【GO NATURE GO NAGANO】 長野のSUPへ 山があるから、湖がある。長野だからこそ味わえるSUPの世界。
山国、長野。見上げれば稜線があり、森があり、その足もとには雪解け水をたたえた湖や川がある。スタンドアップパドルボード、通称 SUP は、その水の上に立ち、パドルで静かに漕ぎ進むウォーターアクティビティ。ハワイ発祥のスポーツでありながら、今、長野県の湖や川を舞台に、少しずつその楽しみ方が広がっている。
スキー競技の次に選んだ、水の上というフィールド
激しいスピードを競うものではなく、水面に浮かび、風を読み、山を眺め、ひと漕ぎずつ前へ進む時間。観光地を巡るだけでは出会えない、長野のもうひとつの自然との向き合い方。それがSUPだ。
今回話を聞いたのは、「八ヶ岳アドベンチャーツアーズ」主宰で、元SUP全日本王者の福井五大さん。蓼科山麓の白樺湖・女神湖を拠点に、ガイドツアーやスクールを手がけ、SUPボードブランド「ピークスファイブ」代表も務める人物。スキー競技の世界から水上へ。山を知る福井さんの言葉から、長野だからこそ味わえるSUPの魅力をたどった。
https://www.yatsugatakeadventure.com/
福井さんとSUPの出会いは、スキー競技の選手を退いた後。次のステップを探していた時期だった。
「次のステップに進もうとしていた時に、SUPっていう面白い遊びがあるぞと。ハワイ発祥の、ボードの上に立って漕ぐやつで、めちゃくちゃ気持ちよくて」
最初に体験したのは、北信五岳を望む千曲川でのリバーSUP。水上に立った瞬間、足もとから伝わる不安定さと、視界いっぱいに広がる景色。その鮮烈な感覚が、福井さんの進む方向を変えた。もともとは自転車の販売・製造に携わっていた福井さん。SUPに惚れ込む一方で、道具としてのボードにも目が向く。
「乗ってみたいと思えるかっこいいブランドがない」
ならば自分たちで作る。そうして生まれたのが、SUPボードブランド「ピークスファイブ」。遊びとしての SUPだけでなく、道具、フィールド、旅、そのすべてをつなぐ活動がここから始まった。
「長野=山」の先にある、湖という遊び場
長野県といえば、まず思い浮かぶのは山。登山、トレッキング、スキー、スノーボード。山岳観光の存在感は圧倒的で、水辺のアクティビティはまだ十分に知られているとは言いがたい。けれど福井さんは、そこにこそ可能性を見出す。
「みんなにアクティビティをゴリゴリ推し進めたいわけじゃなくて、まずは湖での過ごし方が豊かだって知ってほしい」
湖畔を散歩する。木陰で本を読む。芝生の上でヨガをする。カフェに立ち寄る。そんな穏やかな時間の延長線上に、SUPがある。特別な覚悟をして挑むものではなく、湖の一日を少し豊かにする選択肢のひとつ。福井さんが思い描くのは、ヨーロッパや北米のレイクリゾートのような過ごし方。湖を中心に、人がゆるやかに集まり、思い思いの時間を過ごす風景だ。
「湖は向かい岸にも何かあって、安心感がある。海と違って一つの湖の周辺でいろんな楽しみ方ができる」
たとえば諏訪湖なら、サイクリングロードを走り、湖畔の店に立ち寄り、夕方にはSUPで水上へ出る。北竜湖なら、山に囲まれた静けさの中をゆっくり進む。木崎湖や青木湖では、北アルプスの稜線を遠くに望みながら、透明度の高い水面を漕ぐ。山があるから、湖がある。その湖があるから、水の上から山を見る時間が生まれる。これもまた、長野の旅のかたち。
初めてのSUPに、長野の湖が向いている理由
SUPに興味はあっても、「立てるだろうか」「落ちたら怖い」と感じる人は少なくない。だからこそ福井さんは、初めてのSUPには湖が向いていると話す。湘南でスクールを開いていた経験もある福井さんにとって、海と湖の違いは明確だ。
「海は天気がよくても波でタプタプしている。落ちて、上がって、落ちて上がってってなって、気持ちよく漕いでいる時間がなかなか感じられない」
一方、長野の湖は波が少なく、水面が安定している。風が穏やかな日であれば、ボードの上に立つ感覚もつかみやすい。たとえ水に落ちても浮力が大きいボードにつかまり、岸沿いへ戻れば帰ってこられる安心感がある。
「2時間のスクールで、今まで一人も立てなかった人はいない」
福井さんは言い切った。最初の一歩に必要なのは、運動神経よりも、落ち着いて水に慣れること。ボードの揺れに身を任せ、膝から立ち上がり、視線を遠くへ。足もとばかり見ていた目線が湖の向こうへ抜けた瞬間、世界の見え方が少し変わるはず。
一漕ぎごとに、水と身体が近づいていく
SUPの面白さは、ただボードの上に立つことではない。パドルを水に入れ、ボードが前へ滑り出す、その一瞬にある。
「ひとパドルごとに成功と失敗がある。水をうまくキャッチできた時はぎゅんって進む。雑なパドルをしてしまった時は進みが悪い。それがすごくわかりやすい」
水をつかむ角度、力を入れるタイミング、体重の乗せ方。ひとつひとつの動きが、そのまま進み方に表れる。うまく漕げた時の伸びやかさ。力任せに漕いだ時の抵抗。水面はいつも正直だ。
「考えてる暇ないです。いいパドルをするために丁寧に水に当ててあげることだけに集中して。最高のリフレッシュだと思う」
スマートフォンも、日々の予定も、頭の中の小さな雑音も、湖上では少し遠くなる。目の前にあるのは、水面とパドルと自分の身体。風が吹けば湖面に小さな起伏が生まれ、波に合わせて重心を変える楽しさも加わる。静けさの中に、確かな集中がある。長野の湖上で SUP をすることは、景色を眺めるだけではない。水の感触を通して、山の時間に触れる体験なのだから。
山の雪が、湖になる
福井さんの言葉には、SUPを通じて水と関わり続けてきた人ならではの視点がある。
「水って山から海まで全て循環している。冬に低気圧で海からできた雲が雪を降らせて山に積もり、春になると雪解け水が湖に流れ込んでくる。その水がまた川を下って海に帰っていく。全部つながっている」
長野の湖や川は、山と切り離せない。冬に山へ降り積もった雪が、春に融け、沢となり、川となり、湖を満たす。その水が農地を潤し、暮らしを支え、やがてまた海へ向かう。白樺湖も、もともとは農業用の人工湖。冷たすぎる源流の水を太陽で温め、田畑へ流すために先人たちがつくった溜池だ。現在もモーターボートやジェットスキーは禁止され、カヌー、カヤック、SUPなど手漕ぎの乗り物のみが許されている。
「山に雪が降るから春から湖がある。湖に水があることは当たり前じゃない」
SUPで湖面に立つと、その言葉が実感として近づいてくる。足もとの水は、ただそこにある風景ではない。山から届いた水であり、人の暮らしと結びついてきた水。長野のSUPには、そんな土地の奥行きを感じてしまう。
SUPを覚えると、旅の景色が変わる
最近の SUP(スタンダップパドルボード)はインフレータブル(空気注入式)が主流。一般的に重さ6〜11kg。折り畳んだ状態で車での移動も可能だ。レイクリゾート巡りの旅に出かけてみたい。©Takashi Gomi
全長323cm、幅81cm、重量7.2kg。通常のモデルより2kgの軽量化を達成するためウーブン(織り)構造を採用したモデル(2026AOLANI WOVEN)。ボードの軽さは扱い易さと加速・推進力を生むとのこと。©PEAKS5
福井五大さんは「初心者は水上で安定を確保するため幅と厚さを考慮したほうがいいですね」とアドバイス。このモデルは厚さ15cm。浮力が大きいため、落水しボードに上がるときも楽だ。©PEAKS5 問い合わせ先:〈PEAKS5〉https://peaksfive.com/products/aolani-woven
長野の湖で SUP を覚えた先には、もっと広い楽しみ方が待っている。
「白樺湖で体験して楽しかったで終わってもいいけれど、せっかくできるようになったら、ボードを持っていろんな場所に旅してみてほしい」
夏の海辺で、朝の 1 時間だけ漕ぐ。家族で水辺へ出かける。子どもや愛犬と一緒に、穏やかな湖面に浮かぶ。旅先にSUPがあるだけで、過ごし方は大きく変わるだろう。SUPは目的地そのものにもなり、旅の相棒にもなる道具だ。長野で最初の一歩を踏み出せば、次の湖へ、次の川へ、そして海へと楽しみが広がっていく。全国各地で活躍する「ピークスファイブ」アンバサダーたちとともに、長野県内の各エリアでも体験の場を増やしていきたいと福井さんは話す。北信、北アルプス山麓、八ヶ岳、諏訪、伊那谷。長野県には、山の水がつくった多様なフィールドが待っている。
今年の夏、まずは長野の湖上へ。山を見上げる旅から、山の水に浮かぶ旅へ。SUPは、長野の自然をもう一段近く感じるための入り口だ。
エリア別 長野県内 SUP(スタンドアップパドルボード)のガイドツアー・スクール開催インフォメーション
※開催時期、料金、対象年齢、予約方法などの詳細は、各施設・事業者の公式サイトで要確認。
〈北信エリア〉
Rad Sheep Outdoors(長野市)
フィールド:犀川ダム湖(久米路峡周辺など)
少人数制のプライベート感を重視したガイドツアーを提供。緑豊かな自然の中を進 む、ジャングルクルージングのような体験や、愛犬と乗るドッグ SUP にも注力。ガイド・写真動画撮影付きツアー、SUP 一式レンタルなどを実施。
住所:長野県長野市信州新町上条1-1(SUP Base)
https://www.outdoorbase-nagano.com/
Shigakogen Mountain Discovery(山ノ内町)
フィールド:志賀高原ビワ池、千曲川
標高約 1,400mに位置する、志賀高原で2番目に大きい神秘的な「琵琶池」が舞台。周囲を白樺やブナの原生林に囲まれた高い透明度を誇る湖で、夏の盛夏でも非常に涼しく爽快な SUP体験が叶う。日本リラクゼーション SUP 協会公認のインストラクターが在籍。
住所: 長野県下高井郡山ノ内町平穏7148志賀高原ビワ池
https://shigakogen-md.com/
野沢グリーンフィールド(野沢温泉村・飯山市)
フィールド:北竜湖、千曲川
周囲を山に囲まれたハート型の湖「北竜湖」でのゆったりとした湖上ツアーと、日本最長河川・千曲川の緩やかな流域を進む SUP ツアーを実施。湖と川、異なるフィールドで異なる SUPワールドを楽しめる。
住所:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9254
https://www.nozawagreenfield.com/
サンデープランニング アウトドアスクール(信濃町)
フィールド: 野尻湖、犀川
1974年創業の、日本のゲストハウス・アウトドアスクールの草分け的存在。風の影響を受けにくい穏やかな野尻湖の湾(国際村・琵琶島周辺など)をメインにツアーを開催。ベテランガイドによる丁寧なレクチャーが特徴で、ボードの上での立ち方からパドリングの基本までしっかり学べるため、初めての方の「スクール」としても高定評。
住所:長野県上水内郡信濃町野尻379-2
https://sundayplanning.com/sup/
〈北アルプス・白馬山麓エリア〉
木崎湖 POW WOW キャンプ場&アウトドアクラブ(大町市)
フィールド:木崎湖
キャンプ場に併設されたアクティビティクラブ。木崎湖の美しい水質を活かしたSUPスクールやツアーを実施。キャンプと水上アクティビティを組み合わせて楽しみたい人にも好適。
住所:長野県大町市平海の口19004-1
https://kizakiko-powwow.com/play-water/tentsauna/
シロウマアウトドアカンパニー(大町市・白馬村)
フィールド:木崎湖・青木湖など
インストラクターによる丁寧な初心者レッスンが好評のスクール。透明度の高い北アルプス山麓の湖で、爽快なクルージングを満喫。ドリンクフリーフローのロッジも併設。
住所:長野県大町市平23011-123(LODGE GRAMP 内)
https://www.shiroumaoutdoor-company.com/
〈東信・諏訪・中信エリア〉
1・2・3 アウトドア(小海町)
フィールド:松原湖(八ヶ岳麓)
標高の高い高原に位置する松原湖で、八ヶ岳の爽やかな風を感じながら楽しむSUP体験ツアーを開催。高原の涼やかな空気の中で、プライベート感が高い水上の時間を過ごせる。
住所:長野県南佐久郡小海町豊里4945-1
https://123outdoors.com/
八ヶ岳アドベンチャーツアーズ(茅野市)
フィールド:白樺湖・女神湖
蓼科山の麓に広がる穏やかな湖でSUPクルージングを実施。初心者向けのガイドツアーのほか、ハワイで人気のステップSUPなど、一味違う体験にも注目。企業研修など1グループで最大40 名まで貸し切り対応可能。
住所:長野県茅野市北山3419-75
https://www.yatsugatakeadventure.com/
SOWAKO SUP CLUB(諏訪市)
フィールド:諏訪湖
プロショップ CocoSUP 運営。当日の風向を考慮しエントリー場所を決定するプロフェッショナルならではの質の高い体験を提供。各種ツアー、SUPフィッシング、SUPヨガなど、バラエティに富んだ企画が多い。
窓口(ココパーム諏訪湖本店内):長野県諏訪市沖田町3-68ココモール
https://cocoworld.jp/cocosup/cocosup.php
〈南信エリア〉
ASOBINA(伊那市)
フィールド:中南信のダム湖・レイクエリア
伊那谷の大自然に囲まれたフィールドで、さまざまなアウトドアアクティビティとともにSUPのガイドツアーを展開。南信エリアでウォーターアクティビティを楽しみたい人におすすめ。
住所:長野県伊那市横山9300
https://asobina.jp/
制作エディトリアルワークス
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