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新しいジブン発見旅ー櫻井麻美さんのニチコレ(日日是好日)
第5話「真冬の軽井沢で氷上のチェス カーリングを体験してみよう」

スキーやスノーボードとは一味違ったウィンタースポーツ。“氷上のチェス”、カーリングを体験する旅はいかが?

更新日:2021/12/22

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まだまだ知らないウィンタースポーツ発見

スキーやスノーボードをする人々で盛り上がる冬の長野。そんな盛り上がりに毎度ついていけない自分がいる。足に板をつけて山を滑るという行為に対して、楽しさよりも恐怖が先行してしまうからだ。スピードが出れば出るほど恐ろしい。転ぶ風景しか想像できない。そんな話を友人にすると、「慣れたら平気だよ。」と返される。長野育ちの友人たちは幼少期からの英才教育を受けているそうで、心からうらやましい。学生時代に一度だけ雪山に行ったくらいしか経験がない私は、そもそも立つことすらできないのである。雪に慣れ親しんだ人々と共に優雅に白銀の世界を滑りたいという憧れもありつつ、次の日はきっと全身筋肉痛で動けないだろうな、などと考え始めるとどうにも腰が重く、そうこうしているうちに毎年冬が終わってしまう。こんな調子でウィンタースポーツとは疎遠な私だが、やっぱり冬ならではのアクティビティも楽しみたいという気持ちが捨てきれない。(なんとも未練がましい。)そんな折、軽井沢でカーリングができるという情報を手に入れた。

カーリング。オリンピック競技で見たくらいの知識しかないが、氷上でじっくりとストーンに向き合うそれは、雪山を滑るのとは違う醍醐味を味わえそうである。スキー板のような大きな装備品がない分、気軽に参加できる。ルールは全く分からないが、なんだかおもしろそうだ。私にも楽しめるウィンタースポーツはこれかもしれない!というわくわく感と共にカーリング体験へと向かった。

いざ!『軽井沢アイスパーク』へ

 

『軽井沢アイスパーク』。暖かい場所からリンクを観戦できる贅沢なつくり。

外観も内観もスタイリッシュで解放的。

展示スペースでカーリングの歴史も学べる。

道具もどんどん進化しているようだ。

聖地たる所以、長野五輪の感動が胸に蘇る。

冬の軽井沢は、なんだか生き生きしている。この季節を待ちわびていたんだよ、とか、やっと俺たちの季節か、みたいな、街からそんな声が聞こえてくるようだ。夏には夏の良さが勿論あるが、やっぱり軽井沢が一番輝くのは冬だ。そんなまさに輝き真っ只中の軽井沢に、人生で初めて体験するカーリングをしにやって来た。内側と外側から心が沸き立つのを何とか抑えながら、『軽井沢アイスパーク』の扉を開ける。

早めに到着したので、まずは受付を済ませ、館内を散策。受付の時点で既に新しくキレイな館内だと感じたが、2階の「ふれあいホール」に上がるとその解放感に度肝を抜かれた。木を基調とした吹き抜けの高い天井と、窓から射す暖かい光が印象的なその空間からは、カーリングホールと屋外のスケートリンクを観戦できるようになっている。太陽がまぶしい。というか、かなり暖かい。ダウンを着ていると暑いくらいだ。ポカポカとひなたぼっこをしながら氷を眺められるなんて、いささか不思議であるが何とも贅沢だ。一角には長野五輪やカーリングに関する展示コーナーがあり、実際に使われた聖火のトーチや競技に関連したグッズも展示してある。ちょっとした博物館に来たようで楽しい。

ここはオリンピックにも出場するような名だたるチームも練習するような場所で、国内外で活躍する選手も利用する、ということを施設の方に教えてもらった。国際大会も開催されるような舞台でもあり、もはやウィンタースポーツの国立競技場と言っても過言ではないだろう。(ちなみに軽井沢風越公園では1998年長野五輪において、1924年に次ぎ2度目の公式競技としてカーリングが行われている。軽井沢は“カーリングの聖地”とも言われるそうだ。)そんなすごい所に素人が足を踏み入れてしまっていいのかという気持ちもありつつ、胸は高鳴る一方である。

そろそろ時間だ。他の参加者も到着したようだ。私も含め11名が集まり、初めてのカーリング体験が始まる。

 

氷上に飛ぶために まずは基礎練習

 

カーリング専用の靴、取扱いに注意しよう。

利き足と反対側の靴底はつるつる滑るような加工がされている。

ついにリンクへ。ここで様々なドラマが繰り広げられたと思うと感慨深い。

名だたる選手と同じ地面に立つ。靴底にカバーをしていれば普通に立てる。

安全に氷の上に行く前には、いくつかステップが用意されている。まずは、服装。暖かい動きやすい格好はもちろん、ニット帽と手袋は必須だ。防寒だけでなく、ケガを防ぐために着用する。全員の服装が確認出来た後、利き足ごとに靴を渡され、所定の位置まで決して床につけてはならないと教えられる。リンクや靴を汚したり傷をつけたりしないように、土足の床に靴底をつけてはならないそうだ。ゆめゆめ落とさぬよう緊張しながら靴を持ち、リンクの入り口で履き替える。ひとまず第一関門クリアだ。

扉を開けリンクサイドに進むと、先ほどまでの暖かさとは違い、ピリッと冷えた空気を頬に感じる。ここが、聖地。きっとさまざまなドラマが繰り広げられたであろうリンクを前に、想像の世界に行ってしまいそうになるが、インストラクターの田口さんの声に現実に引き戻される。まずは、みんなで準備体操。筋肉痛の第1位は内もも、第2位は肩だそうで、そのあたりを入念に動かす。(筋肉痛にならなそうなんて思っていた私は浅はかだったようだ。)カーリング専用の靴は、利き足が滑らない靴底、反対足がよく滑る靴底になっている。リンクへの第一歩を滑る靴底で踏み入れてしまえば、たちまちひっくり返る。左右をしっかり頭で理解しながら体を動かすことが大切だ。みんなでリンクサイドで左右をバラバラに動かすスキップなどをした後、氷上へ歩みを進める。

滑る加工がされた靴でリンクに足を踏み入れると、氷の上はやはり別世界だった。ひんやりした、つるつるの地面ではなかなか思い通りに体は動かせない。そして田口さんの言う通り、内ももをフル稼働する必要がある。でも、そんなもどかしさよりもやっと氷に立てたうれしさの方が上回る。歩く姿勢は転ばぬように左右に手を広げているので、ペンギンになった気分だ。転ぶ練習も入念に。ヘッドスライディングでリンクを滑ったり、うまく尻もちをつく練習をする。そんなペンギンの集団を横目に隣のリンクでは、一本足でスーッと優雅に滑り、リンク内を移動している男性が。ストーンを投げる姿も水面から飛び立つ鳥の様だ。なんと美しい。飛べない鳥が飛ぶ鳥に憧れる気持ちが少し分かる気がした。

 

カーリングの奥深さを知る ストーンを投げてみよう

 

ストーンはずしりとしているが、よく滑る。

うまくいかなくてもインストラクターの田口さんが励ましてくれる。

選手たちのストーンを投げるフォームはヨガのポーズそのものだ。

とにかく練習!段々と力加減が分かるように。

田口さんの“ゼロ・グラビティ”。スウィープ技術も奥が深い。

皆でスウィープ!一気に体温が上昇する。

ストーンが滑る秘密は氷の形状。よく見ると粒のような表面だ。

リンクのコンディションを保つためにはメンテナンスが欠かせない。

さて、カーリングといえばストーン。取っ手のついたストーンは1つ20キロ。一緒に滑りながら途中で手を離すのだが、このフォームは利き足によって前後が決まっている。滑る靴底の足は前に膝を大きく曲げ、後ろ足は後方で膝と足の甲をつく。体全体でうまくバランスをとり、滑りながらストーンを氷に放つのだが、このフォームをするには股関節の柔軟性と体幹がものを言う。(ちなみに、選手たちは膝をつかずに投げているらしい。まさにヨガのポーズである。)

1人1人順番にストーンを投げる練習していく。通常の半分の距離だが、円に狙いを定めても思い通りに届かない。(円の中心には軽井沢町の公式キャラクター、“ルイザちゃん”が鎮座している。なかなかお近づきになれない。)田口さんを筆頭に、参加者みんなで「ナイス」とか「惜しい」とか言い合いながら一緒に練習していると、なんだか部活みたいだ。それぞれ違うグループ同士だったが、少しずつ一体感が生まれてくる。体もじんわり暖かくなってきた。

ひとしきり投げた次は、「スウィープ」の練習だ。ストーンの行く先を一生懸命ブラシで擦る、あれである。擦る作業は、速く、なおかつ強い力が求められる。田口さんがお手本を見せてくれたが、ブラシにかなり体重をかけ、力を込める。体を斜めにしてブラシを持つ姿は、マイケル・ジャクソンの“ゼロ・グラビティ”さながらである。(絶妙なバランス!)この姿勢で選手は無呼吸状態でひたすら擦っているそうだ。実際にやってみると、一気に体温が上昇する。この辺りから、やる前に抱いていたカーリングの印象だいぶ変わってきた。優雅な鳥の洗練された動きは、やは水面下での努力の賜物なのである。

 

チームの熱量も上がる ミニゲーム

 

ルールの説明。真ん中の“ルイザちゃん”に一番近いストーンのチームが勝ちだ。

投げる瞬間は緊張の一瞬。

掛け声とともに皆で協力して勝利を目指す!楽しい。

一通りの基本を教えてもらった後は、ミニゲームも体験できる。2チームに分かれ、それぞれ8投して勝敗を競う。一番最後に円の中心に近いストーンがあるチームが勝ち、というシンプルなルールだが、ただ近くに投げればいいというものではない。ストーンをはじき出すこともできるため、戦略が必要なのだ。どのタイミングで、どうやってストーンを置くか、チームでコミュニケーションをとりながら協力することが求められる。

ストーンを投げる人以外のメンバーは、ストーンの行く先に立ち、ブラシで氷をこすり狙った場所にストーンを近づける。ストーンの勢いによってこするか否かを判断するのだが、その時の掛け声がある。「イエス!」は“擦れ”、「ウォー!」は“擦るな”の意で、掛け声とともにチーム一丸となってストーンに向き合うのである。なぜだろう、掛け声があるだけで闘志が燃えてくる。

チームメイトとじゃんけんで順番を決め、私が一投目となった。先攻なので、私からゲームがスタートする。ストーンの取っ手を握り、滑る靴底の左足を前に出す。右足で踏み切ると、するっと前に体が滑り出す。強すぎず、弱すぎず、ふんわり置きに行くようにストーンを手放す。仲間が前で待っている。「イエス!」と言いながら、ストーンの行く先をみんなで擦っている。円の中にストーンが止まった。「ナイス!」と私に向かって声をかけるチームメイト達。久しぶりに味わう、このスポーツならではの感覚。じんわりと胸の奥が熱くなる。

自分の投げる番が終わった後は、スウィープ隊として氷を擦る。皆で息を合わせてごしごしするのは難しい。隣の人とぶつかりそうになりがらあたふたと氷を磨いていると、あっという間に最後の一投だ。緊張の一瞬。みな回を重ねるごとに狙いを定めるのも上手になっている。結果は、後攻の相手チームのストーンが一番円の中心に近い。最初に一番円の中心に近かった私の投げたストーンは、既にはじかれている。なるほど、カーリングは奥が深い。試合には負けてしまったものの、カーリングの楽しさを知った高揚感があふれ出す。みんなで和気あいあいと相手の健闘を称える声掛けをし合いながら、大盛り上がりの体験会は終了した。

 

老若男女が気軽に楽しめるスポーツ カーリング

 

ここにしかいないと噂の“カーリングルイザちゃん”が、受付で来る人を迎え入れる。

終始和やかにガイドしてくださった田口さん。定番ポーズのカーリン「グー」。

洗練されたカーリングをするには、頭脳・技術・繊細さ・筋力・柔軟性など様々なものが求められる。その一方で、初心者でも十分に試合を楽しむこともできる。カーリングとは、それぞれのペースで楽しむことができるスポーツなのだ。終始わかりやすく、丁寧に解説しながらも、場を盛り上げてくれた田口さんは、それぞれのインストラクションの最後に「簡単でしょ?」と笑いかける。内心、簡単じゃないような気がしなくもないが、確かに(形は選手には程遠いが)できるのだ。実は田口さんは、こちらで働くメンバーの中でカーリング未経験だった唯一の存在。そんな彼だからこそ、競技としてだけではない、“楽しさ”を大切にしているそうだ。田口さんの言う「簡単」はきっと、誰でも気軽に楽しめる、というニュアンスなのだろう。そう思ったら、「ああ、確かにそうだ。」と納得してしまった。「また、やりたい。」私もそう思ったし、他の参加者からも同じように声が上がっていた。

奥深くも、入り口は誰にでも広く開かれたカーリング。軽井沢で気軽に出来るアクティビティの一つとして、楽しんでみてはいかがだろうか。きっとその奥深さに、夢中になるに違いない。

 

取材・撮影・文:櫻井麻美

 

 

☞詳しくは『軽井沢アイスパーク』

 

 

<著者プロフィール>
櫻井麻美(Asami Sakurai)
ライター、ヨガ講師、たまにイラストレーター
世界一周したのちに日本各地の農家を渡り歩いた経験から、旅をするように人生を生きることをめざす。2019年に東京から長野に 移住。「あそび」と「しごと」をまぜ合わせながら、日々を過ご す。
https://www.instagram.com/tariru_yoga/

 

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