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新しいジブン発見旅ー櫻井麻美さんのニチコレ(日日是好日)
第9話「癒しの“もふもふ”を求めて 『八ヶ岳アルパカ牧場』」

私たちを癒してくれる、動物たち。中でも最高の“もふもふ”を誇る、愛すべきアルパカ達と、のんびり触れ合える牧場へ出かけよう。

更新日:2022/05/13

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動物たちがもたらす、癒し

物心ついたときから、動物と暮らしていた。犬、ハムスター、うさぎとも過ごした。学生時代、受験勉強の息抜きは当時飼っていた犬とソファに寝っ転がり、共にただボーっとすることだった。窓から入るお日さまの光に照らされたその滑らかな毛並みに触れながら、昼下がりを過ごしたことをよく覚えている。彼女に触れるのが好きだったし、彼女も私になでられるのが好きだった。温かいその感触は今でもはっきり思い出せる。
今はペットが飼えない家に住んでいるので、疲れたとき、癒されたい時には近くの牧場へ行き、ヤギと戯れる。人懐っこい彼らは人間を見るやいなや寄ってくる。そして相手がどんな人間なのかをしっかりと見定める。優しく体をなでると目をとろんとさせて気持ちよさそうな顔をし、話しかけると、じっと目を見て聞いてくれる(ような気がする)。そっけない素振りや乱暴な触り方をすれば、さっさと小屋の方へ去っていく。そんなシンプルな所作に、なんだか心が晴れやかになる。彼らと触れ合っていると、損得勘定が淘汰されていく。私にとってはこれが、大いなる癒しの一つだ。
そして忘れてはならないのが、もう一つ。動物が持つ癒しの力で、私たち人間からは絶対に得られないもの。それが、“もふもふ”だ。
私たちは本能的に柔らかいものを求める。ごつごつの場所で寝るより、ふかふかの布団で眠りたい。そう、柔らかいものに触れていると安心するのだ。だから動物たちの柔らかな毛並みは、私たちの本能に語りかける。抗えない、“もふもふ”への欲求。触りたい、彼らの背中に。
ヤギも愛すべき存在なのだが、彼らの毛並みは少しゴワゴワしている。たまにはもう少し柔らかな毛並みに触りたい。そんなわけで、極上の“もふもふ''に出会う旅に出かけることにした。

圧倒的“もふもふ” アルパカに囲まれて

様々なデザインカットのアルパカたち

こちらはお馬さんスタイル

くるくるヘアもおしゃれ

「北斗」の名前通り、星が際立つ

生まれた時から2年間分の毛、だいぶボリューミー

実際はこんなに細い体なのだ

ふれあい広場ではエサやりもできる

沢山の牧場がある長野県でも、『八ヶ岳アルパカ牧場』は、数多くのアルパカと触れ合える珍しい牧場だ。アルパカは本来臆病な性格で、人に触れられるのに慣れていないことも多い。だが、この牧場の子たちはみんな人懐っこく、名前を呼ぶと振り向いたり、寄ってきたりする。この場所で生まれ、人の手によって育てられた子が殆どなので、こんなにもフレンドリーなのだそう。お話を伺った牧場の樋口さんと一緒に歩いていると、アルパカたちが挨拶をしに次々に寄ってくる。一頭一頭の名前を呼びながら、優しくなでていく樋口さん。こんな風に人間から愛情たっぷりに育てられているから、アルパカたちも人間を信頼しているのだろう。
ふれあい広場では、柵の中に入り、近い距離でアルパカに触れることができる。大きい動物なので少し緊張しつつも、そっと近くに寄り、背中に触れてみる。…温かい。とにかく温かい。外側の表面に手を置くだけで、ストーブに当たっているような温かさがじんわり広がってくる。羊の毛ともまた違う、初めての体験。病みつきになりそうな手触りだ。
それもそのはず、本来アルパカは標高3,000~5,000mの高地に住む動物だ。毛が空気を含み、保温力が高い。その毛は原産地のペルーでも重宝され、高級品として扱われる。中でも生まれた時から持っている毛は特に貴重とされるそうだ。牧場では生後2年で初めて毛刈りをし、その後は毎年夏に入る前に刈ることになっているのだが、今回、幸運にも2才(生後2年)のアルパカと出会うことができた。まだ一度も毛刈りをしていない、生まれた時からの毛に触らせてもらった。
それは、今まで触れた動物の中で、一番ふわふわで、やわらかく、温かかった。貴重なものとされるのも、納得だ。毛の中を探っても、なかなか皮膚に触れることができない。それだけのボリュームがある。この美しい毛並みに、憧れすら感じる。私もこんな毛をまとってゴロゴロしてみたい。アルパカの“もふもふ”レベルは、かなり高い。
その横をさっと違うアルパカが通り過ぎて行った。頭だけに毛を残し、体の毛を刈ったスタイリッシュな容姿だ。毛を刈ると、あんなに細いらしい。半分以下の体積に見える。どうりで、どんなに毛の中に手を伸ばしても、体に届かないわけだ。涼しげなその姿も、凛としていて良い。牧場には様々なデザインカットをした仲間が沢山いるので、個性豊かでかわいらしい。
さて、この日一番の楽しみにしていた時間が近づいてきた。「アルパカとお散歩」だ。

のんびり歩こう 「アルパカとお散歩」

人生初体験の「アルパカとお散歩」

「リカちゃん」が道草を食べている間、“もふもふ”を堪能する

やっと進んでくれた 後からついて来る姿はなんともかわいい

お散歩の最後には記念撮影もしてくれる

スタンプラリーのイラストが素敵

老若男女、誰でも楽しめる「アルパカとお散歩」。人懐っこい彼らと共に牧場内をのんびりお散歩するなんて、なんて贅沢な時間の過ごし方なのだろう。今日お散歩させてもらうのは、「リカちゃん」。食いしん坊の彼女は、現在ダイエット中だそうで、おやつはお預け。でも、道に生えている草はローカロリーなので、自由に食べて良い。飼育員さんの説明を受け、さっそく出発。リカちゃんはいきなり地面の草を食べ始める。やっぱりお腹が空いているようだ。文字どおり、道草を“食いまくり”ながらの散歩である。熱心にもぐもぐしている彼女は、なかなか動かない。ここぞとばかりに、背中の“もふもふ”を愛でる。気持ちがいい。遠くから、鳥の声が聞こえる。のどかだ。アルパカたちを眺めていると、日々せわしなく過ごしている自分に気づく。気にしなくたっていいのだ、時間なんて。道草ばっかり食ったって、いいじゃないか。何をそんなに急いでいるのだ?肩の力が抜けていく。
リカちゃんの頭が上がった。道草に満足したようだ。少し歩く。トコトコとついて来る姿が、とてもかわいらしい。たまにピタッと歩みを止める。また歩き出す。そして道草を食う。そんなことを繰り返しながら、牧場内を一周する。15分間ほどだが、存分にアルパカと触れ合える大満足の時間だ。(フォトフォルダはリカちゃんでいっぱいになった)
この日は時間が合わなかったが、「アルパカダービー」も開催されている。いつもはのんびり過ごしているアルパカたちも、本気を出すと時速40キロほどで走るらしい。ただ、どこに向かうかは、気分次第。それも含めて、大人気のイベントだ。

牧場にあふれる アルパカ愛

アルパカ好きにはたまらない 「アルパカハウス」にはたくさんのグッズも

実際のアルパカの毛を使ってある人形も

ペルーの風を感じるタペストリー

3本足の「チャッピー」も園内を自由に歩く

3月に生まれたばかりの子アルパカにみんなメロメロ

とにかく距離が近い!

牧場を訪れて何よりも印象的だったのは、そこにいる人たちのアルパカ愛だ。スタッフの皆さん、そして来園する人たち、みんながアルパカを愛しているのが伝わってくる。
牧場には、生まれつき足が1本不自由な「チャッピー」がいる。出生当初は、歩くことはできないだろうと殺処分も勧められたそうだが、今は3本足で軽快に牧場を歩き回っている。様々な人の支援で、オリジナル車いすを作り、筋力を鍛えるために歩く訓練を続けてきた結果、今は車いすがなくても自由に過ごせるようになったそうだ。チャッピーに限らず、どのようにしたら彼らがのびのび過ごせるか、常にアルパカファーストで考えられている。
アルパカは、日本ではまだ事例も少なく、飼育もなかなか難しい。ペルーに研修に行ったり、獣医さんと相談したりしながら、どうしたら健やかに彼らが育つか、試行錯誤しているそうだ。スタッフの皆さんがアルパカの名前を呼ぶ様子は、自然と愛があふれている。その愛に、アルパカもきちんと答えているのが見て取れる。愛情たっぷりで育てられたアルパカたちは、人との距離も近い。その近さが、来園する人たちの心を掴んでいる。年間パスポートを利用する方も多いというのも、うなずける。実際に、訪れた時も、慣れ親しんだ様子で名前を呼ぶ来園者がちらほら見受けられた。私も文を書きながら、またアルパカたちと触れ合いたい気持ちがこみあげてきた。近かったら、毎週行きたいくらいだ。彼らの魅力は、簡単には味わいきれない。
そんな悶々とした気持ちを晴らすのにおあつらえ向きなのが、園内にある「アルパカハウス」。ショップには、沢山のアルパカグッズと、実際のアルパカの毛を使った商品が並んでいる。訪れた際には、ちょうどアルパカTシャツを試着していた先客がいた。かわいい。彼女たちは大量のグッズを購入して、満足した様子で店を後にした。私もアルパカの余韻を家でも楽しみたいと思い、アルパカの毛で出来た人形を、一つ持ち帰ることにした。その日の夜から、人形の前を通る度に、“もふもふ”を堪能している。

時間を気にせず アルパカと共に過ごす休日を

のんびり過ごすアルパカを見ているだけで心が癒される

牧場は、不思議な場所だ。時間の流れが違う。そこにいるだけで、ゆったりとした気持ちになれる。動物たちと触れ合うことができれば、なおさらだ。彼らの飾らない姿に、すっかり癒されてしまう。さらにそこに、“もふもふ”が加われば、もう、最強だ。
ちょっと気持ちが落ち込んだとき、疲れた時には、牧場へ足を運んで、アルパカたちと触れ合ってみてほしい。きっと彼らの温もりが、癒しをもたらしてくれるに違いない。時間を気にせずに、のんびりと。アルパカと共に過ごす休日を、満喫してみてはいかがだろうか。

☞八ヶ岳アルパカ牧場
〒399-0214 長野県諏訪郡富士見町落合13505-1 TEL:0266-75-2554
https://www.alpaca-farm.net
MAP

取材・撮影・文:櫻井麻美

<著者プロフィール>
櫻井麻美(Asami Sakurai)
ライター、ヨガ講師、たまにイラストレーター
世界一周したのちに日本各地の農家を渡り歩いた経験から、旅をするように人生を生きることをめざす。2019年に東京から長野に 移住。「あそび」と「しごと」をまぜ合わせながら、日々を過ご す。
https://www.instagram.com/tariru_yoga/

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