感動を未来につなぐ人形劇のまち・飯田の楽しみ方

国内はもとより、世界各地から300劇団以上が集まる日本最大の人形劇の祭典「いいだ人形劇フェスタ」。文化が根付いた背景と歴史を紐解きながら、人形劇のまち・飯田のさまざまな楽しみ方をご紹介します。

※掲載している写真は全て過去開催時のものです。

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まちじゅうに笑顔があふれる飯田の夏、人形劇の夏

国内外で活躍するプロの劇団から、アマチュア・学生劇団、さらには現代人形劇から伝統的な人形芝居まで、およそ300劇団、480ステージもの人形劇が一堂に会する「いいだ人形劇フェスタ」。毎年、8月上旬に飯田市で開催され、日本のみならず世界中からファンが集まり、延べ5万人もの人たちが観劇するというから驚きます。
人形劇には「有料観劇」と無料の「ワッペン公演」とがあります。市内各所で販売されている参加証の「ワッペン」(3歳未満不要、当日販売あり)を購入して身につけ提示すれば、400近くあるワッペン公演のなかから好きな公演をいくつでもみることができるのです。
公演のほか、歩行者天国になった中央通りを世界中の人形たちが練り歩く「わいわいパレード」や、体験型の人形劇講座「わくわくワークショップ」、0・1・2歳の小さな子どもたちのための「初めて出会う人形劇」など、人形劇にまつわるさまざまなイベントも開催。特産品や食べもの、スイーツなどの販売ブース、フォトスポット、人形劇の路上公演などもあり、まちじゅうが賑わいます。
期間中は、市内20地区の公民館や集会所、神社やお寺、保育園や学校など、ふだんの生活の場も劇場になります。それを支えているのは中学生から大人まで、2000人を超える市民ボランティアスタッフ。市内のどこでも公演が行われ、市民が一体となってそれを支える。それがいいだ人形劇フェスタの大きな特徴なのです。

中心市街地が歩行者天国となり、人形劇の路上公演のほか屋台やゲームなどで訪れる人を迎えます

300年前から受け継がれる人形劇の伝統

いいだ人形劇フェスタがこれほどまで地域に受け入れられ、根付いてきた背景には、古くから地域の人々によって継承されてきた芸能活動と、外から伝来したさまざまな芸能を受容し、独自の文化へと発展させ継承してきた土壌とがあります。お練りまつりの大名行列や東野大獅子など屋台獅子、農村歌舞伎もそのひとつ。なかでもおよそ300年前に上方から伝えられた「人形浄瑠璃」は、農閑期の娯楽として伊那谷中に広がり、かつては20以上の人形座が各地区にあったといいます。
人形座は、昭和のはじめには黒田(飯田市上郷)、今田(飯田市龍江)、早稲田(阿南町)、古田(箕輪町)の四座を残すだけになりましたが、飯田市では「黒田人形」と「今田人形」が1975年に国選択無形民俗文化財の指定を受け、保存会によって伝承されています。
今田人形は、毎年10月の大宮八幡宮神社秋季祭典で奉納公演するほか、いいだ人形フェスタでも公演しています。黒田人形は毎年4月、下黒田諏訪神社の春祭りで奉納公演。1840年に創建され、日本最古・最大級の舞台として国の重要有形民俗文化財に指定された「黒田人形舞台」と合わせて、貴重な姿をいまに伝えています。 

黒田人形は元禄年間(1688~1703)に正命庵の僧侶正覚が教えたのがはじまりで、
その後各地の人形遣いから指導を仰いだといわれています

人形劇の魅力に触れる人形館&美術館

飯田市内には、ふだんから人形劇のまちの文化に触れることができる施設があります。ひとつは「竹田扇之助記念国際糸繰り人形館」。糸繰り人形で世界的にも活躍した竹田人形座の功績を記念して1998年に開館しました。最後の座長をつとめた竹田扇之助氏は飯田市のお隣・喬木村の出身で、帰郷を機に人形やコレクションを〝人形劇のまち〟飯田市に寄贈。その繊細な美しさは、いまも色褪せることなくみる人を魅了します。
もうひとつは2007年に開館した「川本喜八郎人形美術館」です。NHK人形劇『三国志』『平家物語』などで多くのファンを有した川本喜八郎氏は、1990年の「人形劇カーニバル飯田」(現いいだ人形劇フェスタ)ではじめて飯田市を訪れた際、その歴史や、いまも人形に情熱を傾ける人々の言葉に感銘を受け、この地こそ「人形たちに一番ふさわしい場所だ」とおよそ200体の人形を市へ寄贈しました。川本氏が魂を吹き込んだ人形は生命力にあふれ、いまにも動き出しそうな躍動感と高い芸術性を備えています。
人形劇とそこにかける情熱が実を結び、さまざまな方面へと広がり続ける輪。飯田市はいまも〝人形劇のまち〟としてさらなる発展を続けています。

川本喜八郎人形美術館に寄贈されたNHK人形劇『三国志』の人形たち

いいだ人形劇フェスタ
公式サイト

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