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『GREEN WORK HAKUBA』はプロローグ。福島洋次郎氏のロードマップにしるされたものとは_❸

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10月末、八方尾根スキー場と裾野に広がる村内を一望できる高台に立つ福島氏。その眼差しの先にはどのような景色が浮かんでいるのだろうか。

「大好きな場所があるんですが、そこでお話してもいいですか?」と福島氏が言った。白馬駅から車で約10分。白馬大橋を渡った左手に位置するどんぐり地区。急峻な地形を活かした眺望豊かな別荘地だ。幾つかのカーブを曲がり細い坂道を上がる。最後の別荘家屋を過ぎた先に小さな展望台があった。正面には超広角レンズで切り取られたような白馬村のパノラマ。右手には白馬連峰の門前のような八方尾根スキー場が開く。村の南端に薄い雲を割って一閃の光芒が降りた。徐々にその光がこちらに近づいてくる。

おかげさまで『GREEN WORK HAKUBA』には若い世代の皆さんから多くのお問い合わせをいただきました。高評価もいただき、本当に感謝しています。同時に「責任」みたいなものを感じました。そして「観光」って?「リゾート」って? と自問自答するチャンスを与えてくれました。

白馬村は山岳リゾートとして100年以上の歴史があります。過去、登山・スキー・テニス、修学旅行・ゼミ合宿などの隆盛、そして冬季長野五輪開催にも恵まれ、観光地、とりわけスキーリゾートとしてとても高い認知を獲得しました。ところがご存知のとおり、昨今ではもはや「ブーム」というカルチャーは起こらず、雪不足も重なり、ウインターリゾートという限定的な存在にはかなりの危惧感を持っています。また、次世代を担うミレニアル世代・Z世代たちの白馬への認知度はかなり低いことも懸念しています。実はそれらの課題点にひとすじの光が見えたんです。

今、僕にできることって? それは子どもたちに自信を持って引き継げる環境や社会・経済基盤を整えることなんだと確信したんです。観光地としてのアドバンテージに依存し過ぎたり、流行の再来を待ち望んでいるだけでは駄目なんだと。その意味でも『GREEN WORK HAKUBA 』はチャレンジなのです。

白馬村にとって安定的な経済基盤をつくることは、四季を通じて村が繁盛することだと思っています。これは観光目的のお客さまに限定するものではありません。例えば今回の「サーキュラーエコノミー」をテーマとしたワーケーション開催のように、観光と仕事を融合したコンテンツを立ち上げ、そこに交流を創出することも目的の一つになります。直近ではないかもしれませんが、国内外の企業やそこで働く人たちが白馬村をワーケーション基地として認知して持続する滞在につながる可能性もあります。そして新しいアイディアが生まれ、起業の声が上がるかもしれません。仕事は雇用を創出します。そんな社会性が循環するステージになって欲しいと願っています。

これからの時代、大都市とは異なり地方は「生産型」から「循環型」へ移行すると考えています。大量にものを作り、流通させ、大量に消費するシステムに次世代を生きる人たちは反応しないと思われます。大量消費が環境に悪循環をもたらすことをZ世代の人たちは知っています。村内で頑張っている若手と話をすると「白馬って、いろんなことができそうじゃないですか。ミニマムだけどプロフェッショナルなこと。それをリリースしていくんです。発信したモノ・コトがカタチを変えてまた戻ってくる。観光業っていうよりグローバルなサービス業ですよね」と目を輝かせます。まさにそうなんです。白馬村のような地域ではそんな若者が住み「場所」の付加価値を生むことが可能なんです。「物」も「アイディア」も循環する。

先日、アメリカで暮らす友人が「最近、デザインを“DESIGN”と大文字表記する企業が多くなった」と教えてくれました。これは観念的なものを表すものらしく、“design”は視覚的な美しさなどを設計・構築することに対し“DESIGN”はビジネスとしての価値全てを生み出す記号論的な象徴らしいです。この話を聞いたとき、僕も同じようなことを考えました。白馬の雄大な自然の美しさの恩恵を素材のまま活用するだけではなく、ビジネスとしてデザインしなければいけないんだと。一般的な観光というコンテンツではなく……例えば白馬村役場には住民・健康福祉・税務・総務・建設・水道・子育て支援、観光課などがあります。観光課だけではなく他の行政部門も観光にコミットする。また観光課も他の専門統括と協業する。縦か横、というより円周。これも循環型ですよね。観光とは次世代のためのライフアプローチなんです。

先日、『GREEN WORK HAKUBA』の第2回開催が決定しました。次回は来年の7月の予定でしたが、初開催の参加者、各方面からの要望も数多くいただき、この冬後半、今度は雪上の『GREEN WORK HAKUBA』となります。でも『GREEN』って言っちゃっていいんでしょうか?(笑)
 

 

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