日本初!乗り継ぎ『信越トレインワーケーション』で仕事旅。

秋の信越を豪華観光列車で横断!?五感が喜ぶ想像の旅『信越トレインワーケーション』を乗り物大好きGoNAGANO編集部員が体験してきました。
今回乗車したのは、普段は滅多に乗れない豪華な“観光列車”。
ゴージャスな列車内・極上のサービスに圧倒され興奮冷めやらぬ状況。果たして仕事遂行は可能なのか...。生まれて初めての“観光列車ワーケーション”異次元旅を、レポートします!

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濃赤の車体に魅了される『ろくもん』
ノスタルジックでドリーミーな、旅の始まり

 

小雨舞う10月の初旬、わたしは人生初の“観光列車”の切符を手にした。しかも、日本初の試み“県と県をまたいで2本の観光列車を乗り継ぎながら、列車内外で仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を楽しむ”という『信越トレインワーケーション』。文脈は理解できても、これから自分が体験するシーンが想像できない。故に緊張&興奮するわたしがいる。

長野県ならではの土地の歴史・文化に触れ、食を満喫する観光列車=しなの鉄道『ろくもん』。今回は戦国武将の名門・真田家ゆかりの地でもある長野県上田市(上田駅)を出発。途中新潟県・妙高高原駅でもう一つのリゾート列車・えちごトキめき鉄道『雪月花(せつげっか)』に乗り換え、日本海を臨む新潟県・糸魚川駅を目指し、そこから折り返し最終到着地の妙高高原駅まで約230Km、7時間(乗換時間含む)の列車旅。 このプロジェクトは、長野県千曲市の《株式会社ふろしきや》が催行したもの。観光列車『ろくもん』を利用したトレインワーケーションの試みは今回が3回目でその他、“地元deワーケーション”などさまざまなワーケーション企画を手掛けている。

緊張と興奮のあまり、集合の上田市上田駅温泉口に1時間も早く到着したわたしは、改札口を行ったり来たりと、登校中の長野大学生も首をかしげる不審者ぶりで、集合時間の8時になるのを待っていた。

時計の針が8時に近づき、受付をしようと続々と集まってきた参加者の列に並んでいると、笑顔が素敵な30代くらいの女性に声をかけられた。彼女は《株式会社ふろしきや》が催行するワーケーションの大ファンで、リピーターだという。

“リピーター!?ワーケーションにリピーターがつくって、一体どういうことだろう。”

そんな問いを胸に、『ろくもん』の到着を待った。

 

集合時間、上田駅温泉口にて。今回の参加者は15名ほど。

 

午前8時半、待ちに待った『ろくもん』がホームに現れた! 寒々とした鈍色の景色に映える濃赤(こきあか)の車体が厳かに到着。客室乗務員さんが吹くホラガイの音がホームに響きわたる。わくわく感が半端ない。 車両のドアが開き、期待に胸を踊らせ車内へと乗り込むと、そこは想像をはるかに超えたラグジュアリーで、どこかノスタルジーを感じさせる空間が広がっていた。

 

鉛色の空とのコントラストが醸し出す存在感。濃赤(こきあか)の『ろくもん』が歩くようにホームへ入ってきた。

出発時には、しなの鉄道の皆さんが手を振ってお見送り。(走行中の車内座席より撮影)

『ろくもん』車内。ラグジュアリーなカフェ仕様の二号車。

しなの鉄道員の帽子を被って記念撮影を楽しむわたし(非公開)

サービスカウンター。料理の盛り付けの仕上げなどはこちらで。

1号車のサービスカウンターに『ろくもん』マークがデザインされている。

おみやげコーナーには、ここでしか買えないアイテムがたくさん。

 

『ろくもん』は3両編成。1両目がファミリーやグループ向けの車両で、複数名で座れる対面席やソファ席が設置された、大人も子どもも楽しめる空間となっている。2両目は、まさにラグジュアリーカフェのような仕様。併設のサービスカウンターでは、シェフが料理の盛り付けなどを行う。乗客は座席にて長野のお酒を味わうことができるのも、魅力の一つ。(いちおう勤務中ということでお話をうかがうだけ)3両目は、ちょっとした商談にも最適な個室ブース。障子で仕切られたモダンな和室のよう。落ち着きが感じられ、とてもくつろげる雰囲気だ。

 

3両目は、障子で区切られたプライベートな個室空間。

長野県産の木材をふんだんに使い、レトロモダンな雰囲気の座席。座り心地はとっても快適。

長野市豊野地区のりんご畑。この日はあいにくの曇天で北信五岳・志賀高原の山々は車窓から望めなかった。

落ち着いた雰囲気の個室なら、パソコンを開いて“社外秘”ミッション進行も可能!?

 

少し落ち着いて仕事をしようと思い、3両目の個室席を選択し着席すると......軽食が運ばれてきた。今回の『信越トレインワーケーション』のためだけに用意したという、上田市のガレット&クレープ専門店《クレープリー アン》の、東御市の農家さんから直接仕入れた大粒シャインマスカットをふんだんに使った“ミルクレープ”。滑らかで重厚なクリームが、旬のシャインマスカット然とした爽やかな甘さを引き立て、もっちりとしてボリューム感のある食感の生地がクセになりそう。『ろくもん』の車窓の景色を眺めながらいただく“特別な”ミルクレープ。贅沢な時の流れ......。

 

 

『ろくもん』限定の軽食は、この車中でしか食べられない“特別な”ミルクレープ。

 

途中下車も列車旅の醍醐味。
『えちごトキめきリゾート雪月花』には、ときめきとわくわく感がいっぱい。

 

『ろくもん』では、贅沢にひとりの時間を満喫し、列車はいよいよ乗り換えの妙高高原駅へと入った。ここで、えちごトキめき鉄道『えちごトキめきリゾート雪月花』(※以下雪月花)に乗り換える。 日本初の、“県と県をまたいで2本の観光列車を乗り継ぎながら、列車内外で仕事と休暇を楽しむ”『信越トレインワーケーション』今回のプロジェクトは、2種類の観光列車を乗り継げるという所が最大のポイント。つまり、1番の見せ場であるのだから、わたしも、他の参加者たちもテンションはMAXとなり、自然と会話は弾み、ホームは大賑わい。

かくして、みんなの期待を一身に背負った『雪月花』がホームに到着した。

 

日本の原風景に調和する“銀朱色”の車体があでやかな輝きを放つ『雪月花』。

「明るい!」思わず声が出た、ラウンジ仕様の1号車。

2号車の一角にある、さくらラウンジ。安田瓦を敷き詰めたゴージャスな空間。

2号車はまさにラグジュアリーなレストランのよう。

トキめき鉄道妙高高原駅係員の皆さんが笑顔でお見送り。

贅沢すぎるエンターテイメント車両、展望ハイデッキ席。

展望ハイデッキから見える前方は、“乗り鉄”にとってもたまらないだろう。

 

妙高高原駅で駅係員の皆さんに見送られ、列車は糸魚川駅(新潟県)を目指す。『雪月花』は2両編成。1号車はラウンジ形式の座席配置で、木目が美しい越後杉と豊かな実りの黄金色がモチーフ。天井まで大きくとった窓からの眺望は素晴らしい。2号車はレストランのような大きなテーブルとゆったりした座席が特徴。4人掛けのゆったりした椅子でくつろげる、ラグジュアリーな展望ハイデッキ席からは、運転士の頭越しに前面のダイナミックな展望を独占でき、まるで空中に浮いてるような感覚を堪能できる。目の前の線路が丸見えなので、鉄道好きにも、たまらないだろう。

 

直江津駅。えちごトキめき鉄道の社員皆さんによる心温まるお出迎えに車内は大盛り上がり。

『雪月花』乗車の記念撮影も行われた。(真ん中が筆者)

ご当地駅弁を買い求める参加者も。

 

山から海へ
景色・歴史・食を全身で味わう列車旅

 

今回の『信越トレインワーケーション』で『雪月花』が走る妙高高原駅(新潟県)から糸魚川駅(新潟県)の区間は、山から海へと抜け日本海沿岸を通るルートで、トンネルも多い長い。谷浜駅(新潟県)から有間川駅(新潟県)区間にある長浜トンネル(ながはま・トンネル:全長1,158m)を抜けると、車窓から日本海・オーシャンビューが臨めるとの前情報をいただき、その瞬間を待っていた。荒天の中、たまたまこのオーシャンビューのポイントでは雨が止みお日さまが顔を出してくれたので、まさに絶好のロケーション。秋の日本海を眺めながら、いよいよ本日のご馳走をいただくこととした。

 

長浜トンネルを抜けた有間川駅付近の徐行ポイントでは、日本海が真近に!

2つ星シェフ飯塚隆太氏の監修によるフレンチの三段重。新潟の食材がふんだんに使われている。

 

『雪月花』での昼食は、東京六本木にある《Restaurant Ryuzu》監修の、フレンチ重箱3段弁当。
地元の旬の食材をふんだんに活かした、ここでしか味わえない逸品だ。カブやインゲン豆といった新鮮な野菜や、日本海で獲れた、真鯛やズワイガニ、海老といった高級食材の魚介類をはじめ、くびき牛、新潟地鶏、妻有(つまり)ポークを使い、妙高市の伝統調味料かんずり(唐辛子を発酵させた辛味調味料)からも地域の豊かな食文化を感じさせられる。見た目も美しく、一つ一つの品に込められたストーリーを想像しながら味わう楽しさを堪能した。

 

新鮮な野菜を丁寧に巻いた“カラフル野菜巻”は、味はもちろん、歯応えに感謝です。

浜を眺めながらの、オーシャンビュー・ランチ。

 

本日のご馳走をゆっくりと味わっていると、『雪月花』は今度は長いトンネルの中へ。頸城トンネル(くびき・トンネル:全長11,353m)の中にある、日本で5つしかない隧道駅(ずいどう・えき)と呼ばれる駅の一つ筒石駅(つついし・えき)にて、途中下車。地下鉄とも全く雰囲気が違う、初めての隧道駅に圧倒され、その長い歴史と人々の暮らしに想いを馳せると、自然と胸が熱くなる。

※頸城トンネル(くびき・トンネル)私鉄・第三セクター鉄道の山岳鉄道トンネルとしては日本一の長さを誇る。全長11,353m、筒石駅の地点は地下40m。気温は夏は22℃前後 冬は15℃前後と、夏涼しく冬温かい 。

 

トンネルの中の、筒石駅。昔ながらの造りで、ホームは人がすれ違う程度の広さしかない。

トンネル駅の中には、どこか神秘的な空気が流れる。

扉ひとつ開けると広い空間に。ここで乗客は電車を待つそうだ。

地上へと続く300段近い長い階段も、迫力満点だ。

 

筒石駅で未経験の感傷に浸ったわたしは列車に戻り、折り返し地点の糸魚川駅(新潟県)まで、残りわずかとなった行きの乗車時間を、楽しむことにした。

 

五感が喜ぶ旅で、人と心の距離が近づく
「わたし」にとってのトレインワーケーションとは

 

列車はいよいよ折り返しの新潟県糸魚川駅(いといがわ・えき)に到着。しばしの休憩を駅のアルプス口に隣接する糸魚川ジオステーション ジオパルで過ごす。館内は大きくジオパーク観光インフォメーションセンター、 キハ52待合室、ジオラマ鉄道模型ステーションの3つのコーナーに分かれていて、入場料は無料。

 

本日の折り返し地点、糸魚川駅の改札。

糸魚川観光協会の皆さんから、こちらでのワーケーションの取り組みのご紹介をいただく。

ジオパーク見学。大きなヒスイの原石にロマンを感じる。

施設のコンセプトを活かしたデザインの滑り台。子どもが喜びそう。

キハ52の実車や寝台特急トワイライトエクスプレスの再現車両展示も。

 

『雪月花』は糸魚川駅から折り返し、今回の『信越トレインワーケーション』終着駅、妙高高原駅を目指す。残りわずかとなった時間を名残惜しそうに過ごす乗客に、『信越トレインワーケーション』についての感想を聞いてみた。

東京都から参加した男性は、「今回は富山で仕事があり、そこまでの移動手段として利用した。日本初の観光列車を乗り換えて目的地を目指す旅というフレーズに惹かれて申し込んだ。『ろくもん』では、個室を利用し、快適に仕事ができた。車窓からみる景色の移ろいは魅力だ。『雪月花』で景色を眺めながら頂く食事はおいしかった」。

旅の始まりに出会った、ワーケションのリピーターだという女性は、「『ろくもん』も『雪月花』も、素晴らしい時間を過ごせた。今回、自分は人とのつながりを作る場として活用した。ここで出会った人たちとのつながりで自分の世界が広がったり、また別のワーケーションで会えるかもと思うと、楽しみ」。

この女性と一緒のグループにいた男性は、「実は以前のワーケーションに参加したことでつながった人たちの、熱量と垣根のないオープンマインドな姿勢が居心地が良く、今回の参加につながった」。という。さらに話を聞いてみると、なんとワーケーション参加がきっかけで、“地域に貢献してみたい”という気持ちに火が付き、《株式会社ふろしきや》が催行する企画のサポートもするようになったという。

 

折り返しの車内では、参加者たちの和やかな談笑が続いた。

『雪月花』で楽しむ最後のおやつ。洋梨と和梨、コーヒーとキャラメルのムース

最後の途中下車、二本木駅はスイッチバックのある駅だと、鉄道に詳しい参加者が教えてくれた。

二本木駅舎の”青”と雪月花の”銀朱色”。日本人の心に響くデザイン性だ。

本日の終点、妙高高原駅に到着。

 

“ワーケーションという旅”がきっかけで、人と人がつながり、新たなコミュニティが生まれていく。

確かにわたしも、今回の『信越トレインワーケーション』では、『ろくもん』『雪月花』といった観光列車の旅、特別な空間を楽しみ、そのわくわく感や感想を参加者たちと共有しながら盛り上がり、人と人との心の距離が近づく瞬間を発見し体感した。そして会話の中から多くの気づきをもらい、つながりを得ることができた。
冒頭の「リピーター!?ワーケーションにリピーターがつくって、一体どういうことだろう。」というわたしの問いの答えが、そこにあった。

実は今回のワーケーションでわたしが参加した区間は、『信越トレインワーケーション』の観光列車の乗車まで。終点の妙高高原駅で下車後、他の参加者は開湯300年を超える赤倉温泉での宿泊、翌日は千曲市戸倉上山田温泉で源泉100%のお湯比べや、宿坊体験、瞑想体験など心身をリフレッシュするコンテンツを体験するプログラムが組まれている。きっと、行く場所、その時々で新たな気づき、つながりが生まれることだろう。

わたしの、人生初めてのワーケーションとなった『信越トレインワーケーション』は、熱量高い参加者たちと共に、まさに五感全てをフル動員して体験する、非日常体験・新しい旅だった。

この素晴らしい観光列車での体験で興奮したわたしがパソコンを開いたのは、『ろくもん』での最初の1時間だけであった事は、言うまでもない。

 

※『信越トレインワーケーション』は2021年10月13日に開催されたイベントです。

 

撮影・文 GoNAGANO編集部 (しみず りょうこ)

 

 

『ろくもん』とは
しなの鉄道株式会社が軽井沢駅ー長野駅間をしなの鉄道線・信越本線経由で運行している観光列車。上田市真田町ゆかりの武将「真田一族」の家紋である「六文銭」から命名。
https://www.shinanorailway.co.jp/rokumon/

 

『雪月花』とは
正式名称:『えちごトキめきリゾート雪月花』。えちごトキめき鉄道株式会社が妙高高原駅ー糸魚川駅間(妙高はねうまライン・日本海ひすいライン)で運行している観光列車。
https://www.echigo-tokimeki.co.jp/setsugekka/index.html

 

《クレープリー アン》
長野県上田市のガレット&クレープ専門店
https://creperiean.jimdofree.com/

 

《Restaurant Ryuzu》
東京都港区六本木ミシュランガイド東京20202つ星のフレンチレストラン。
http://restaurant-ryuzu.com/

 

《株式会社ふろしきや》
長野県千曲市を起点に、地元deワーケーション、ワーケーション・ウェルカムデイズなどを手掛ける。
https://furoshiki-ya.co.jp/workation_lab/

 

列車マニア必見!JR東日本が開始「撮り鉄コミュニティ」とは?
https://jrestartup.co.jp/news/2021/11/53887/

 

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