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犬も人も幸せに過ごせる理想の地。ウェルネス・リゾート軽井沢 Vol.1『軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクトの10年と、愛犬との絆を深める唯一無二の場所』

ドッグフレンドリーな町のモデルケースとして、全国から注目を集める軽井沢。その立役者である「軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクト」のこれまでの歩みを振り返るとともに、愛犬と軽井沢でしか体験できないさまざまなスポットを訪ね、犬と人の双方にとって幸せなリゾート地、軽井沢の魅力に迫る。

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軽井沢の自然や文化がもたらした、健やかな犬との暮らし

雄大な浅間山をはじめとする山岳に抱かれ、標高約1,000メートルの地に広がる軽井沢。煌めく新緑や紅葉の木々、清らかな川や滝など、豊かな自然に恵まれており、冷涼な気候から、夏は避暑地として愛され、多くの別荘が建ち並ぶ。

そんな軽井沢を歩いていると出会うのが、かわいらしい愛犬たち。早朝の森を散歩していたり、カフェテラスで寛いでいたりと、美しい自然の中でのびのびと過ごす犬たちの姿があちこちで見受けられる。

軽井沢に犬連れが多い背景には、軽井沢の別荘文化がある。都会の喧騒を離れ、広い庭や森に囲まれた暮らしの中で、犬を家族として迎え入れる別荘住民が多かったそう。
また、かつて先人に“屋根のない病院”と称され、近年、その涼しい空気や標高による気圧の変化が脳の活性化や精神安定などに効果があると科学的に証明されるほど、ウェルネスな土地である軽井沢は、犬にとっても同様で、アレルギーが改善したり、体調が良くなったりすることがあるのだと言う。

そんな犬にも人にとっても健康的な軽井沢で、よりみんなが幸せに気持ちよく過ごせるようにと、さまざまな取り組みを実施してきたのが「軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクト」だ。活動の成果もあり、軽井沢はドッグフレンドリーな町として、多くの犬連れ観光客で賑わうようになっている。今年で設立10周年という節目を迎えるにあたり、これまでの歩みや今後の展望を伺った。

軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクトが進める、誰もが幸せに暮らせる町づくり

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インタビューに応じてくれた「軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクト」の、左からブレイデン友恵さん、和貝たかねさん、西山紀子さん。今回参加できなかった大工原さんを含め、プロジェクト立ち上げ当初から女性4名が中心となり活動している

「人と犬が健康で楽しく幸せに暮らせる町・軽井沢」という理念を掲げ、軽井沢観光協会会長の呼びかけでスタートし、2016年から活動を始めた「軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクト」。

“ドッグツーリズムの推進”とは、単に犬連れ観光客を増やすということではなく、「私たちは犬や飼い主がマナーやしつけをしっかり守り、犬を連れている方も、そうでない方も、受け入れ施設も、軽井沢に集うすべての人々が気持ちよく過ごせるような、そんな笑顔あふれる町にしたいと考えています」と、西山さん。

犬を連れて過ごすにあたり、マナーやしつけは大前提。ホスピタリティの高い滞在型リゾートを標榜する軽井沢において、犬の受け入れ側と利用者、それぞれのマナーやモラルの啓発を行うなど、相互の理解を深めることに努めている。

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その取り組みの一つが、愛犬と一緒に訪れることができるスポットの地図などを掲載した冊子「軽井沢 MAP with DOG」の発行だ。犬同伴歓迎の店でも、テラスのみ可なのか、抱きかかえやカートなら店内も入れるのか、ドッグランの有無など、オリジナルのピクトグラムで分かりやすく識別できるようになっている。

「このマップがあることで、愛犬と訪れる場所が選択しやすくなるだけでなく、受け入れ側が提供するサービスと、利用者が求めるサービスと、認識のずれも無くなります。また、犬を連れていない方も、その表示を見て入店の判断ができる」と話すのは、和貝さん。
愛犬がどのようにその場で過ごせるのかが事前に分かれば、未然のトラブル防止にも繋がる。また、冊子にはカフェでのマナーや排泄のことなどもしっかりと記載されており、自然とマナーに意識が向くようになっている。

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「お利口なわんちゃんがいれば、みんな笑顔になる」と話す西山さん

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幼い頃に飼っていた犬に支えられて成長できたと、犬への感謝を語る和貝さん

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ブレイデンさんと愛犬。軽井沢での幸福な暮らしがその表情から溢れている

ほかにも軽井沢町民・在勤者向けに犬のしつけ方教室、事業者やお客様への研修会(今年は事業者向け災害時のペット同行避難研修)、グッドマナーだった家族へお店から抽選付きカードを渡す「グッドマナーキャンペーン」など、マナーアップへ向けたさまざまな取り組みを実施。また、メディアを活用した情報発信、他自治体の視察の受け入れや犬に関する相談の対応など、その活動は多岐にわたる。

「軽井沢がドッグフレンドリーで、きちんとマナーも意識した町だというイメージが徐々に浸透してきていると思います。これからもマナーの良いわんちゃんが集い、犬連れの方が憧れて訪れるような町になればいいですね」
犬も人も心地よく過ごせるようにと、実践してきた地道で着実な活動が実を結び、軽井沢らしいドッグツーリズムの形が確立してきている。

軽井沢ドッグツーリズム憲章の制定と、これからの展望

これまでの活動の一つの成果として、10周年を迎えた2025年の11月1日(犬の日)、軽井沢オリジナルのドッグツーリズムのルールや考え方を明文化した「軽井沢ドッグツーリズム憲章」を制定。全部で5箇条ある憲章の内容を記したパネルやアルミ板を、今後観光協会やドッグランなどの人目につく場所に掲げる予定だ。ドッグツーリズムの先進地域として、持続可能な犬との共生を未来へ繋げ、全国のモデルケースとして発信していく。

軽井沢ドッグツーリズム憲章
~豊かな自然の中で、人と犬が共生する未来へ~

すべての人の軽井沢で過ごす時が実り多いものとなるよう、私たちは「ペット共生社会」を目的とした以下の憲章を掲げます。

■軽井沢の豊かな自然と文化を尊重しましょう
・美しい自然環境を守り、動植物に配慮しましょう。
・野生動物を驚かせないよう、愛犬の行動をしっかり管理しましょう。

■すべての人に対して配慮と理解を大切にしましょう
・鳴き声や排泄物などで周囲に迷惑をかけないよう最大限配慮しましょう。
・犬が苦手な人もいることを忘れず、距離感とマナーを意識しましょう。

■各施設や公共スペースのルールとマナーを守りましょう
・歴史的建造物・公園・遊歩道・ドッグラン等では、各施設のルールを守りましょう。
・排泄物は必ず持ち帰り、適切に処理しましょう。
・犬同伴OK の店舗・施設では、事前確認とルール遵守を忘れずに。

■愛犬の安全と健康を守りましょう
・常にリードをつけ、犬から目を離さないようにしましょう。
・緊急時に備え、連絡先・ワクチン証明・健康管理を忘れずに。
・災害時の同行避難に備えた準備もしておきましょう。

■愛犬が快適に過ごせるよう配慮しましょう
・暑さ・寒さ・体調変化に気を配り、犬が快適に過ごせるようにしましょう。
・人間の好みだけでなく犬の気持ちにも配慮して行き先を選びましょう。
・外出先でストレスを感じないよう、普段から適切にしつけましょう。

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ブレイデンさんの愛犬、ラブラドール・レトリバーのジジとピーちゃん

さらにこの先の10年について、思い描く理想像を聞いてみた。
「犬を別扱いせず、犬がいることが当たり前な世界を軽井沢につくりたい」(西山さん)。「犬種で断られることがあるので、しつけができていればどんな犬種でもカフェなどを利用できるようにしたい」(ブレイデンさん)。

犬はこどもや親とは異なる、ある意味家族を超えた、無償の愛を注いでくれる大切な存在。何の制限や不自由なく、人と同じように過ごしたい——すでにヨーロッパなどの先進国では、しつけがしっかりできていれば、公共施設やホテルなど、犬連れで行けるところがとても多い。彼女たちの情熱や行動力があれば、そんな軽井沢の未来もそう遠くはないはずだ。

軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクト
https://www.karuizawa-withdog.com/

軽井沢で楽しむ愛犬との特別なひととき

「軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクト」が基盤となり、その活動や理念が波及していく中で、犬にやさしい施設やカフェ、フード、アクティビティなどが続々と登場している。なかでも軽井沢でしか体験できない上質な時間やサービスを提供しているスポットを紹介していく。

 

自然の中で絶品バーガーを味わう「BurgerMania Karuizawa」

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店の落ち着いた空間にすっかり寛いだ様子

利便性の高い旧軽井沢エリアにあり、犬と一緒に絶品のハンバーガーが味わえると好評の「BurgerMania Karuizawa」。東京に4店舗展開しており、オーナーが軽井沢に縁があったことから、2024年12月に軽井沢店をオープンした。川沿いの緑に囲まれた環境を生かし、広々としたテラス席が店舗を囲むように奥までつづいている。店内もカフェマットを敷けば犬も入店可能なので、天候や気温に左右されずに過ごせるのも安心だ。

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愛犬とコミュニケーションを取りながらゆったり食事ができる

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東御市のブランド牛「峯村牛」を使った、軽井沢限定のスペシャルバーガー。他にも軽井沢限定の季節のフルーツバーガーやマンスリーバーガーなどもおすすめ

「犬を連れた方もそうでない方も快適に過ごせるよう、1グループにつき2頭までなど、簡単な同伴ルールを設けています。ルールを理解し合い、みんなが楽しめるお店づくりを目指しています」と、店長の京谷さん。

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「わんちゃんも自由に過ごせるよう、パーティーや二次会などの貸切利用もご相談ください」と話す、店長の京谷豪さん

国産牛のパティや地元野菜を挟んだボリューム満点のハンバーガーは、一口味わうごとに肉汁が溢れ、濃厚な旨みが広がる。バーガーだけでなく、サンドイッチや自家製ナゲットなどのサイドメニュー、ドリンクも充実しており、犬用の食事メニューはないが、ドッグフードを持参することも可能だ。ランチやディナーはもちろん、散歩の休憩でコーヒーを飲むなど、シーンに合わせてフランクに立ち寄りたい。愛犬も訪れる人も誰もがゆったりと寛げる、居心地の良さが魅力のお店だ。

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緑豊かな自然環境を生かしたテラス席

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自然光が差し込む明るい店内。スタイリッシュでアメリカンな雰囲気が漂う

BurgerMania Karuizawa

住所:長野県軽井沢町軽井沢11-11
電話:0267-41-6624
営業時間:11:00〜20:00(19:30LO)
定休日:不定休
HP:https://maniacorporation.com/burger-mania
備考:正月は営業予定

命を循環させるペットフード「軽井沢鹿工房」

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代表の菊池さんと共に狩りに出る凛々しい猟犬の「ボス」

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猟師を立派な職業の一つにしたいと、熱く語る代表の菊地哲也さん

軽井沢の山で増え続けているという鹿による農林被害を軽減し、森の生態系を維持するため、捕獲した鹿肉を活用したペットフードを製造している「軽井沢鹿工房」。
代表の菊地さんは、3代続く猟師の家系で生まれ育ち、軽井沢町の有害鳥獣対策員として5年間活動した後、独立し、現在も365日山に入り続けているという生粋の猟師だ。

「現状、捕獲された鹿の約8割が廃棄されています。昔から父に“食べられる分だけ獲る”と教えられていたこともあり、いただいた命は無駄にせず、循環させることを目指しています」。そんな想いから2年前に工房を立ち上げ、捕獲から解体、加工まで、一貫して自社で製造。命に感謝し、肉も内臓も骨もほぼ全てを余さず活用している。

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さまざまな部位を活用したジャーキー。鮮度を大事に手作りしている。軽井沢に取り扱い店舗も多いが、工房へ直接行けば試食しながら犬の好みの味を探すことができる

大切な家族である愛犬の健康を考えた時、人間同様、食事の質は重要だ。鹿肉は鉄分やビタミンなど栄養面も優れているだけでなく、軽井沢鹿工房では製造工程でX線検査を導入し、散弾銃で撃たれて残った小さな玉など、金属探知機では反応しない体内の細かい不純物も確認している。また、鹿が食べたものからアレルギー反応を起こす場合もあると言い、どんな環境でどんなものを食べた鹿なのか、捕獲から携わり背景を熟知しているからこそ、純度が高く、真に安心安全なペットフードができるのだ。

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なんと奥様も猟師。5人のお子様も小さい頃から一緒に山へ入っているそう

軽井沢鹿工房が命の循環を考える上で、もう一つ重視しているのが猟師の育成だ。とくに高標高地で捕獲できる人材育成に力を入れている。「山上に頭数が増え、鹿による食害が広がると、林野は荒れて食料がなくなります。そうすると鹿は食料を求めて里へ降り、農業被害が出るほか、やがて森の動物たちの命も失われていく。結果、土壌が衰退し、土砂が流出して海の生態系にも影響を及ぼします」と、菊池さん。
自然は密接に繋がっているからこそ、その大元の核となる高地での捕獲が重要になると言う。自然環境を健全化し、持続可能な社会にしていくための捕獲であり、その副産物としてペットフードがある。単なる食事を超えた、そんな社会的意義や価値を理解して味わいたい。

軽井沢鹿工房

住所:長野県北佐久郡御代田町草越179-14
電話:080-2259-3226
営業時間:10:00〜17:00
定休日:水曜
HP:https://karuizawasikakoubou.com/

自然に親しむ散歩コース「湯川ふるさと公園」

中軽井沢駅の近く、湯川に沿って南北にのびる全長約2キロの公園。駐車場も無料で利用でき、緑の自然に親しみながら犬の散歩ができる、地元民にも人気の公園だ。
公園の中央を横切る道路を挟んで北側は、自然観察路として木道が敷かれており、森林浴をしながらのんびりと散策できる穴場スポットになっている。

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緑溢れる自然観察路。木漏れ日が気持ち良い

南側は大型遊具の広場があり、その横にのびる歩道を南下していくと、右側にドッグランが現れる。中型犬用と小型犬用でエリアが分かれており、木陰で快適な環境の中、安心してのびのびと遊ばせることができると犬連れに評判だ。すぐそばには湯川の清流が流れ、心地よい風に吹かれながら、愛犬も飼い主もストレスなく癒しの時間が過ごせる、おすすめの散歩コースだ。

湯川ふるさと公園

住所:長野県軽井沢町大字長倉2658番地10
電話:0267-45-8582(軽井沢町地域整備課)

犬用トイレに注目「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」

1995年に誕生した大型ショッピングモール。軽井沢駅南口を降りてすぐの立地と、約240ものショップが軒を連ねる利便性の良さで、連日大勢の人で賑わう。犬にも優しい施設として知られ、ドッグランやペットスパなどの店舗もあるほか、キャリーバッグやドッグバギーを利用すれば多くの店に入店して一緒に買い物ができる。まさに犬と人の境界がほとんどない、犬連れの観光客にとって聖地のような場所だ。

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ドッグスペースのトイレ。大型犬でもこの広さ

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ベンチもあるのでリードを繋いで休憩できる

犬連れの客が増加する一方、これまでトイレだけは敷地内ではできず、注意喚起がされていた。そこで2024年の4月に誕生したのが、ペット専用のトイレなどを整備した「ドッグスペース」だ。スペースには水で流せるトイレ、排泄用のゴミ箱「うんちBOX」、車に乗る前に土や芝生を落とせる足洗い場が設置されているほか、ベンチもあるので休憩スペースとしても機能している。施設内のペット関連施設や駐車場近くの3箇所に設置されており、周囲の環境に配慮され、あえて異なるデザインにしていると言う。毎日清掃もされているので、ピカピカで気持ちがよい。

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「ドッグスペースは使いやすさも意識してつくりました。さらに愛犬との仲が深まるきっかけになれば」と、広報の酒井梨穂さん

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真ん中のポールにおしっこをさせ、中心の丸いボタンを押すと水が流れてくる、画期的な仕組みだ

「こういった設備があれば、より犬連れのお客様の満足度も上がり、愛される施設になるのではと思い、設置しました」と話すのは、広報を担当する西武不動産プロパティマネジメントの酒井さん。ルールや縛りを設け、行動に制限をかけてしまうことは簡単だが、それを取っ払い、利用者がさらに快適に過ごせる方法を考え、その環境を整えていく。それが軽井沢・プリンスショッピングプラザが実践しているホスピタリティだ。

また、利用者に優しいだけでなく、トイレマナーをしっかり行なっている施設というマナーアップのイメージにも繋がり、犬を連れていないお客様も安心して買い物を楽しめる。今後もペットに関する情報をホームページやSNSで発信したり、ペット向けのイベント開催を検討したりなど、「日本一ペット連れにやさしい施設」を目指していく。

軽井沢・プリンスショッピングプラザ

住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢
電話:0267-42-5211
営業時間:10:00〜19:00(店舗や時期により変動。詳細はホームページをご確認ください)
定休日:不定休
HP:https://www.karuizawa-psp.jp/
備考:2025年10月31日〜11月10日までプラチナバーゲン開催
軽井沢・プリンスショッピングプラザイベントニュース
https://www.karuizawa-psp.jp/platinum2025/

犬と特別な参拝ができる「熊野皇大神社」

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ペット連れ参拝可能な熊野皇大神社の随身門にて

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県内最古と伝わる狛犬。素朴で親しみやすい雰囲気がある

創建は景行天皇40年(110)と伝わり、約1900年の歴史を誇る古社。碓氷峠の標高約1200メートルに位置し、群馬と長野の県境にまたがるという珍しい神社だ。長野県側が熊野皇大神社で、軽井沢の総氏神として厚く信仰されているが、近年では犬の健康祈願ができるとして、犬を連れた県外参拝客もこぞって訪れている。

神社は古来より四つ足の動物は穢れとみなし、立ち入りを禁止するところも多い。しかし熊野皇大神社が犬などのペットの参拝を許可しているのには、その由緒に関係がある。約1900年前、碓氷峠を通りかかった日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が、先が見えないほどの深い霧に覆われ、その時に道を先導してくれたのが一羽の八咫烏(ヤタガラス)だった。無事に登頂し、その感謝から熊野三社を祀った後、下山する際には蛇が道案内をしてくれて、最終的にその蛇は龍となって天へ帰っていったと言う。さらに境内には室町時代中期の作で、県内最古とされている「峠のこまいぬ」もある。神社の成り立ちに深く動物が関わっていることから、動物を区別することなく、参拝を受け入れているのだそうだ。

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犬耳がかわいらしい王皇神社。今後、狛犬の台座もできる予定で、犬と一緒に写真が撮れるようにすると言う

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犬の厄難を玉に移し、指定の場所で投げて砕く「肉球形 厄割の玉」

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犬の健康や長寿を願うお守りも充実

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鼻だけが書いてある絵馬に、愛犬の似顔絵と願い事を書き入れて奉納する「鼻絵馬」

境内を歩いていると、犬にまつわるものが数多くある。まず御神木のしなの木の裏手、今年できたばかりという犬の安産や身体健康を願う、犬のための「王皇(わんこう)神社」。授与所には神棚に祀る「犬康長寿札」、犬と参拝した方限定の御朱印、犬の似顔絵を描いて奉納する鼻絵馬、ペット用のお守りなど、さまざまな授与品を扱う。また、犬の七五三や健康祈願など、犬のご祈祷も受け付けている。

なかでも一番人気が「肉球手形」だ。「肉球手形処」の小屋に入り、前足の肉球に食紅をつけ、肉球形の色紙に押し当てる。その色紙を自宅の神棚や東か南の方角に祀ると、犬の健康を祈願できるそうだ。

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大人気の肉球手形に挑戦

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練習で試し押しをした後、本番。力強く押せた

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犬小屋風の肉球手形処

「参拝客が多いほど、神様のパワーが強まるのが神社。人だけでなくわんちゃんも来ればより楽しい場所になるし、神様のパワーが強まれば、そのぶん私たちも恩恵を受け取るので、ウィンウィンになる」と、宮司の水澤貴文さん。

愛犬の幸せや健康を願う気持ちは、どの飼い主も一緒。愛犬と一緒に参拝して祈願できる、この神社だけの特別な体験は、きっと家族の大切な忘れられない時間になるはずだ。

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「犬も含め、老若男女が楽しめる神社を目指しています」と、宮司の水澤さん

熊野皇大神社

住所:長野県北佐久郡軽井沢町峠町1
電話:0267-42-5749
拝観時間:9:00〜16:00
HP:https://kumanokoutai.com/

犬と人との共生を目指す軽井沢の未来

軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクトがこれまでの10年で築いた功績と、そこから町全体へと広がりつづける、犬へのウェルカムな輪。受け入れ側も、利用者も、犬も、誰もが心から安心して過ごせるよう相互理解を深め、それぞれができる役割を果たすことで、幸せが循環し、笑顔が増えている、そんな相乗効果が生まれていた。
恵まれた自然環境や気候がもたらす外的なウェルネスだけでなく、愛犬がいることで体感できる土地の魅力が、飼い主にとっても愛犬にとっても、心に残る絆や思い出を育み、内的なウェルネスにも作用している。それが軽井沢ならではのウェルビーイングでウェルネスなリゾートの形と言えるかもしれない。

軽井沢ドッグツーリズム憲章が制定されたことで、今後ますます犬と人の共生観光モデルとしての価値を深め、軽井沢ドッグツーリズム推進プロジェクトが語っていたような、犬と人の垣根がない理想的な町になっていくはずだ。そんな未来を心待ちにしたい。

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取材・文・イラストマップ:佐藤妃七子 撮影:日高慎一郎

 

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