集落を清め、五穀豊穣を祈る火祭りと道祖神祭り

人と人、人と自然との豊かな関係をいまに伝える地域の伝統行事。
五穀豊穣などを祈り、ときに激しく、ときにやさしく人々とともにあり続けてきた
小さな集落の火祭りと道祖神祭りをご紹介します。

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巨大な松明が圧巻の「奈良沢大天狗」
火の粉を浴びて五穀豊穣を願う

「奈良沢大天狗(奈良沢神社例大祭)」は、飯山市奈良沢で毎年9月中旬の土・日曜日に行われる秋祭りです。
集落各所で薙刀舞、獅子舞、小天狗の舞、大天狗の舞を行いながら奈良沢神社へと集います。とくに奈良沢神社境内で行われる「大天狗の舞」では、長さ2m余りの太い松明を豪快に振り回す場面が圧巻で、熱気に包まれた境内には、この世とは思えない幽玄な雰囲気が漂います。集まった人々も五穀豊穣を祈るとともに、壮大な舞いに大きな喚声と拍手を送ります。
小学生から若者、そして壮年の男衆と、地域ぐるみで祭りを盛り上げている様子に、この土地で暮らす人々のたくましさや誇りも感じられることでしょう。

開催場所:奈良沢神社
開催日:毎年9月中旬の土・日曜日

巨大な松明を振りかざし、火の粉を飛び散らせて邪気を祓う「大天狗の舞」。
そこで舞った火の粉にあたると良いことがあると言われています
(著作権・写真提供 一般社団法人信州いいやま観光局)

夜の闇に切り子灯篭が映える
「春日本郷地区道祖神祭り」

県東部の佐久市春日本郷地区で古くから続く道祖神祭り。子どもたちの健やかな成長や五穀豊穣などを願って執り行われています。
現在では毎年1月3日に開催されており、昼間は3m余もある竿の御幣をもって家々の座敷に上がり、振り回しながら「風邪の神は舞い出すように 福の神は舞い込むように」と叫んだあとに、獅子舞を奉納します。夜は6地区それぞれの御輿に、地区で生まれた子どもたちの名前を記したものなど、無数の提灯が飾られます。それぞれの神輿の正面を飾るのは、干支の図柄を切り抜いた「切り子灯篭」。御輿を飾る無数の提灯が夜の闇をやさしく照らし、幻想的な風景をつくりだしながら各集落をめぐります。佐久市の無形民俗文化財にも指定されています。

開催日:1月3日
会場:佐久市春日本郷地区

子どもたちの健やかな成長を願って夜道を照らす神輿の提灯。この土地で生まれた子どもたちの名が記されています

注連縄を活用した巨大な神面
「芦ノ尻道祖神祭り」

北アルプスの山並みが一望できる長野市大岡芦ノ尻地区。この地区にはとりわけ印象的な道祖神が佇んでいます。
この道祖神は古来より無病息災と豊作の願いを込めて、1月7日七草の日に各家の松飾りを持ち寄り、道祖神の石碑を飾りつけたものです。飾りつけは昼過ぎからはじまり、2時間ほどで新しい神面ができあがります。一度見たら忘れられないその表情からは、地域の人々が代々守り伝えてきた、この土地への誇りがうかがえます。
1年間風雪に耐え抜いた神面は、その日の夜にどんど焼きの炎となって夜空に舞い上がっていきます。

開催日:1月7日
会場:長野市大岡集落

悪霊や疫病から集落を守る道祖神。道祖神祭りは1月7日だけですが、威厳あふれる守護神にはいつ訪れても会うことができます

雪と炎が幻想的な「大網火祭り」
生命力あふれる舞も見どころ

長野県北部の小谷村大網地区で、日本の百名山のひとつである雨飾山の神様に五穀豊穣をお祈りする祭りです。厳しい冬が終わり、春を迎える節目に、神仏習合の独特な神事によって、1年がよりよい年であることを願います。
真っ白な雪景色を真っ赤なかがり火が映し出す幻想的な雰囲気のなか、神々の使いである鬼がどんど焼きに火をつけます。天高く燃え盛る火の塔を中心にして、鬼に扮した蓑にふんどし姿の若者たちと巫女が祈りの舞いを捧げます。鬼たちの雄叫びと勇壮な太鼓の音が山間に響き渡る、生命力あふれるお祭りです。
真冬の野外での見学になりますので、暖かい服装でおでかけください。

日時:毎年2月第2土曜日
開催場所:大網地区 阿弥陀ヶ原会場

(著作権・写真提供 小谷村観光連盟)

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