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ユニバーサルなアクティビティ体験『デュアルスキー』。観光のさらなる可能性を求めて。

障がいのある人も高齢の人も運動が苦手な人もスキーを楽しめる、着座式の「デュアルスキー」。山岳高原観光地ならではの「信州型ユニバーサルツーリズム」の冬のアクティビティの一つとして、県内各地のスキー場で導入が進み広がりをみせています。その背景と実情、想いから「観光」を見つめました。

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©戸隠観光協会

誰もが楽しめる旅行×共に学ぶ教育とは

 

障がいの有無や年齢にかかわらず、誰もが楽しむことができる旅行を目指す「ユニバーサルツーリズム」。長野県と信州大学は、自然豊かな長野県のフィールドを活かした「信州型ユニバーサルツーリズム」を提唱し、その普及を目指して各団体と連携しながら、旅行をサポートする人材の育成や、アウトドア用車椅子といった機器の導入など環境整備に取り組んでいます。

教育現場では、障がいの有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」が潮流となり、野外活動においても環境の整備が必要とされています。信州型ユニバーサルツーリズムは、余暇を楽しむ観光旅行に限らず、修学旅行やスキー教室といった学習旅行も視野に「インクルーシブ野外活動指導員」の養成にも注力し、遊びと学びの両観点からアプローチ。ユニバーサルツーリズムが進む=野外でのインクルーシブ教育の受け皿ができる。信州型ユニバーサルツーリズムを起点に、教育への波及効果、ひいては共生社会を見据えています。

 

戸隠スキー場で行われたデュアルスキー体験会での一枚。風を切る爽快感に笑みがこぼれる©戸隠観光協会

 

皆さん『デュアルスキー』を知っていますか?

 

信州型ユニバーサルツーリズムの冬のアクティビティ・スポーツとして、注目される「デュアルスキー」。デュアルスキーとは、椅子とスキーが一体となった専用機材に乗り、後方でライセンスを持つ「パイロット」が操縦してゲレンデを滑走。機材には、安全ベルトやサスペンションが付いていて、安全性を高め体への負担を軽減します。リフトの乗降りも機材に乗ったままでOK。椅子に座ることができれば、誰でも搭乗可能です。

学習旅行での利用も多い、長野市の戸隠スキー場は、2020年にデュアルスキーを導入。現在、パイロットは2人。信州大学開発のプログラムを修了した「インクルーシブ野外活動上級指導員」も在籍し、個人の状態に合った体験や学習の一助を担います。

 

デュアルスキーの機材には、ジャッキも付いているので乗ったままリフトに搭乗できる©戸隠観光協会

座席シートに安全ベルト、座席とスキーの間にサスペンションが付いている©戸隠観光協会

 

雪上を滑る喜び、風を切るスピードの爽快感

 

初めてのスノーアクティビティ体験。リフトの乗り降りや滑走スピードに恐々とした表情が、帰るころには達成感のある笑顔に。「はじめはできるか分からなかったけど、すごく楽しい!」。デュアルスキー体験者の声を聞いてほほ笑むのは、戸隠観光協会職員の田村達彦さん。自身も車椅子ユーザーで年間を通じて「戸隠ユニバーサルツーリズム」の中核を担います。

田村さんは「障がいのある人が楽しめる選択肢が少ない」中で、多くの家族や友人から「いろんなことを体験してほしい」と、デュアルスキーへのニーズがある一方「雪に触れたりスキーに挑戦する発想に至らない人が多いのが現状」とした上で、スキー教室など、若いうちから野外でのアクティビティを体験して選択肢を持つことを重要視しています。

 

パイロットの操縦のもと、ゲレンデ滑走©戸隠観光協会

 

「行ってみたい」「やってみたい」を一緒に

 

デュアルスキーの他、個々の要望に沿って戸隠を楽しむプログラムを提案します。アウトドア用車椅子のタイヤをソリに装着して、戸隠神社奥社参道周辺のスノートレッキング体験。そしてグリーンシーズンの奥社参道やキャンプ場、牧場などを巡る旅。戸隠観光情報センターでは通年、アウトドア用車椅子などのレンタル品も用意。田村さんは「“行ってみたい”“やってみたい”を一緒に実現したい」と力を込めます。

 

戸隠スキー場デュアルスキー体験会の集合写真。素敵な笑顔。中央が田村さん©戸隠観光協会

 

コロナ禍、目まぐるしく動く社会状況。「選ばれる観光地・選ばれない観光地」。そんな言葉を耳にするようになりました。ある観光事業者は、どんな状況でも「おもてなしの心は変わらない」といいます。真の「おもてなしの心」とは?「観光」って何だっけ……ユニバーサルツーリズムから、教育ひいては共生社会を見据えた取り組み。そして田村さんの言葉に。改めて“観光とは?”を考える機会を得た気がします。

取材・文:松尾奈々子

 

<プロフィール情報>
田村 達彦さん
1973年新潟市生まれ。戸隠に移住後、林業に携わる。2015年不慮の事故で脊髄を損傷し、車椅子ユーザーに。現在は、戸隠観光協会職員で戸隠ユニバーサルツーリズムデスクの事務局を担う。障害のある人や高齢者などとその家族・友人が一緒に自然を楽しむための専門的知識を学ぶ講座の修了生「ユニバーサルフィールド・コンシェルジュ」として、旅行をコーディネート。その傍ら、アウトドア用車椅子の代理店「Nico Mobility(ニコモビリティ)」を運営する。

*戸隠スキー場・デュアルスキー体験
要予約。体重~80キロまで。

☞ご予約はこちら
戸隠スキー学校 TEL:026-254-3141

*車椅子などのレンタル
戸隠ユニバーサルツーリズムデスク(戸隠観光協会事務局内)
TEL:026-254-2888
MAIL:tamura@togakushi-21.jp

☞戸隠ユニバーサルツーリズムについて
https://togakushi-21.jp/universal/

 

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