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“究極のアウトドア”体験
『ハンティングスクール長野』で
人と野生動物の共生を学ぶ

狩猟免許取得者が増加!? 今、“究極のアウトドア体験”として注目されているハンティングの世界。長野県では、地産地消、ハンター育成による森の保全、関係人口の創出など、あらゆる課題解決の糸口を探す一歩として、さまざまな取り組みが進められています。今回は長野県鳥獣対策・ジビエ振興室職員でラッパーの宮嶋拓郎さんにインタビューを行い、長野県のハンティングの未来をリサーチしました。

更新日:2021/12/22

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top photo:©ハンティングスクール長野

 

*本記事は2021年12月1日までに長野県鳥獣対策・ジビエ振興室が長野県内の各団体などへ聞き取りした内容をもとに構成しています。質問やお問い合わせは長野県林務部森林づくり推進課鳥獣対策・ジビエ振興室(choju@pref.nagano.lg.jp)にお伺いいただけます。

身ひとつで自然に挑む、究極のアウトドア

免許を取得したハンターだけが着ることができるハンティングベスト ©ハンティングスクール長野

「ハンティング」と聞いてどんなイメージが湧くでしょうか? 実は今、男女問わず、都内の狩猟免許試験に予約者が殺到。近年は定員を上回る人気となっているそうです。
このハンター人口の増加は、長野県の森林保全につながるとして、長野県では長野県鳥獣対策・ジビエ振興室が中心となり、ハンター養成講座、民間企業と連携した食用商品の開発やツアープラン企画など、新たな施策を行っています。
これらの取り組みの背景は、農作物被害や鳥獣の生息域拡大、耕作放棄地の増加、ハンター人口の高齢化などの課題解決を目指そうとするものです。たとえば、シカによる枝葉の食害や剥離は、森が朽ちる原因のひとつともいわれ、人の介在が必要な面もあります(*1)。
大切なのは、ハンティングという営みから野生鳥獣に対する深い理解と感謝の念を持ち、人とそれら動物と森のより良いバランスを探求すること。さらには、国内食料自給率を上げる意味でも、地産地消に目を向ける意識の変化として、見つめ直されているのです。

(*1)参照:「一般社団法人 日本ジビエ振興協会」

第1回目のハンター養成講座。多くの参加者が集まりました ©ハンティングスクール長野

官民連携で商品開発をしたジビエ食肉の缶詰。若者をターゲットにしたスタイリッシュなデザインでイメージを刷新 ©ハンティングスクール長野

『ハンティングスクール長野』がめざす
関係人口創出と地産地消

次世代のハンター確保のために2020年から始まった『ハンティングスクール長野』という企画があります。この企画を担う長野県鳥獣対策・ジビエ振興室の長野県庁職員・宮嶋拓郎さんに狩猟の現状とスクールの概要をお聞きしました。

長野県知事公認のラップ集団「WRN」のメンバーとしても活動する「地域に飛び出す公務員」の宮嶋さん。活動の様子はTwitterなどで精力的に発信中 ©︎WRN

「長野県は首都圏からアクセスがよく、猟場となる自然が多いこともあり、例年、長野県内で狩猟をするための狩猟登録を行う都内在住者は150人以上います。猟友会員数も約4000人と多く、ハンティング未経験者向けのOJT研修(先輩ハンターがいろはを指導する研修)も市町村と連携して行うなど、後進育成に力を入れています。
また、全国に先駆けて食肉加工する上でのガイドラインも作成。地産地消による地域産業の活性化にも着目しています」と話す宮嶋さん。

筆者もハンター経験がありますが、始めたばかりの頃は、地域団体や経験者との関係づくりが難しかったり、解体する場所の確保に苦慮することもしばしば。このような公式のサポートを受けて、ハンターを目指せるのは、良識あるハンターの育成につながると考えられます。

2020年に開催されたハンター講座には、県内外からの参加者が、エアガンを使い猟銃の取り扱いについて受講します ©ハンティングスクール長野

狩猟についての座学もあり、実践だけでなく、ハンティングに関する課題や将来像なども学習 ©ハンティングスクール長野

「鳥獣を捕獲して得るお金だけでは生活が難しく、ハンター人口は減少の一途を辿っています。今後はOJT研修の教育事業従事者として関わっていただく機会を設け、知識や経験を後継者に還元していくような仕組みを画策しています。
ハンティングの諸事万端を熟知するベテランが、野生鳥獣をジビエとして利活用し、収益を得ていく。そして、後進を育てる。このように人材育成のサイクルを回することで、地産地消を持続可能な状況に持っていけたら」と宮嶋さんは展望を語りました。

人材育成と消費の仕組みを築くことで、狩猟者の確保や、森と人のよりよい関係を持続可能なものにしていく。長野県ならではの新たな循環形成が模索されています。

全国初の官民共同ジビエツアーを始動

ハンティングスクールでは座学での講義も展開。良識あるハンター育成をめざしています ©ハンティングスクール長野

ハンターを増やす活動として、2021年10月から宮嶋さんたち長野県鳥獣対策・ジビエ振興室が企画したハンティングスクールがあります。『狩猟スタートアップツアー in 白馬 TSUGAIKE』です。都心に住む新規ハンター層からの需要を見込み、県内の旅行会社とタイアップ。関係人口の創出やハンター育成の未来を考えて立案されたこの企画は、参加者の対象を県外まで広げた官民連携のジビエツアーとしては、全国初となる公式ツアープランです。

ソフトエアガンを使った射撃体験 ©ハンティングスクール長野

里山に入り、獣道に罠の設置方法を学ぶ ©ハンティングスクール長野

ツアーの夜には、丁寧に調理したジビエも提供されました ©ハンティングスクール長野

3日間に及ぶツアーには、岐阜県の里山保全組織〈猪鹿庁〉で、ハンティングの魅力伝達や若手ハンター育成の狩猟講座を実施している安田大介さんが講師として参加。
1日目は座学によるハンティングの心得から免許取得の流れ、鹿、鳥類の解体、実食を体験。2日目はわな猟、銃猟の解説と実地訓練。実際に罠を設置したり、ソフトエアガンによる実技訓練。3日目は実際に山に入り、動物の痕跡をたどるトラッキング(追跡)訓練など、フィールドを舞台とした実践ツアーが行われました。

呼吸を整え、的を狙う。初心者も参加するため、エアガンを使った本番さながらの訓練で学びます ©ハンティングスクール長野

農林業被害やハンター人口減少などの課題解決を図る目的で企画したハンティングツアー。終了後の電話インタビューで、宮嶋さんは今後の展望について振り返りました。

「令和3年の農林水産省調べによると、野生鳥獣による全国の農作物被害は令和2年が約161億円と高い水準となっており、長野の自然を守るためにもハンター確保が急務になっています。
今まではハンティングに関心がある長野県在住者層だけに目を向けていましたが、新型感染症の影響で地方への関心が高まったことも影響して、県外の人からの需要も高まっています。今回も県外からの参加者が多く、長野県ならではの体験型アクティビティとして、全国のハンター志望者の需要を読み、ハンティングによるさまざまな課題解決につながる企画を実直に模索していきます。
まだまだ間口が狭い業界と思われているので、野生動物との共存、森林保全や殺生への誠実な理解を持ったうえで錬成する“究極のアウトドア体験”として、きちんとした育成プロセスを用意し、良識あるハンター増加につなげていきたいです。
そして、長野県の関係人口創出や、日本全体における食料自給率の低さに対する新たな糸口を見出すきっかけもつくれたら」

真剣な顔で講座に望む受講生 ©ハンティングスクール長野

さらに、観光振興にも目を向けていると宮嶋さんは話します。

「今回のツアーを例に、今後もハンター育成につながる企画を継続して行い、地盤を固めていきたいですね。そしていずれはアウトドア・アクティビティのひとつとして全国に広げ、全国的なハンター人口増加とともに、閑散期で観光客の少ない場所をスクール会場として使うことで、観光業にも貢献していきたいです」

おわりに

地域の課題を解決するさまざまな糸口を模索し、ハンター育成をはじめ、関係人口創出や食問題、観光振興などへの展開も考える宮嶋さん。ジビエというひとつの切り口を起点に、長野県の魅力を集約した方策を企画していくそうです。広い視野で挑戦する県庁職員・ラッパー宮嶋さんをはじめ、新たな施策を企画する長野県の取り組みに参加して、長野県の“究極のアウトドア”から長野県の未開の魅力を発見してみませんか。

取材協力
長野県林務部森林づくり推進課鳥獣対策・ジビエ振興室

メール:choju@pref.nagano.lg.jp
電話番号:026-235-7273

インスタグラム:@hunting_school_nagano

ライタープロフィール
諌山 未来雄

プロフィール:
1991年福岡県生まれ。三つ子の長男。大学在学中にサムライ姿で世界一周、社会人でニュージーランドワーキングホリデーを経験。大阪の広告代理店を退社後、長野県に移住。「地域おこし協力隊」に着任し猟師となる。趣味は登山やキャンプなどアウトドア全般。ブッシュクラフトアドバイザー、象使い免許持ち。

インスタアカウント:@mikio_isayama

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