長野県のローカル線に乗って旅しよう

移動をしつつ、流れゆく車窓の景色も楽しめる電車の旅。
地元の足であるローカル線は、土地の人の暮らしを
身近に感じられるのも魅力です。
のんびりとした旅情が味わえる長野のローカル線の旅はいかが。

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top photo : 独鈷山を背景に走る丸窓のローカル列車 ©︎上田電鉄別所線

長野電鉄長野線|懐かしの電車と北信濃の風景と

2020年で開業100周年を迎えた長野電鉄。長野線は「長野駅」から湯田中渋温泉郷や志賀高原の玄関口「湯田中駅」を結ぶ約33kmの北信州のローカル線で、長野市近郊の人々の通勤・通学を支えつつ、観光路線としても人気を集めています。
長野市街地は地下を走る都市路線ながら、千曲川を越えると北信五岳をはじめとする山々やリンゴ畑などの果樹園が広がり、北信州ならでは車窓風景へと移り変わります。
春は桜や花桃、可憐な果樹の花々が咲き誇り、夏は青空と深い緑、実りの秋は真っ赤に実るリンゴやたわわなブドウ、黄金色に輝く稲穂、そして冬は一面の銀世界。四季折々の美しい風景を眺めながら、電車にゆられるひとときは格別です。

長野電鉄長野線に乗って、のどかな北信濃の風情を眺める旅を (「通勤車両8500系」 ©︎長野電鉄)

秋の彩りに包まれて走る「特急ゆけむり のんびり号」©︎長野電鉄

銀世界を眺めながら、温泉街の入り口「湯田中駅」へアクセスするひとときもドラマチック©︎長野電鉄

実は長野電鉄の全車両は、かつて首都圏で走っていた電車。懐かしい車体が今も現役で活躍する姿にロマンを感じずにはいられません。「特急スノーモンキー号」は成田エクスプレスの先代車両、「特急ゆけむり のんびり号」は元小田急ロマンスカーとあって、往年の名車両が走る姿を見ようと多くの鉄道ファンも訪れています。
のんびり号の最前部と最後部には展望席があり、ダイナミックな風景を楽しめるのも魅力。沿線のワイナリーと協力したワインイベントなどの企画も展開されてきました。
「湯田中駅」には昭和初期に作られた木造の「旧湯田中駅舎」が併設されており、駅前では温泉街の足湯も楽しめます。
懐かしの車両や車内イベント、足湯や四季折々の風景を楽しめる長野電鉄長野線で、ローカルトリップの醍醐味を味わってみては。

「北信濃ワインバレー列車」で、地元の美食とワインを味わいながらの電車旅を ©︎長野電鉄

特急ゆけむり のんびり号」の展望席は、広い窓から迫力の景色を望めます ©︎長野電鉄

渋温泉、志賀高原、地獄谷温泉への入口でもある湯田中温泉駅では足湯も楽しめます

上田電鉄別所線|レトロな駅舎に会いに行く

「上田駅」から長野県最古の温泉ともいわれる「別所温泉駅」までを結ぶローカル線。1921年(大正10年)に開業し、別所温泉エリアへの観光客や地元の通勤・通学の足として親しまれています。
沿線には15の駅舎があり、見どころはずばり駅舎です。ブルーグリーンとベージュのクラシックな洋館スタイルが特徴の「別所温泉駅」や「中塩田駅」。木造下見板張で建物の一部がホームにせり出す珍しい造りの「八木沢駅」は、古くから映画のロケ地などで使われてきた名所。そして、県内屈指の古社である生島足島神社の外壁を模した「下之郷駅」、瓦屋根の木造駅舎「上田原駅」など、趣あるレトロな風情に出合えます。
「別所温泉駅」では、かつて別所線を走っていた丸い窓を持つユニークな車両「丸窓電車」も見ることができます。

かつて別所線を走っていた丸窓電車は、いまも別所線のシンボル ©︎上田電鉄別所線

丸窓電車がある「別所温泉駅」は、ブルーグリーンとベージュの洋館洋式が特徴 ©︎上田電鉄別所線

映画のロケ地として人気のある「八木沢駅」 ©︎上田電鉄別所線

約12kmを30分かけてゆっくりと進む別所線。車窓からは豊かな田園地帯や千曲川、独鈷山のギザギザした稜線など、上田らしさを感じさせる風景が広がります。
さらに、ユニークな取り組みを展開しているのも別所線の魅力です。地元大学生のボランティアガイドによる車内アナウンス、普段見ることのできない5200系車両の撮影会などがあり、別所線の歴史を今に伝える人たちの思いにふれることができます。
なお、2019年の東日本台風で崩落してしまった赤い鉄橋が、2021年の春に再開通。開通当日は多くの人が、千曲川橋梁を電車が渡る姿を写真に収めていました。

独鈷山を背景に、平均時速20数kmで田園のなかを走る別所線 ©︎上田電鉄別所線

上田女子短期大学が企画する「ガイド列車」では、袴姿の学生がガイドを務めます ©︎上田電鉄別所線

日本で初めて車体の外板にステンレス鋼を用いた貴重な5200系。年に数回の撮影会で見ることができます ©︎上田電鉄別所線

アルピコ交通上高地線|上高地の入り口、観光登山鉄道

「松本駅」と「新島々駅(しんしましま・えき)」をつなぐローカル線として、上田電鉄別所線と同じく、1921年(大正10年)に開業。 沿線の通勤・通学と上高地や乗鞍方面への観光、北アルプスへの登山者の拠点として親しまれてきた路線です。駅と駅の間隔が短く、ホームだけの駅もあるなどのんびりした風情が漂います。
線路脇には地元ボランティアが長年手入れをしている花壇も。「渚駅」と「信濃新井駅」の間にかかる奈良井川の細い鉄橋を越え、北アルプスの峰々がどんどんと近づいてくる迫力ある車窓風景も松本平ならではの魅力です。線路の先に見えるのは、日本百名山のひとつ常念岳のほか、爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳など。あまりに美しい山容に、手放しで見惚れることでしょう。

田園風景を抜け、〝北アルプスの女王〟常念岳が迫る絶景が広がる ©︎アルピコ交通上高地線

爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳を背景に走る上高地線の列車 ©︎アルピコ交通上高地線

終点駅の「新島々駅」は、交通安全と自然環境保護のために通年マイカー規制されている上高地への玄関口。併設の新島々バスターミナルは、上高地方面へのバス発着拠点です。
駅前にあるレトロな木造の建物は、ひとつ手前にあった旧島々駅の駅舎を復元したもの。1983年に台風の土砂災害で廃駅になるも、松本市が「旧波田観光案内所」として管理。現在は空き家となっていますが、その佇まいを見ることができます。
特徴的な車両も運行しています。上高地線のイメージキャラクター渕東なぎさの「ラッピング電車(なぎさTRAIN)」が人気を集めるほか〝上高地線の顔〟として長年、親しまれていた「モハ10形」をイメージしたリバイバルカラー車両も走っています。

新島々駅の向かいに建つ旧島々駅の駅舎を再現した旧波田観光案内所 ©︎アルピコ交通上高地線

上高地線のイメージキャラクター渕東なぎさが描かれた「なぎさTRAIN」©︎アルピコ交通上高地線

「モハ10形」のリバイバルカラー編成。オレンジとグレーのツートーンが、空と田園の風景を鮮やかに走ります©︎アルピコ交通上高地線

いかがでしたか。のんびりとした旅情が味わえるローカル線に乗って、長野県を旅してみてはいかがでしょう。

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