事で、全国的にも人気で太公望たちの垂涎の的となっています。10月に入ると同時に他県ナンバーの車が一気に増え、国道19号線沿いはまるで解禁のような賑わいを見せます。
里の紅葉が終わると、木々は葉を落とし冬が訪れます。やがて河原は雪に覆われ、釣り人の数もまばらになっていきます。水量が減りジンクリアに澄んだ流れ、川面に立ち上る川霧……。侘び寂びの世界です。流れに立ちこみ、体力と集中力の限界に挑戦するような釣りです。簡単に釣れないからこそおもしろい! まさに釣り人の真骨頂ですね。

一般的には3月~9月いっぱいが渓流釣りの季節です。とくに長野県は桜が散ったGW明け、5月くらいからが釣りやすいでしょう。フィールドの状況をよく観察してポイントや釣り方を選べば、きっと素晴らしい魚を手にすることができるはずです。
不思議なもので、経験を積み腕前が上がるにつれて「釣れてもいいし、釣れなくてもいい」心境になります。溪で過ごした時間が増え、環境の変化に敏感になれば、感じたことをフィードバックして未来に繋げていく糧になるかもしれません。
古くは狩猟を目的に山に入っていたように、渓流釣りも元々は貴重なタンパク源を確保する手段だったかもしれません。けれど自然のなかで竿を振ることを楽しみとして親しまれてきた部分もあります。新たな余暇の過ごし方、ライフワークとしてフライフィッシングを始めてみてはいかがでしょう。きっと気持ちを豊かにしてくれます。同時に自然を見る目が変わることでしょう。
※トラウトが生息する長野県内の河川や湖沼には漁業権があります。遊漁券の購入を忘れずに。頻繁に通う場所は、年券がお得なことが多いです。


取材・撮影・文:杉村 航

<著者プロフィール>
杉村 航(Wataru Sugimura)
フォトグラファー。1974年生まれ。長野県在住。山岳・スキー写真をメインに撮影する。沢に薮山、山スキー、道なき道をいく山旅が好き。ライフワークはトラウトフィッシング。美しいヤマメやイワナを求めて、全国の渓流に足しげく通う日々。小谷村山案内人組合所属、北アルプス北部遭対協。

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