『長野新潟ガーデンロード』を巡り、「庭園」の魅力にふれる旅に出かけよう

長野県と新潟県に点在する魅力的なガーデンを結びながら、周囲の景観を楽しみ、食を楽しみ、豊かな時間を満喫してもらおうと企画された「長野新潟ガーデンロード」。歴史ある庭園文化の魅力に迫りながら、長野県から新潟県まで、標高差1,000m以上の旅へ皆さまをご案内します。

6月中旬 ブルーガーデンとバラのトンネル2021 (2)

TOP PHOTO:©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン
 

ガーデンロード位置図データol(文字大)
©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

自然の循環と共にある、庭園が生み出す魅力の数々

「長野新潟ガーデンロード」は、長野県茅野市にある「バラクライングリッシュガーデン」と新潟県見附市にある「みつけイングリッシュガーデン」をつないで国内を縦断する観光ルートです。長野新潟ガーデンロード協議会の会長を務めるケイ山田さんは、国内初の英国庭園「バラクライングリッシュガーデン」のオーナーであり、英国園芸のパイオニア。代表の山田裕人さんと共に、国内外で活躍してきました。

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©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン
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2002年からは「みつけイングリッシュガーデン」を通じて見附市と関わりができ、自身が通う中で感じた「旅をする楽しさ」を多くの人に伝えたいとの思いで、ルートを整備してきたといいます。

「長野新潟ガーデンロード構想は、美術館やワイナリー、酒蔵、宿泊施設など、多くの方に賛同をいただいて実現したものです。庭園の素晴らしさはもちろん、アートや食、道中で見られる日本アルプスの絶景も楽しんでもらえたら嬉しいです」

構想のきっかけになった「みつけイングリッシュガーデン」は、行政と民間、そして市民ボランティアが三位一体となって庭づくりを行う庭園です。工業団地の一角にあった荒れた土地を開墾し、ケイ山田さん指導のもと、交流の拠点として整備されてきました。

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©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

「20年以上の年月をかけ、本当に素敵な英国庭園へと成長しています。今も100人以上のボランティアさんたちが活動しており、多くの方から自分の庭のように愛されているのも特徴です。庭づくりを通じてコミュニティが生まれ、その存在が周囲の魅力アップや防犯、景観維持につながっていく。人が集まることでビジネスの機会が創出されたり、子どもたちの居場所ができたり、まちづくりへの効果も感じています」

近隣の小中学生を対象に開催されている「お花いっぱいコンクール」では、子どもたちが校庭の一角にビオトープを作ったり、「みどりの少年隊」という団体を結成して募金活動を行ったり。それぞれが自主的な力を発揮し合う場としても機能しています。

「イングリッシュガーデンにやってくるのは、単に花が好きな人だけではありません。抱っこされた赤ちゃんから小中学生、車椅子に乗ってやってくるお年寄り、さらに鳥や昆虫や小動物まで、さまざまな生き物が集まってきます。自然の循環のなかで心地よく過ごす文化は、昨今聞かれるSDGsやウェルビーイングにも深く関係していると感じます」

園芸先進国のイギリスでは、19世紀から続くRHS(英国王立園芸協会)が、2021年、組織の核となるウィズリーに新しい庭園をオープンしました。そこではRHSの園芸最高責任者であるティム・アプソン氏を中心に、3つのガーデンサイエンスが提唱されています。ひとつはコミュニティを育み、人々の健康に寄与する「ウェルビーイングな庭」。そして、植物多様性の保護に努め、蜂や蝶などのポリネーターに優しい「ワイルドライフな庭」。最後に、種子の保存をしながら、人々のキッチンとしての役割を果たす「ワールドフードガーデン」です。

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©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

多様な植物があることで、人にも、動物にも、環境にも良い循環が生まれていく。色に溢れる美しいガーデンロードを巡りながら、そうした自然の営みにも目を向けてみると良さそうです。

蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

長野県茅野市、蓼科高原にあるバラクライングリッシュガーデンは、アジア圏で唯一RHSに認められた本格的な英国庭園です。敷地面積は約1ha。設計、石工、ガーデナーなど、庭園に関わる全てにイギリス人の専門家を入れ、一つひとつ手仕事でつくり上げてきました。1990年の開園以来、英国庭園と園芸の魅力を発信し続けています。

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©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン
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©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

出迎えてくれるのはオ-ルドローズやフリチラリアなど、英国庭園を象徴する花々を筆頭に、5,000種類を超える植物のコレクション。ほんの1週間でもガラリと表情を変えるほどの多様さで、花びらや葉の色の組み合わせ、時間によって変わる光の当たり方、景色のなかに計算された木々の奥行きなど、さまざまな楽しみ方ができます。

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©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

6月には、33回目を迎える国際的園芸ショー「バラクラフラワーショー」が企画されており、寄せ植えやガーデンのコンペクション、国内外のトップ講師を招いたセミナーや、クラフトマーケットなどが行われます。6月のバラクラは、ちょうどバラの花が咲く季節。初夏の花々も開きはじめ、いっそうにぎやかな庭園が待っています。

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©蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

併設のカフェレストランやフードコートでは、イギリスで親しまれる伝統のお菓子や料理が食べられます。こだわりは旬の食材を手作りでいただくこと。
こだわりが詰まったスコーンは、しっとり食感でほんのり甘く、しっかりお腹にたまるボリュームが嬉しい一品です。本場イギリスからの観光客にも人気で、全国にファンを持つ自慢のメニュー。アフタヌーンティーセットに入っているほか、フードコートで1つから購入でき、お土産用に包装された商品も揃っています。オレンジオイルの香りが優しく広がる「森のクッキー」や、爽やかなレモンの酸味がクセになる「レモンカード」など、一つひとつの食材を厳選し、素朴で温かみのある味わいが人気です。

Information

住所:長野県茅野市北山栗平5047
TEL:0266-77-2019
開園時間:9:00〜18:00
定休日:無
入園料あり
大人1,000円/中学生以下無料
HP:https://barakura.co.jp/

※開園時間及び入園料は季節によって変動します

Cella MASUMI 松の間

1662年に創業した宮坂醸造株式会社は、「人、自然、時を結ぶ」をブランドメッセージに掲げる酒蔵です。醸造する日本酒「真澄(ますみ)」は国内外で高い評価を受け、長野県を代表する銘柄のひとつとして知られています。

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©宮坂醸造株式会社
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©宮坂醸造株式会社

真澄が大切にしているのは、料理に寄り添い、食べる時間を和やかに彩る食中酒であることです。「Cella MASUMI」は、そうした思いを形にするべく開かれた、テーブルウェアを中心としたセレクトショップ。食器や酒器、地元の和菓子屋さんがつくる「酒まんじゅう」や諏訪湖で採れる「わかさぎの空揚」、江戸時代から伝わる伝統調味料「煎り酒」、自然の優しい甘さが人気の「麹あま酒」など、暮らしを楽しむための品々が並んでいます。

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©宮坂醸造株式会社
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©宮坂醸造株式会社

ガーデンロードに登録されているのは、2023年にリニューアルされた「松の間」と呼ばれる試飲ルーム。樹齢200年を越える黒松を見ながらこだわりの日本酒をいただく、贅沢な空間です。宮坂家の成り立ちを書いた歴史書にも登場する松の木は、木曽の親族宅にあった盆栽を運び、植えられたもの。漆喰壁の白に映える格子と窓枠の黒。真正面に見える松の木は、まるで絵画のように美しい姿です。
新緑の季節はもちろんですが、松の間のおすすめの季節は冬。すっきり晴れた青い空に雪吊りをした雪化粧の松のコントラストは、思わず息をのむ美しさです。

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©宮坂醸造株式会社

また、冬支度がはじまる11月末は、「あらばしり」と呼ばれる新酒が登場する時期でもあります。新酒が完成した知らせとして店頭にかけられる「酒林(杉玉)づくり」は、大鹿村から杉の葉を運び、店頭でお客様と一緒に作り上げる真澄の風物詩のひとつ。自然と共にある酒造りの文化を通じて草木に触れる、そんな特別な体験が待っています。
2024年度には、蔵を改修した新たなスペースのオープンが予定され、今後ますます注目を集めるスポットとなりそうです。

Information

住所:長野県諏訪市元町1-16
TEL:0266-57-0303(セラ真澄直通)
営業時間:10:00~17:00
定休:水曜日および1月1日
【試飲】
料金:500円*ショットグラス付
受付時間:10:00~16:30
※セラ真澄単独での有料試飲は、平日限定
土日・祝日は『諏訪五蔵 酒蔵めぐり』のみの試飲
HP:https://www.cellamasumi.jp/

マンズワイン小諸ワイナリー

「日本のぶどうによる、日本のワイン造り」、栽培適地の選定から醸造技術まで一貫してこだわり、風土にあったワイン造りに取り組むマンズワイン。小諸ワイナリーは、近年ぶどう栽培の適地として注目を集める「千曲川ワインバレー」の先駆け的存在として、1973年に開設されました。

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©マンズワイン小諸ワイナリー

ワイナリーの敷地内にある「品種園」にはさまざまな種類のワイン用ぶどうが植えられ、小諸眺望百景に選ばれた「けやき並木」、美しい紅葉が見られる日本庭園「万酔園(ばんすいえん)」などを持つ、季節の移ろいを肌で感じられるのも魅力のひとつ。ぶどう畑には自由に散策ができる区画があり、木々が一斉に目をさます春には、剪定された枝の先からポタポタと雫が落ちる「ぶどうの涙」が見られたり、花が咲く頃には周囲にほんのり甘い香りが漂ったり。実や葉の色づきや収穫以外にも、ぶどう樹を身近に感じられる環境が揃います。

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©マンズワイン小諸ワイナリー

「万人の人に、庭の美しさとワイナリーから生まれたワインに酔ってもらいたい」との思いから名付けられた「万酔園」は、約10年をかけて造られた本格的な日本庭園です。庭園全体で長野県の風景を表現しており、アルプス山脈や浅間山、千曲川などを模して、木や石、枯山水などが置かれています。

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©マンズワイン小諸ワイナリー

ひときわ目をひく大きな刈り込みは、何種類もの植物で構成され、見るタイミングや場所によって表情を変えるこだわりの庭園。ところどころに映える赤色は、赤ワインがイメージされています。一角には日本屈指の樹齢を誇る「龍眼」というぶどう品種の古樹も植えられており、見応え抜群です。

小諸ワイナリーでは世界的に高い評価を受けるワイン「ソラリスシリーズ」の醸造が行われており、ショップ棟2階の「けやきテラス」では、有料のテイスティングができます。10種類ほどから選べるワインは、1杯400円から。内容は時期によって変わり、来場者の多い時期には特別なワインが登場することもあるそう。ショップでは各種ワインが購入できるほか、店舗限定のバックヴィンテージや人気のワインツール、お土産に人気の干しぶどうなども並びます。

Information

住所:長野県小諸市諸375
TEL:0267-22-6341(ショップ直通)
営業時間:9:30〜16:30
定休:4月~11月 無休/12月~3月 HP参照
HP:https://mannswines.com/winery/komoro/

国営越後丘陵公園

北陸地方唯一の国営公園、越後丘陵公園。遠く八海山、中ノ岳、越後駒ヶ岳の「越後三山」を望む抜群のロケーションに、広大な敷地が広がります。季節ごとにチューリップ、ひまわり、コスモスが咲く「花の丘」や、自生するカタクリの群生地。新潟県の草花に指定される雪割草(ゆきわりそう)は、国際雪割草協会と協同で毎年10月にボランティアを募って植え付けを行うなど、さまざまな植物の栽培や保全に取り組んでいます。

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©国営越後丘陵公園
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©国営越後丘陵公園

四季折々に楽しめる公園内ですが、特におすすめなのは、国内でもめずらしい「ながおか香りのばら園」です。約800品種2,400株のバラが植栽されており、名前の通り香りによって分類される「香りのエリア」では6種類の香りのタイプの違いを楽しめます。5月下旬から6月中旬にかけて開催される「香りのばらまつり」期間中は、栽培教室やガイドツアー、子ども向けの「ばらの教室」などが開催されます。いわゆるバラの香りとして知られるダマスククラシックやモダンをはじめ、ピーチやアプリコットのような甘い香りがする品種、紅茶のような香りがする品種など、個性豊かなバラが勢揃い。バラの香りは揮発性が高いので、より強く違いを感じたいなら開花したての午前中がおすすめで、このエリアだけならば、1時間ほどでゆっくり散策できるくらいの規模感です。

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©国営越後丘陵公園
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©国営越後丘陵公園

散策の途中に立ち寄りたいのが、ばら園内にある「ローズカフェ」。「赤ばらソフト」やローズティなど、バラの香りを堪能できる軽食・喫茶メニューが揃います。人気のフレグランスハンドクリームは、第1回「国際香りのばら新品種コンクール」で1位に選ばれた「フレグランス・ヒル」をもとに作られたオリジナル商品。ほかに、ガーデンフォトグラファーが撮影した写真を使ったクリアファイルやポストカードなど、訪れた記念やお土産にもおすすめの品々が揃っています。

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©国営越後丘陵公園

直近のイベントでは、6月15日に予定される「長岡花火ローズファンタジー」に注目。江戸時代にルーツを持ち、明治時代から続く長岡花火とのコラボレーションで、バラ園のライトアップやスターマインの打ち上げなど、今年で3回目を迎える人気のイベントです。

Information

住所:新潟県長岡市宮本東方町字三ツ又1950番1
TEL:0258-47-8001
定休:4月〜12月HPカレンダーにより
12月26日〜1月1日/1月〜3月の月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
営業時間:
4月~10月 9:30〜17:00/11月〜3月 9:30〜16:30
入園料・駐車料金あり
大人 450円/65才以上 210円/子ども 無料/冬季(12~3月)は入園料無料

みつけイングリッシュガーデン

およそ2.2ヘクタールの敷地に、オールドローズなど伝統品種を揃えた本格的な英国庭園。癒しとやすらぎのあるナチュラルな景観が魅力で、ボーダーガーデンエリアを中心に、春、夏、秋、それぞれの季節を五感で感じ、リラックスできる環境が整っています。

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©見附市

植えられているのは約1,000種、3万本の草花たち。4月の桜にはじまり、春はチューリップやパンジー、ビオラなど。5月下旬から6月中旬にかけてはバラが見頃を迎え、その後もアナベルやユリ、ダリアやバーベナなど季節の花々が園内を彩ります。めずらしい品種やトレンドの品種も積極的に取り入れられており、訪れるたびに新たな発見が楽しめるのも、みつけイングリッシュガーデンの魅力です。

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©見附市

また、5月中旬から6月上旬にかけて開催される「フラワーフェスティバル」と、10月の「オータムフェア」は、県内外から多くの人が足を運ぶ人気のイベントです。花苗や花に関する小物の販売を行う「花マルシェ」や、ガーデンで音楽を楽しむ「気まぐれ演奏会」、ミニブーケなどを作る体験ブースなど内容は盛りだくさん。園内には鯉のいる池や子どもたちが遊べる遊具もあり、写真を撮ったり、ベンチに腰かけてゆっくり過ごしたり、思い思いの時間が過ごせるのも魅力です。

みつけイングリッシュガーデン
©MEGCAFE(FFFFFun株式会社)

隣接するカフェのおすすめは、エディブルフラワーやハーブをトッピングした、目にもおいしい「ティラミスの果実」。イングリッシュガーデンの魅力を考え、「色と緑に関連するメニューを提供したい」との想いで生まれた商品です。マスカルポーネたっぷりのティラミスには、土のリアルな質感を表現するため工夫されたココアパウダーが。植木鉢を模した器に赤ぶどうのアイスが仕込まれ、最後まで華やかに飽きることなく楽しめるこだわりの一品です。

Information

住所:新潟県見附市新幸町35番地
TEL:0258-66-8832(9:00〜16:00)
営業日:4月1日~11月30日
営業時間:8:40~日没まで

※12月~3月は冬期閉園(積雪状況により)
※公園の管理協力金として寄付をお願いしています


訪れる人に癒しや元気を与え、地域のコミュニティの場にもなる「庭園」。19世紀の初めに確立された英国庭園や、風情を楽しむ日本庭園など、世界にはさまざまな庭園があり、それらを巡って楽しむ「ガーデンツーリズム」という文化が育まれてきました。食や体験を交えながら長野と新潟を結ぶガーデンロードでは、今後もさまざまな企画が予定されています。SNSなどで情報を追いながら、気ままなドライブ旅に出掛けてみてはいかがでしょう。


取材・文:間藤まりの

<著者プロフィール>
間藤 まりの(Marino Mato)
1989年生まれ、長野県松本市出身、上田市在住。2016年よりWebメディア編集部に所属して執筆活動を開始後、2017年に独立。取材執筆、インタビュー、本づくり、イベントの企画運営など、幅広く「魅力を伝えること」に携わっています。プライベートは男女2児の母。

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