JR 乗務員の休日時刻表  線路の先の旅を求めてー後編

撮影/古瀬美穂 
取材・文/編集部 
モデル/ミチ、チエ、カオル

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いつもとは違う、心地良い疲れを感じながらホテルへ向かう。
岩茸山(白馬岩岳)を下りて八方地区に入るころ、東の空には夕暮れが近づいていた。
「お腹すいたね」とミチが振り返り、「うん、どんなごちそうなのかな」とチエが返事をする。
5メートル先を歩くカオルが早く早くと手招きした。

Day_1
>PM 04:30
『リゾートライフが非日常だったこと』

時間をかけ選んだホテル=『STARRY RESIDENCE SUITE』のエントランス。3人が寄り添いセキュリティコードを入力する姿に今夜編まれる物語の最初の1行が浮かんでいます。「食事、空間、バスタブのかたち、そしてベッドやリネン」。想像と計画から体感への扉を開けて。

 

チエ
部屋に入って、すぐに気がついた。ラグジュアリーな香りのお出迎え。室内を探検してテラスのドアを開けた瞬間、八方尾根スキー場のゲレンデから夏草の香りが。空気のおいしい味を感じたよ。

カオル
ダイニング&キッチンにはスワロフスキーのライトがきらきらして、ふうっ、と現実から離れた気分。そのままベッドルームへ直行。きょう1日の疲れを癒してくれるふかふかの世界に沈殿。

ミチ
窓いっぱいに広がるゲレンデに青緑色の雪が積もっているような景色だった。わあっ、て何も履かずにテラスに出ると、ちょっとだけ冷たい風が横切った。シャワールームを見たとき、これって日本?いや、たぶん海外だよね、って錯覚しちゃった。

Day_1
PM 05:00
『思い出の刻印とシェフズキッチン』

約束の時間ちょうどにチャイムが合図します。ドアを開けると、そこにはきっちりとプレスしたコックシャツをまとった女性シェフ。そしてもう一人の来訪者が。工具を持ったエプロンの女性。今夜の2大イベントの開始です。自分たちの部屋で自分たちだけのディナーまでの空間。ホテルオーナーの計らいで開催されるレザークラフト教室。プライベートという独占の時間。3人が感じた“リゾートライフ”とは。

 

チエ
国産の革素材がいい香りで手触りも柔らかくて。ちゃんと形になるか、と心配したけれど、思ったよりも格好良く完成。手作りのお土産は一生ものだからね。

カオル
わたしはキーホルダーがお気に入り。ネーミングの金箔を押すとき、とても緊張した。1回失敗しちゃった。でも結果はとてもいいものができて嬉しかった。みんなの個性というか性格が出て面白いなぁ。ところでチエさん、そのプレゼントはどなたに?

ミチ
それはもちろん、ひみつ、だよね?…自分で色も選ぶことができて、愛着たっぷりの“作品”の出来上がり。旅の思い出になるから、すごく良い経験ができた。みんなでわいわいしながらクラフトしたのが、とても楽しかった。

 

すると、キッチンから「お待たせしました」とシェフからのお知らせが。

 

ミチ
うっとりするくらいきれいなプレートがいっぱい。エディブルフラワー(食べる花)を使った「花ごはん」風花サラダに感激。コーンのドレッシングが絶妙で、酒粕を食べて育った白馬豚のハムが上品きわまりなく、っていうリポートです。

カオル
低温調理されたランプ・ステーキ。ほっぺたが落ちてしまいそうなほどおいしかった。マイタケとバルサミコソースがお肉とベストマッチ。食後のブルーベリーアイスは、まるで摘みたて、フレッシュな味が広がった。

チエ
シェフやサーバーさんから説明を聞きながらいただく料理は格別。とりわけ、サンショウがきいたタイの昆布締めと魚介のパスタがおいしかった。今まで食べたパスタの中で一番!内陸県の長野でもこんなに感動する魚介を堪能できたことに感謝です。

Day_2
AM 08:30
『ポタリングは“おいしい”の散歩道』

薄い灰色のブランケットに包まれた山々は寝坊しそうな気配です。2日目の計画について「早朝足湯ミーティング」を終了した3人。きょうはe-Bikeの実践練習を兼ねて村内の散策。そして最大のミッションはグルメ探索。歴史街道、花の道、川べりの林道。トゥルーストーリーズの行方は…。

Day_2
AM 09:30
『パンに込められた愛情酵母』

 

チエ
アニメに登場しそうなお店の外観と、『白馬の酵母パン koubo-nikki』と書かれた看板。全方位的においしそうなパンがぎゅっと並んだショーケースに心がダンス。酵母が呼吸するビーカーを見せてもらって、こんなにきれいな白馬の植物からパンがつくられるなんて、びっくりドキドキ。

ミチ
きょうの朝食と家族へのお土産にショーケースの両端いっぱい、食べきれないほどのパンを購入。もう、大満足。コーヒーと一緒に何を食べようか、もうすでに悩んでいます。

カオル
お店の外に漂う焼きたてパンの匂い。すでにおいしいに決まっている。わたしは大好きなパクチーとブルーチーズ。開店前、到着が早すぎたわたしたちにと、オーナーのお母さんが淹れてくださったコーヒーも忘れることができない。

Day_2
AM 10:15
『森のカフェのつくり方』

 

チエ
見過ごしてしまいそうなほど森と調和したお店。だからかなぁ、小さな空間いっぱいに満ちたコーヒーの香り。朝から幸せをもらえるなんて。

カオル
カップに顔を近づけて、深呼吸みたいに香りを感じてみる。丁寧なハンドドリップの証し、香りもおいしい。

ミチ
別荘が点在する森のサイクリング。緩やかだけど長い坂道もe-Bikeだから平地かと思うくらい楽だった。ふと小さな明かりを見たら、おしゃれなお店を発見。地元の人たちの笑い声。看板犬・柴犬のマル。『SATORU COFFEE』、すてきなカフェのお手本みたい。

 

Day_2
AM 11:30
『清流のおもてなし』

 

ミチ
大出公園のつり橋を渡ると、民話に出てきそうな築100年のお店『古民家カフェ かっぱ亭』が見えてきた。縁側はおばあちゃんの家のような、ほっ、とする空間だった。「焦がし葱醤油の信州サーモン丼」は新鮮だってすぐわかるほど脂がのっていて、あっという間に完食。

カオル
わたしは「信州鶏とトマトのカレー」。温泉卵を崩しながらいただくと、とてもまろやか。甘みと辛みの共演。夏はやっぱり、カレーだよね。

チエ
お店の周辺には姫川や名前はわからないけれど小さな川が流れていて、歩いているだけで癒された。だからメニューを見たとき即決で「姫川かっぱ亭食」をチョイス。川魚の焼き物、お刺身、山菜が懐石料理みたいにワンプレートにアレンジされて。川魚のふわふわした食感にびっくり。次回はメニューで見つけた「とろとろ信州吟醸豚の角煮丼」と心に決めました。

Day_2
PM 01:00
『温泉とたこ焼きの相関関係』

 

チエ
もうお腹いっぱい、と思っていたら。『みみずくの湯』を出たとたん、お向かいにあるたこ焼き屋さんの引力に負けました。つくっているところを覗いたら、とても丁寧に優しい手つきでタコを包み込んでいた。もう、我慢できなくて。優しいお出汁の味と一緒に飲んだ「蜂梅ジュース」も優しい味がして。温泉もたこ焼きもジュースも、全部が優しかった。

ミチ
晴れ間に顔を覗かせた白馬の山を観ながら、山のようにネギが盛られたたこ焼きをぱくり。少しだけのつもりが、二口三口と。サイクリングで疲れた体に温泉とたこ焼きは必然。

カオル
たこ焼きのメニューがすごい豊富。メニューの名前を聞いているだけで、どれもこれもおいしそうで、混迷状態。みんなもお気に入りの蜂梅ジュースは、お母さんが家でつくってくれる梅ジュースのような、懐かしい味がした。

Day_2
PM 02:10
『旅の終わりが旅の始まりだから』

鉄道運転士と車掌、そして観光開発業務にも携わるミチ、チエ、カオル。日ごろお客様へ安全と安心を提供している3人がこの旅を計画し自ら体感した30時間。人々の生活や夢をのせて運ぶ線路のその先に、どんなレールを敷き希望輝く何色の未来を運行するのでしょう。お疲れさまでした。ミチ、チエ、カオル……。

 

ミチ
大自然に癒されながら、おいしいご飯と楽しいアクティビティ。忙しい毎日の中で心からリラックスできる最高な時間だった。わたしも長野のすばらしさと、こんなわくわくをみなさんにお伝えできるような活動をし続けたいと思っています。

チエ
またあしたから仕事を頑張って、お休みの日には、おいしいもの・うつくしい自然・元気や情報をもらえる地元の人たちに会いにいこう。そしてわたし自身も元気や情報の発信者になりたいです。

カオル
この旅を通じて、こんなに近いところに、こんなにすてきな場所があったんだなぁと思った。これからも長野県内のいろんな場所へ足を運んで、魅力的な街の情報を発信していきたいと考えています。

 

 

Day_2 PM 03:16 『あずさ46号 白馬駅発車』



※在来線特急車両は空調装置で空気の循環を行っています。車内の空気は、おおむね6分~8分程度で入れ替わっています。

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