マイカーなしで登山・トレッキング!電車で行ける長野県の低山・里山

山岳県・長野には、標高の高い名峰だけでなく、魅力あふれる低山・里山も数多く点在しています。本記事では、駅から歩いてアクセスできるスポットをピックアップしてご紹介。最寄り駅からの行き方や所要時間、見どころなど、登山ビギナーやマイカーを持たない方にも役立つ情報をまとめました。次の休日は、電車で気軽に長野の低山へ出かけてみませんか。(2025/6/2)

00_TOP

TOP PHOTO:『飯盛山(めしもりやま)』を彩るニッコウキスゲ(例年の見頃:6月下旬〜7月中旬) ©南牧村
 

記載の情報は記事構成時点(2025年5月)のものとなります。最新の情報は現地市町村・観光協会等にご確認ください。
 

01 葛尾山(葛尾城跡)・五里ヶ峰(坂城町・千曲市)

01_1_
満開の桜越しに広がる山並みや千曲川、市街地のまち並み。『葛尾山』山頂から望む春の風景 ©坂城町

長野県坂城町と千曲市の境に位置する『葛尾山』(標高805m)。山頂付近には、戦国武将・村上義清の居城だった県指定史跡「葛尾城跡」があります。堀切や郭などの遺構が残されており、主郭からは千曲市・長野市方面や坂城町・上田市方面を一望。晴れた日には北アルプスや千曲川の雄大な景色が広がります。

「坂城駅」から登山口となる「坂城神社」までは徒歩約10分。神社裏から整備された登山道が続き、途中の分岐で約1.5kmの比較的緩やかなコースか、約1.2kmの急登コースを選択できます。所要時間はいずれも60分ほどなので、体力に合わせて無理のないルートを選びましょう。

分岐以降は赤松林のなかを登ります。石のほこらやあずまやが見えてきたら、そこが山頂であり主郭です。山頂からさらに稜線をたどり、標高1094mの『五里ヶ峰』に登頂することもできますが、ここまででも十分見応えと登り応えのあるコース。体力に不安がある場合は折り返しましょう。

登山口最寄り駅の「坂城駅」近くにある「坂木宿ふるさと歴史館」は登山の前後にぜひ足を運びたいスポット。「葛尾城」や村上義清に関する資料が充実しており、関連書籍や御城印の購入もできます。武田信玄を二度破った名将の軌跡や川中島合戦の歴史を知ることで、山旅がより印象深いものになるはずです。

また、「坂城駅」から徒歩約5分の「鉄の展示館」や、徒歩30分ほどの「さかき千曲川バラ公園」に立ち寄るのもおすすめです。

01_2_
戦国時代の名将・村上義清の居城「葛尾城」の跡地。春は桜が彩りを添えます ©坂城町

【INFORMATION】

【スポット名】葛尾山(葛尾城跡)・五里ヶ峰
【標高】葛尾山(葛尾城跡):805m、五里ヶ峰:1094m
【最寄り駅】しなの鉄道「坂城駅」
【登山口(坂城神社)】長野県埴科郡坂城町坂城1205(GoogleMaps
【総歩行時間目安】1時間40分~3時間10分/JR「坂城駅」⇔坂城神社(登山口)⇔葛尾城跡※五里ヶ峰まで行く場合は+90分
詳細・問い合わせ
【備考】登山口にトイレあり。登山口周辺に自動販売機などがないため、飲み物は事前に準備を

02 光城山・長峰山(安曇野市)

02_1_
桜のトンネルの間から望む、雪化粧した北アルプス。春の『光城山』ならではの風景 ©GoNAGANOアーカイブ記事

長野県安曇野市の東側に位置する『光城山(ひかるじょうやま)』(標高912m)と『長峰山(ながみねやま)』(標高933m)は、北アルプスと安曇野の田園風景を見渡せる里山。ふたつの山は隣接しており、縦走ルートも整備されています。

『光城山』は、春になると約1500本のソメイヨシノが登山道を彩る桜の名所。山腹を登るように咲く桜並木は「登り龍」とも呼ばれ、例年4月中旬には山全体がピンク色に染まります。山頂には「古峯神社」が鎮座しており、参拝も可能。登山口から山頂までは約1時間で、道中にはベンチやトイレ(冬季閉鎖)も設置されています。

隣の『長峰山』は、標高1000m未満ながら山頂からの壮大な眺めが魅力。展望台やパラグライダーの離陸場があり、晴れた日には北アルプスや安曇野平を一望できます。登山口から山頂までは片道1時間ほど。標高差約300mのゆるやかな登りが続く、初心者でも歩きやすいコースです。

両山をつなぐ縦走ルートの途中には「天平の森」があり、展望風呂やレストラン、天文台、コテージ、キャンプ場などの施設がそろいます。日帰り入浴や宿泊もでき、山歩きの楽しみを広げてくれます(冬季休業あり)。

「田沢駅」から『光城山』の登山口までは徒歩約30分。縦走後は『長峰山』側から「明科駅」方面へ下山し、公共交通で無理なく周回できるルートもあります。「松本駅」から「田沢駅」までは電車でわずか1駅とアクセスも良好。松本観光と組み合わせて楽しめるハイキングスポットです。

02_2_
北アルプスと安曇野平の大パノラマが広がる『長峰山』山頂 ©GoNAGANOアーカイブ記事

【INFORMATION】

【スポット名】光城山・長峰山
【標高】光城山:912m、長峰山:933m
【最寄り駅】光城山:JR「田沢駅」、長峰山:JR「明科駅」
【登山口】光城山:長野県安曇野市豊科光(GoogleMaps
長峰山:長野県安曇野市明科中川手14-2(GoogleMaps
【総歩行時間目安】約4時間30分/JR「田沢駅」→光城山→長峰山→JR「明科駅」
詳細・問い合わせ
【備考】『光城山』のトイレや「天平の森」の各施設は冬季閉鎖・休業あり

03 鷹狩山(大町市)

03_1_
『鷹狩山』山頂より。「恋人の聖地」のモニュメント越しに望む北アルプスのパノラマ ©(一社)大町市観光協会

長野県大町市街地の西側に位置する『鷹狩山』。標高1167mの山頂からは、北は白馬岳から南は常念岳まで、北アルプスの名峰を望み、眼下には安曇野平が広がります。

とくに雪化粧した冬の北アルプス、朝焼けに染まる山々、秋から冬にかけて出現する雲海、そして夕暮れ時のサンセットは格別。その美しい眺望から「信州サンセットポイント百選」や「信州ふるさとの見える丘」にも選ばれています。

山頂の展望公園は「恋人の聖地」に認定されており、ハート形のモニュメントや展望タワーが設置されています。近くにはレストラン「エコーハウスたかがり」もありランチが楽しめるほか、「金毘羅神社」への参拝も可能です。

「信濃大町駅」から登山口でもある「大町山岳博物館」までは徒歩約30分。そこからおよそ1時間30分で山頂に到達します。歩き足りない方には、山頂から乗越峠を経由して「霊松寺」まで足を伸ばし、「信濃大町駅」や「北大町駅」へ下山するルートもおすすめ。山の天候は変わりやすいため、出発前に現地のライブカメラで状況を確認しておくと安心です。

登山の前後に、日本で初めての山岳をテーマにした「大町山岳博物館」で北アルプスについて学んだり、併設する動物園を訪れたりするのも楽しみ方のひとつ。眺めの良い「大町公園」もぜひ立ち寄りたいスポットです。

03_2_
雲海の出現率が高まるのは10月下旬〜11月上旬。晴れた朝には幻想的な雲海と北アルプスの絶景がみられるかもしれません ©(一社)大町市観光協会

【INFORMATION】

【スポット名】鷹狩山
【標高】1167m
【最寄り駅】JR「信濃大町駅」
【登山口(大町山岳博物館) 】長野県大町市大町8056-1(GoogleMaps
【総歩行時間目安】約3時間/JR「信濃大町駅」⇔大町山岳博物館(登山口)⇔山頂 ※霊松寺を経由し「信濃大町駅」に戻る場合は+2時間
詳細・問い合わせ
【備考】山頂近くまで車でのアクセスも可能


>>目次に戻る

04 太郎山(上田市)

04_1_
『太郎山』の山頂で、景色を眺めながらベンチに腰掛けてのんびりと ©(一社)信州上田観光協会

長野県上田市の北側にそびえる標高1164mの『太郎山』。古くから信仰を集め、山頂には「太郎山神社」が鎮座しています。“市民の山”として今も多くの人に親しまれており、春には「太郎山登山競走」が行われるなど、地域に根ざした存在です。

13ある登山ルートの中で、もっとも一般的なのが山口地区から登る「表参道コース」です。登山口から山頂までは約1時間30分。道中には石祠や石鳥居、「太郎山神社」の赤い大鳥居などの史跡が点在し、「丁石(ちょうせき)」と呼ばれる石の道標も並びます。歩くごとに歴史の趣が感じられるのも、このコースの特徴です。

山頂からは上田市街地や千曲川、北アルプス、天候に恵まれれば富士山まで見渡せます。春の桜や秋の紅葉など、四季折々の魅力を味わいながら、開放感あふれる頂上の草地でのんびり過ごす時間は格別です。

下山には「裏参道コース」(黄金沢登山口)を利用するのもおすすめ。「表参道コース」よりもやや勾配が緩やかで、山野草や野鳥、「金明水」と呼ばれる湧き水など、自然の楽しみが待っています。

アクセスは「上田駅」から登山口まで徒歩で約1時間。もしくは、市街地循環バスに乗って「山口」バス停下車、そこから30分ほど歩き「表参道コース」登山口へ。「表参道コース」から登り「裏参道コース」を通って下山する周回ルートも可能です(両登山口間は徒歩約30分)。「上田駅」を起点に、登山と上田市街地散策をあわせて楽しむことができます。

04_2_
「表参道コース」の途中に現れる、風格ある石鳥居 ©(一社)信州上田観光協会

【INFORMATION】

【スポット名】太郎山
【標高】1164m
【最寄り駅】JR・しなの鉄道・上田電鉄「上田駅」
【登山口(表参道コース)】長野県上田市(GoogleMaps
【総歩行時間目安】約4時間/JR・しなの鉄道・上田電鉄「上田駅」⇔表参道登山口⇔山頂 ※「裏参道コース」で下山する場合は+30分(「上田駅」→表参道登山口→山頂→裏参道登山口→表参道登山口→「上田駅」)
詳細・問い合わせ

05 霧訪山(塩尻市)

05_1_
眺望抜群の『霧訪山』。四季をつうじて絶景に出合えます ©(一社)塩尻市観光協会

標高1306mの『霧訪山(きりとうやま)』は、長野県塩尻市にたつ里山。比較的短時間で登頂できるアクセスの良さと、山頂から望む360度のパノラマが魅力です。北・南・中央アルプスから八ヶ岳、御嶽山、妙高山まで望める絶景スポットとしても知られます。

主に3コースある登山道の中で、もっとも登頂時間が短く人気なのが「小野コース(通称:かっとりコース)」。「小野駅」から登山口までは徒歩約20分、登山口から山頂まではおよそ1時間15分でたどり着きます。登山口駐車場にトイレ(冬季閉鎖)があるため、準備を万全にしていきましょう。

急登が続くルートながら、道中には小野集落を見下ろすことができる「かっとり城跡」や、1811年(文化8年)に建立されたという「御嶽大権現の石碑」など、歴史を感じる見どころが点在。コース中腹には落雷対策として避難小屋が整備されており、地元の人々の手で大切に管理されています。

また、長野県の「信州の里山・総選挙!(冬山編)」で第一位に選ばれた『霧訪山』。春はオキナグサやツツジ、スミレなどの山野草が咲き、秋には紅葉が登山道を彩り、冬には澄んだ空気と雪化粧した山々の眺望が広がる、四季をつうじて楽しめる山です。

05_2_
冬の『霧訪山』山頂からの景色。霧氷と雪景色の先に、北アルプスの峰々がくっきりと浮かび上がります ©(一社)塩尻市観光協会

【INFORMATION】

【スポット名】霧訪山
【標高】1306m
【最寄り駅】JR「小野駅」
【登山口】長野県塩尻市小野(GoogleMaps
【総歩行時間目安】約2時間40分/JR「小野駅」⇔「小野コース」登山口⇔山頂
詳細・問い合わせ
【備考】登山口駐車場のトイレは冬季閉鎖。JR「小野駅」は無人駅でICカードが使えない場合もあるため、ご注意ください

06 飯盛山(南牧村)

06_1_
『飯盛山』山頂付近から望む八ヶ岳の最高峰・赤岳などの雄大な山並みが広がります ©南牧村

長野県南牧村に位置する標高1643mの『飯盛山(めしもりやま)』。その名のとおり、お椀に盛られたご飯のような、まるくなだらかな山容が特徴です。開放的な草原が広がる山頂からは、赤岳をはじめとする八ヶ岳連峰や南アルプス、浅間山、富士山、奥秩父など、名だたる山々の大パノラマが望めます。

四季折々の高山植物も豊富で、とくに夏から秋にかけては、ニッコウキスゲやマツムシソウなどの花々が登山道を彩ります。

「野辺山駅」から「しし岩登山口」までは徒歩約1時間。登山口駐車場にはトイレが整備されており(冬季閉鎖)、登山前の準備にも便利です。1時間弱で登頂でき、途中で「平沢山」を経由することもできます(プラス10分ほど)。下りは往路を戻るほか、「清里駅」方面へ抜けることもできます。登山道は危険箇所が少なく整備が行き届いた、登山初心者にも歩きやすいコースです。

ガイド付きのトレッキングツアーも受け付け中(要事前予約)。飯盛山の自然や歴史を学びながら歩きたい方は、専用フォームからお申し込みを。

「野辺山駅」と登山口の間には、巨大なパラボラアンテナを見学できる「国立天文台野辺山宇宙電波観測所」や、プラネタリウム・カフェ・レストランなどを併設する複合施設「ベジタボール・ウィズ」があり、登山前後に立ち寄るのもおすすめです。

06_2_
山頂直下の登山道。青空と草原に囲まれた景色のなか、心地よい風を感じながら頂上を目指します ©南牧村

【INFORMATION】

【スポット名】飯盛山
【標高】1643m
【最寄り駅】JR「野辺山駅」
【登山口】長野県南佐久郡南牧村平沢(GoogleMaps
【総歩行時間目安】約3時間45分/JR「野辺山駅」⇔「しし岩登山口」⇔山頂 ※平沢山を経由する場合は+10分、JR「清里駅」方面へ下山する場合は+5分
詳細・問い合わせ
【備考】「しし岩登山口」のトイレは冬季閉鎖

その他、電車でアクセス可能な低山・里山

雁田山(小布施町)/鴨ヶ嶽(中野市)/小熊山(大町市)/風越山(飯田市)など

登山・トレッキングの注意点

登山・トレッキングをする際は、標高が低い山でも油断は禁物です。必要な装備と準備はしっかりと行い、安全に山歩きを楽しみましょう。
安全登山についての詳細は、☞こちらの記事も参考にしてみてください。

※秋の松茸シーズンには、入山禁止や入山規制される山があります。現地にある標識等に従い、ルールとマナーを守って山歩きを楽しみましょう。
※行政・関連機関が発信する最新情報を入手したうえで登山計画を立て、安全登山をしましょう。
※記載したコースタイムは無積雪の場合です。凍結や積雪がある際はアイゼンなどの滑り止めの携行と時間に余裕を持った登山計画を立ててください。


参考文献:中嶋豊著「信州山歩き地図Ⅰ~Ⅳ」(信濃毎日新聞社)

文:松尾 奈々子


>>目次に戻る

閲覧に基づくおすすめ記事

MENU