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初夏の夜照らす南信のホタル特集。暗闇を彩るホタルの光をめぐる、地元ライターお薦めの南信州ホタルスポット4選!

初夏の風を感じながら、ホタルが発する淡い光をめぐる夜はいかがでしょうか。かつて日本全国の田園地帯や清流で見られていたホタルは、都市部だけではなく里山でもなかなか目にすることがなくなってしまいました。そんな貴重な存在となったホタルたち、南信州では6月ごろに田畑や小川のほとりで見られるようになります。ホタル大好き地元ライターがとっておきのスポットをご紹介。

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記載の内容は、記事執筆時点の情報となります。最新の情報や詳細は、各市町村等にお問い合わせください。

〈下伊那郡高森町やまぶき天伯峡〉地域で守り伝承する自然とホタル祭り

天伯峡に乱舞するホタルの光。©️山吹ほたる管理委員会

下伊那郡高森町の山吹区天伯峡地域では6月中旬ごろから、たくさんのゲンジボタルを鑑賞することができます。毎年ホタルの発生数を地元住民が確認し、100匹以上のホタルが舞う時期を想定し『ほたる祭り』と『天伯峡ほたるウィーク』が開催されます。
『ほたる祭り』は地元住民が開催する祭りです。例年は多数の飲食店の出店のほか、高森北小学校の小学生による『山吹ほたる太鼓』の演奏など、子どもたちも祭りに参加し大変にぎわいます。あわせて開催されるのが『ほたるウィーク天伯峡』。ホタルの発生数が多いスポットを散歩するイベントで、例年1週間ほど開催されます。ささやかな淡いホタルの光を見ながらの散歩。この夏の思い出に。

県道から外れると豊かな自然が残る天伯峡の里山。

山吹区天伯峡エリアで多くのホタルが見られる背景には、天竜川がもたらす地形と豊かな自然環境があります。天竜川が形づくる河岸段丘(川が地面を削ることで出来る階段状の地形)では、露出する岩肌から澄みきった湧水が絶え間なく流れ、豊かな水利を支えています。今でも田園風景を残し、道端を流れる清流にはホタルとその餌となるカワニナが多く生息しています。この貴重な自然環境を30年以上にわたり整備、守り継いでいるのが地元住民によって発足された、ほたる管理委員会と山吹区民の方々です。主流の寺沢川の整備事業や、高森北小学校ではホタル管理委員会の指導の下、ホタルの飼育を授業の一環で行い「水辺の学習」に力を入れるなど、次世代に繋がる活動を続けています。
「高森の子どもたちにホタルが飛び回る高森の姿が原風景となってくれたらうれしい」とホタル管理委員会の方は語ってくれました。
近年では国道沿いに開発が進み大規模施設も建設され、ゲンジボタルやヘイケボタルなど水生ホタルの幼虫の餌となるカワニナが生育する水路付近にも開発の波が押し寄せホタルの減少が懸念されています。変わりゆく原風景と継承する自然……地元住民による地道な活動も多くの方に知ってもらうべく、住民の手で祭りやカルチャーイベントを開催しています。

【ホタル情報】
ホタルの種類:ゲンジボタル
出現期間:6月上旬~7月上旬
出現ピーク:6月20日頃(例年)

【アクセス】
天伯峡まで=車利用:中央道「座光寺スマートIC」より15分。『山吹ほたるパーク駐車場』~徒歩で約10分。電車利用:JR東海飯田線「下平駅」下車~徒歩15分。

● 下伊那郡高森町やまぶき天伯峡ほたる祭り
開催:例年6月中旬
会場:山吹ほたるパーク
住所:長野県下伊那郡高森町山吹4559(MAP
問い合わせ:下伊那郡高森町地域振興課。TEL0265-35-9416

〈周辺おすすめスポット〉
高森町は豊富な野菜が取れることで有名。旬彩館に立ち寄って旬の野菜を買ってみては。
 ● 旬彩館 
住所:長野県下伊那郡高森町出原321-1(MAP
営業時間 9:00~17:30(夏季)
問い合わせ:TEL0265-34-2166

〈飯田市龍江七和の里〉2キロの清流に自然発生するホタルの名所

暗闇に舞うホタルと清流の音。©️龍江HP運営委員会

飯田市を流れる天竜川の東側に位置する竜東エリアは、畑や里山など豊かな自然が残る地域。龍江地区七和の里では6月に入ると水田の脇を流れる清流にゲンジボタルが飛び始めます。清流の長さは2キロ以上も続き、夕闇の水辺を舞うホタルの光はまさに幻想的な光景です。美しい棚田と共に、田園風景を彩るホタルの光りに酔いしれてみてはいかがでしょうか。
景勝地“天龍峡”から車で15分ほど進んだところに『ふれあい七和館』があります。隣接している駐車場に車を止めそこから散策を始めましょう。
そこには棚田や清流が続く風景が広がり、間近でホタル観賞をすることが出来ます。清流の要所に架かる小橋はどこか懐かしい田園風景。絶好の撮影スポットです。

のどかな棚田と清流が続く風景。時期になると一斉にホタルが舞う。

例年6月下旬には『龍江七和の里 ほたる祭り』が開催されます。ホタルを見つつお祭り気分も楽しみたいという方はこの日に合わせて訪れてみるのもいいかもしれません。
七和の里ほたる祭り実行委員会がまとめた『龍江七和の里ホタルMAP』は、清流沿いで特にホタルが発生するスポットを紹介しています。HP等で見ることができるのでホタルMAPを片手に周辺を散策することも楽しめます。

【ホタル情報】
ホタルの種類:ゲンジボタル
出現期間:6月上旬~7月上旬
出現ピーク:6月25日頃(例年)
*『龍江七和の里ホタルMAP』
https://msnav.com/22121

【アクセス】
ふれあい七和館まで =車利用:三遠南信自動車道「天龍峡IC」より15分。『ここだにファーム駐車場』※祭り開催時は臨時駐車場有。周辺の小川でホタル観賞が可能。電車利用:JR東海飯田線「千代駅」下車~タクシーで5分。

● 龍江七和の里ほたる祭り
開催:例年6月下旬
会場:ふれあい七和館(周辺)
住所:長野県飯田市龍江8810(MAP
*備考:今年は規模を縮小して開催。出店はテイクアウトのみ。
問い合わせ:龍江自治振興センター。TEL0265-27-3004。天龍峡温泉協会。TEL0265-27-2946

〈周辺おすすめスポット〉
景勝地で有名な天龍峡は車で約15分。
 ● 天龍峡(MAP

〈下伊那郡阿南町新野〉ヘイケとゲンジが飛び飛び交う新野八景の世界

7月になると水田と山ぎわからヘイケボタルが飛び立つとのこと。©️阿南町振興課

南信州地域でも、山間部地域にホタルの景勝地として名高い名所があります。阿南町新野地区では、7月上旬になるとヘイケボタルとゲンジボタルの2種類のホタルが飛び交います。国道151号線沿いを豊川方面へ走り続けると大村湖というため池が見えてきます。併設している駐車場に車を止め、あたりを散策。ニッコウキスゲの丘の向こう一面に水田が現れます。この時期に水田にホタルが飛び回り、私たちを楽しませてくれます。この地域では、座禅草、小敦盛草などといった県絶滅危惧種の山野草も多く自生しており、四季折々の風景は“新野八景”(地区内の大切な景観を次世代へ伝承する目的で設定)として紹介されています。ここで見られるホタルも「菅沼のホタル」という名で新野八景の1つに数えられています。

ホタルの光り方は地域によって違うことが知られています。諸説ありますが、東日本では主に4秒に1度点滅する“4秒ホタル”、西日本では2秒に1度点滅する“2秒ボタル”があります。
東日本と西日本のほぼ間に位置する阿南町のホタルは3秒に1度点滅する“3秒ボタル”なんだそうです。心の中で数えながら鑑賞をしてみるのも面白いかもしれません。

小敦盛草の花。日本全国を探してもなかなか見る事のできない山野草が身近に自生している。

清流の音を聞きながら“3秒ホタル”や希少な山草花を観察しながら原風景的な自然を散策する。帰りは阿南温泉『かじかの湯』で汗を流す。そんな旅はいかがでしょうか。

【ホタル情報】
ホタルの種類:ヘイケボタル・ゲンジボタル
出現期間:6月下旬~7月下旬
出現ピーク:7月10日頃(例年)

【アクセス】
大村湖、池端 ハナノキ自生地周辺で観察可能=車利用:三遠南信自動車道「天龍峡IC」より40分~隣接駐車場(10台)。電車利用:JR東海飯田線「温田駅」を下車~バスで15分。

● 下伊那郡阿南町新野のホタル
問い合わせ:阿南町役場振興課。TEL0260-22-4055

〈周辺おすすめスポット〉
『かじかの湯』にはキャンプ場やコテージも併設。
● かじかの湯 
住所:長野県下伊那郡阿南町富草4923(MAP
営業時間:10:00開館~21:00閉館(最終受付20:30)
定休日 毎週水曜日(祝日等により変更あり)
問い合わせ:0260-22-2000

〈長野県上伊那郡辰野町〉ホタル発生数日本最大!? 日本屈指のホタルの里

暗闇に一斉に舞う1万匹のホタルは圧巻。©️辰野町役場

『信州ほたる祭り』は日本屈指のホタルの祭典です。辰野町はホタルが日本一発生する地域として知られており、毎年1万匹を超えるホタルが私たちを楽しませてくれます。安定した発生数を維持するため、辰野町ではホタルの保護や繁殖に力を入れています。ホタルの生育方法には“ダブル水槽法”という飼育方法を用いており、飼育しているホタルが成長不良とならない工夫をしています。
 
ほたる祭りの会場は辰野の松尾峡にある『ほたる童謡公園』。この公園ではホタルが生息しやすいように小川や水田などの環境が整備されています。面積も9.15ヘクタールと非常に大きく、全水路の延べ長さは約3,246メートルもの長さ。まさにホタルの公園といった施設です。広い敷地を小川に沿って歩くだけでも気持ち良い時間を過ごすことが出来ます。

【ホタル情報】
ホタルの種類:ゲンジボタル
出現期間:6月上旬~7月上旬
出現ピーク:6月15日頃(例年)

【アクセス】
ほたる童謡公園まで=車利用:中央道「伊北IC」より10分。「ほたる童謡公園駐車場」。電車利用:JR中央線「辰野駅」下車~徒歩15分。

● 辰野の信州辰野ほたる祭り
開催:例年6月中旬
会場:ほたる童謡公園(松尾峡)
住所:長野県上伊那郡辰野町大字平出(MAP
問い合わせ:上伊那郡辰野町 産業振興課 観光係。TEL 0266-41-1111(代表)
https://lnky.jp/RBmVyNm

〈周辺おすすめスポット〉
国の天然記念物“しだれくり”枝垂れた不思議でどこか可愛らしい樹形を見に行ってみては?キャンプ場やゴルフ場も併設。
● しだれくり森林公園 
住所: 長野県上伊那郡辰野町小野5983-1(MAP
問い合わせ:しだれ栗森林公園総合案内所。TEL0266-46-3774
https://shidarekuri.com/

*蛍の観賞マナー
蛍はとても繊細な生き物です。ここで鑑賞のマナーをご紹介。蛍は騒がしい音や強い光にもストレスを感じてしまいます。懐中電灯やカメラのフラッシュ、スマホ画面の光で蛍を直接照らさないようにしましょう。蛍の採集は厳禁!決して触ったり捕まえようとしたりせず、遠くからそーっと見守ってあげてください。 また自然豊かな場所にのみ発生する生き物です。環境を汚さないようにゴミは必ず持ち帰りましょう。現地のルールに従い、蛍が生息できる環境を保つことを心がけるようにしてください。

取材・文・写真:宮内 智也

<著者プロフィール>
宮内 智也 (Miyauchi Tomoya)
東京都出身。幼少期の夢は建築家。都内の大学で建築を学び、1度は大手ゼネコンに就職し、マンション建設に携わるもスクラップ&ビルドの開発に違和感を感じ退職。古民家や空き家、昔ながらの伝統的な木造建築に関わる仕事を求め2019年に移住。現在はフリーランスで古民家や空き家改修の設計や施工の手伝いをしている。

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