JR 乗務員の休日時刻表  線路の先の旅を求めてー前編

撮影/古瀬美穂 
取材・文/編集部 
モデル/ミチ、チエ、カオル

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「きょうは景色がゆったりしている」とチエがつぶやくと、カオルは「ゆったり景色が見れる、でしょ」と問いただすようにミチに同意を求めた。
「今日の仁科三湖は、どんな色をしているんだろう」とミチがほほ笑んだ。
「あずさ5号」12号車。車窓には若い緑色をした安曇野の田園が輝いていた。

JR大糸線を乗務しているミチとチエとカオル。3人は訪日窓口業務と松本地区エリアの観光開発業務を推進する「信州Welcomeプロジェクト」のメンバー。7月下旬の休日。3人は白馬村を目指した。
日常の車窓とは異なる、ときめきの時間を確かめに
 

Day_1
>AM 10:40
『休日のホームと駅弁』

休日の午前、松本駅のホームに「あずさ5号」が到着。3人はいつもと違う「音」に気がつきます。到着する車両の静かなブレーキの音。出発前に閉まるドアのエアー音。旅の始まりを知らせる「音」。そして楽しみにしていた「駅弁」と笑顔を携えて。

 

ミチ
わたしの「安曇野ちらし」、彩がとてもきれい。駅弁って、開けた瞬間から旅行の幕開けって感じでわくわくだよね。ねぇ、見て、野菜いっぱいでヘルシーでしょう。

チエ
さてさて、わたしは伝説の駅弁「とりめし」…。このお弁当屋さん、明治40年創業で「とりめし」は昭和27年から販売しているんだって。だから伝説。先輩から教えてもらったんだ。野沢菜の油炒めと鶏そぼろがベストマッチ。信州のおいしさの凝縮。

カオル
駅弁、久しぶり。さあ、テッパンの「山賊焼」。冷めてもおいしい「山賊焼」ですよ。付け合わせのわさび漬け、長芋天ぷら、あんずゼリー…長野県名産です。レモンとお塩でいただく絶妙な味。朝からニンニクパワー注入。

Day_1
AM 11:20
『いつもと違う車窓』

信濃大町駅を出た「あずさ5号」は仁科三湖へと近づきます。左の窓に夏の衣替えを済ませた山々が手を振りました。木崎湖・中綱湖・青木湖、それぞれの湖面に映る山容と青い空。光と影の間にパドルを漕ぐ人の姿。約7分間の“予告編”。

 

チエ
普段は乗務中だから見ているところが違うかも。きょうは湖水のきれいさや、カヌーを楽しむ人の笑顔も鮮明に見えた気がする。

カオル
わたしのお薦めは信濃大町までの田園風景かな。あのわぁっと開けた開放感が好き。乗務しているときとは違う景色が楽しめた。不思議だよね。別世界みたい。いつかわたしもカヤック、やってみたいな。

ミチ
やっぱり田園風景と仁科三湖が最高。いつも見ていてきれいって思うけれど、きょうはお客さまになった気分だから、リラックスして堪能できた。

Day_1
AM 11:41
『旅の玄関、大自然へのエントランス』

白馬駅までの車窓に映る特別な景色は、これから開幕する“本編”の予告編でした。白馬駅を出てほんの少しだけ目線を上げると、真正面に白銀の渓谷を残した北アルプスから「ようこそ」という声が届きました。そして導かれるように『白馬岩岳マウンテンリゾート』のゴンドラベースへ。

 

カオル
わぁ、すごい。緑の絨毯の中に街があるみたい。色がとってもきれいだよ。晴れてよかったね。山頂に着いたらどんな景色が見えるんだろう。ねぇ、何だろう、このわくわく感。

ミチ
わたし、ちょっと緊張しているかも。マウンテンバイクは乗ったことがあるけど、e-Bikeは生まれて初めて。大丈夫かな。

チエ
ちゃんと乗り方を教えてくれるんだって。初心者大歓迎。わたしだって初めてなんだから。あっ、もう少しで着くよ。

Day_1
PM 00:30
『初めてのe-Bikeと偶然』

ゴンドラのドアが開き山頂駅を飛び出した瞬間。新しい夏の光と香りが透き通って行きました。はやる心を抑えバイクのレンタル。ところがきのうまでの雨の影響から3人には難しいコース状況もあるとの報告。電動アシスト付きマウンテンバイク=e-Bikeの乗り方を受講する顔には、水色の水彩絵の具に藍色を混ぜたときのような喜びと緊張の色が浮かびます。

 

ミチ
大きくて強そうなバイクを見て少し怖かった。スタッフのお兄さんがとても丁寧に教えてくれたから、思い切って出発。でも乗り出しが速くてびっくり。やっぱりこわごわ。平坦な場所を選んで賢明だったかも。でもちょっと悔しいなぁ。

チエ
10年ぶりの自転車。で、e-Bikeなんて。それもマウンテン・コース。かなりびくびく。とても親切に教えてもらったから、行ける、って思ったけれど、なかなか手ごわかったです。わたしも悔しい。もっと練習しなくっちゃね。

カオル
それではみなさん。今回の悔しい気持ちを胸に秘め記念撮影をして新たな決意を…。

 

消沈気味の3人に「バギーの牽引で山間コースを走ってみませんか」とスタッフから呼び掛けが。雲に隠れていた白馬岳の後ろから突然浮かび上がる青空と同じ笑顔が戻ってきました。

 

チエ
スリリングな興奮も魅力いっぱいだけど、ガイドさんに山の名前を教えてもらって、リラックスして雄大な山々を眺める時間は格別。ふと横を見ると小さな川が流れていて、冬とは違う発見があった。

ミチ
手が届きそうな白馬の壮大な景色を、まるで乗馬を楽しんでいるように心地良い速度で移動しながら堪能できる。なんて言うんだろう、この穏やかな興奮。大人の夏休み、と命名しちゃいます。

カオル
バギークルーズは小さな子どもを連れたファミリーがすごく楽しめるアトラクションだと考えていると、近くのコースにあるキッカー(ジャンプ台)をマウンテンバイクのライダーさんが飛んできた。ものすごい迫力で、格好良かった。

Day_1
PM 01:30
『絶景×空腹の幸福な関係』

『白馬岩岳マウンテンリゾート』の中心から西へ続く遊歩道を進むとブナやミズナラの森に。すぅっと、冷涼なそよ風が背中を押し、北アルプスを描いた巨大な作品が展示されるギャラリーへと3人をいざないました。『HAKUBA MOUNTAIN HARBOR』。きょう最後のステージ。

 

チエ
おいしい空気、うつくしい山々。そこに立っているだけで、とても幸せな気持ちになった。ずっとその場所に、と思っていたら、『THE CITY BAKERY』から香ばしいバターの誘惑が…。急にお腹の合図が聞こえて。もう、我慢できない。だから2人を誘って。「白馬豚のクロワッサンサンド」を選んだの。ジューシーなお肉と野菜をさくさくのパン生地が包み込んで。これは、幸福?“口福”?

カオル
「クロワッサンサンド・ツナ」。セサミの香ばしいさと、塩味とバターの甘さのマリアージュ。あのさくさく感は絶対的。セットでオーダーしたレモネードソーダ。真夏にいただくレモネードは最高。ビタミンが体の隅々まで染みました。

ミチ
どの季節に来ても晴れた日は絶景間違いなし。思い切り深呼吸して、お約束の「クロワッサン・タマゴ」と、気持ちの良い汗をかいた後のレモネード。わたしも同じく、染みました笑。

 

Day_1
PM 3:00
『“魔女たち”の記念撮影』

山の太陽が傾き眼下の白馬村を透明なベールが覆い始め、3人の後ろ姿にも心地良い疲れをまとった薄いベールがそよいでいます。“地上”に降りるゴンドラへ向かうとき、カオルが南側の斜面へ走り出しました。

 

カオル
みんな来て。ほうきがあるよ。ウッドデッキとほうき。これは魔女になって飛びなさいってことよね。はいはい、みんな跨って。今夜の宿までひとっ飛び!

 

後編に続く……。

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