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新しいジブン発見旅-櫻井麻美さんのニチコレ(日日是好日)第27話「美しい星空と北欧の世界観を堪能する、ラグジュアリーなグランピングへ 『mökki(モッキ) STARDUST GLAMPING achi village』」

星が美しく見える阿智村で、夜空とともに北欧の世界観に浸る。空を望む大型ドームテントにしつらえた、こだわりのインテリア。豊かな自然の中で、贅沢な休日を過ごそう。

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グランピングへの憧れ、誤解への猛省

ある時から、グランピングという言葉をよく耳にするようになった。“グラマラス”と“キャンピング”を合わせた造語であり、つまるところ、優美なキャンプ。写真などで見るグランピングは、冷暖房完備の快適なテント風建物に、おしゃれで豪華な食事。とても、とても、まばゆい。
いや、キャンプとは、不便さを体験するものなのではないか。万年初心者ではあるが、15年以上、豊かで、時に厳しい自然の中で質素なキャンプをしてきた私は、そう思い込んでいた。だから、グランピングという“キャンプの一種”には、正直に言うと、懐疑的だったのだ。

しかし私は今、猛省している。大いなる誤解を持っていたことに気づいたからだ。

グランピングに抱いていた、なんとも言えぬ気持ち。今思えばそれは、一種の羨みや嫉妬だったのかもしれない。グランピングというスタイルのなんとも楽しそうで、キラキラした様子が、私は羨ましかったのだ。キャンプとはこうあるべき、そういう古臭い感覚に知らずのうちに囚われた結果、本当はグランピングに挑戦してみたいのに一歩踏み出せない自分を、清貧の名のもとに慰めていたように思う。

今回、念願のグランピングデビューをして、私には大きな発見があった。そもそもグランピングを、“キャンプの延長”として考えること自体が、間違いなのかもしれない。グランピングとは、もはや確立された一種の新しい滞在スタイルだ。自然を身近に感じ、触れ合い、堪能する。誰でも気軽にそれらができる、自然体験型ステイなのだ。

自然の豊かさに気づく旅。だから恐らく、キャンパーのような自然に親しみを持つ人にも、楽しめるはずだ。実際に私も、快適な環境で長野の冬の美しさを堪能しながら、チェックアウトぎりぎりまでどっぷりと滞在を楽しんだ。もっと早くこの楽しみを知っていれば…と、今までの自分をぶん殴ってやりたいくらいだ。

環境省による星空継続観察で、最も星が輝いて見えると認定された阿智村。エリア初となる宿泊可能な大型ドームテントが立ち並ぶ、『mökki(モッキ)』でのグランピング体験を、早速振り返ってみよう。

星がテーマのラグジュアリーグランピング『mökki』

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木々に囲まれたドームテントの佇まいも良い

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受付すらおしゃれ。まずはここでチェックインだ

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建物内で、薪ストーブと笑顔のスタッフが迎えてくれる

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こだわりのコーヒーも好きなものを選んで持っていける。豆から挽いて楽しもう

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オリジナルスパイスを作るのも楽しい

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地元農家のこだわりの商品も買える。名産のトウモロコシのフリーズドライがおいしすぎた

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阿智の星空も堪能出来たら、さらに素敵な滞在になるはず(mökki提供)

阿智昼神温泉郷から車で15分ほど山道を走ると、フィンランド語で“小さな家”を意味する『mökki』と書かれた看板と、ウッドデッキが印象的な建物が見えてくる。静かな山々の中に馴染むその佇まいに、自ずと期待値も高まる。まずはここで、チェックインを済まそう。デッキに上がり扉を開けると、薪ストーブの温かさが体を包み、スタッフの皆さんが笑顔で迎え入れてくれた。みな自然体で、話しやすい雰囲気だ。

阿智村は言わずと知れた、星空の聖地である。『mökki』も、ここから眺められる雄大な星をテーマにしたグランピング施設だ。敷地内には、一部が透明になって外の景色が見える大型のドームテントや、季節によりペットも同伴できるコクーンテント、大自然の中で“整い”体験ができるテントサウナなどが並ぶ。全9部屋の各客室には独立したBBQ棟とトイレ・シャワーが完備してあり、周りを気にせずに過ごせるのも魅力的だ。それ以外にも、キャンプファイヤーを囲めるベンチ、ドリンクスタンド、フォトスポット、山に向かって飛んでいきそうなブランコ。楽しみが散りばめられた敷地内は、ぶらぶらと散歩するのも楽しい。

ここは、まちから少し上った山間。木々に囲まれた環境は、日常とは違った時が流れている。客室スペース内や共有通路には、リクライニングチェアが所々に置かれていて、晴れた夜には寝そべりながら満天の星空を眺められる。

「日本一の星空」は、どんなにきれいなのだろう、と期待しながら迎えたこの日。実は長野県全域は、警報級の大雪が予想されるほどの天気だった。結論から言えば、ずっと雨が降っていて、星空は全く見えなかった。でも、だからこそ、じっくりとグランピングステイを楽しむことができたし、その魅力に気づけた滞在だったともいえる(これは決して、強がりではない)。『mökki』の魅力は、星空だけではないのだ。どんな天気だったとしても、私たちを非日常へと連れ出してくれる。だから、星空が見えなくても落胆することはない。

今回の滞在をアレンジしてくれたのは、支配人の園田さんだ。出会って早々に、「こんな天気で、申し訳ないです…」と謝らせてしまったが、彼は一ミリも悪くない。早々に星空は諦めていたし、個人的には雨のアウトドアも好きなので、全く問題はないことを伝える。しとしとと降る雨の中、さっそく客室へ案内していただこう。記念すべきグランピングデビュー(しかも、ソログランピングだ!)に、胸が高鳴る。

北欧の世界観にどっぷり浸る、没入感

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扉を開けた瞬間に気分が盛り上がる客室

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どこからみてもかわいい部屋で、写真を撮りまくる

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ひとつひとつのインテリアが見事に調和している

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細部まで計算された部屋に、ただため息

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望遠鏡やプラネタリウムも備え付けてある。フロントでゲームを借りることも

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BBQ棟はひろびろとして、海外製の大型グリルが完備

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無垢材の壁と柔らかい光が心地よい。さらにトイレや洗面所も完備なのがとてもうれしい

今回宿泊するのは、一番ランクが高いラグジュアリードーム。客室にはそれぞれ星の名前が付けられていて、私の部屋は夏の大三角のひとつでもある、白鳥座の一等星、“デネブ”。こういう細やかな設定が、心をくすぐる。園田さんに案内され、ドーム状の客室の扉が開いた瞬間、一気に気分が盛り上がる。まるで映画から抜け出してきたような部屋が、目の前に現れたからだ。

ドームの半球状の部屋の壁は、ピンクベージュのふかふかしたキルティング。カーテンがブラウンなので、甘すぎないナチュラルなテイストだ。ニットカバーで覆われたベッドが二つあり、その上にはセンスの良いふかふかのクッションが置かれている。外を望む低めのソファと、オットマン付きのリクライニングチェアは、サイズ感がちょうどよく体を包み込んでくれそうだ。床には幾何学模様のシンプルなラグマット、ローテーブルと丸っこいニットプフ。無垢材の床も相まって、床に座ってくつろぎたくなる。

『mökki』のこだわりは、この北欧の世界観。インテリアの選択やカラーリング、建物内の木の温もりは、おしゃれでかわいいのに、ほどよい抜け感があって、リラックスした気持ちになる。隙のないデザイナーズハウスというよりも、憧れの友だちの部屋にお邪魔しに来たようだ。なんだか、ホッとする。目の前には豊かな自然の風景。周りに民家がなく、隣の客室とも十分なスペースがあるから、景色を独り占めできる。なんて贅沢なのだろう。

追い打ちをかけるように、園田さんは隣のBBQ棟を開ける。広々とした部屋には、テーブルセットと大きなBBQグリル。ウッドデッキにつながる窓に目を移せば、空を眺められるゆったりサイズのジャグジーバス。洗面所も広くて最新で、窓から外が見える屋内の風呂まで完備してある。紛れもない。ラグジュアリーだ。

「夕飯のお時間になったら、お食事をお運びしますね。」と園田さんは行ってしまった。私はグランピングの底力に圧倒されながら、ふらりと部屋のソファに体を沈める。こんなに優雅な部屋なのか。想像以上だ。
ぼんやりと外を眺める。晴れてはいないが、静寂の中に響く雨がテントにあたる音が心地よい。そして、改めて空の広さに気づく。通常の宿泊スタイルとは違い、外と中の区切りが曖昧だからこそ、空との距離がとても近い。この自然に抱かれるような感覚は、グランピングならではだろう。

部屋を行ったり来たりしながら、写真を撮ったり、椅子に座ったり立ったりを繰り返しながら、部屋を堪能する。そんな調子でしばらく遊んでいたら、ドアをノックする音がした。あっという間に時間が経っていたようだ。お待ちかねの夕食、BBQ棟へ会場を移そう。

地元食材をふんだんに使った、本格グリルBBQ

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メインの国産和牛サーロインステーキ。ボリューム満点!

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魚介系もたっぷり。アルプスサーモンがお気に入り

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地元産の豆腐のカプレーゼ。地域の豊かな恵みを頂こう

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デザートまで、完璧だ。スキレットでスモアを焼く

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ずらりと並んだ料理たちは、圧巻!

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やっぱり焚火は外せない。プライベートスペースにある焚火台でのんびり

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共有通路では大きなキャンプファイヤーも。気軽に焚火を楽しめるのが良い

数人がかりで持ってきたのは、色とりどりの食材たち。ひとつひとつ机に並べたら、ビュッフェ会場さながらだ。ボリューム満点の和牛のステーキ、信州福味鳥の串焼きなどの肉料理のみならず、アルプスサーモンに大粒ホタテ、エビの串焼きなど海鮮も充実しているのがうれしい。地元産の豆腐を使った前菜や、野菜もたっぷり。きっと、どんな人にも楽しめる。さらに、敷地内のドリンクカウンターでは、アルコールを含む飲み物が飲み放題なのだ。すごすぎる。

BBQグリルは、海外製の本格派で、一度に食材がたくさん焼ける。しかし、今回はひとり。何から焼き始めようか、じっくり吟味してからグリルへと向き合う。ひとりでBBQをする、というと、もしかしたら寂しそうに聞こえるかもしれない。(私も今回、人生初のソロBBQがどんなものになるのか、密かに注目していた。)でも、それが、思いの外とても良かった。誰かのために焼かなくていいし、好きなタイミングで好きなものを食べられる。すごく自由だ。ここのBBQ棟は客室ごとに独立しているから、それも相まって解放的な気持ちで堪能できる。ソロBBQ、いいじゃないか。声を大にしておすすめしたい。

と、このようなレアケースのみならず、カップルや家族など、大自然のもと、周りを気にせずに、みんなでわいわいしながらおいしいものをつまめるのは、やっぱりBBQの醍醐味だろう。しかも、面倒くさい後片付けもしなくていい。最高だ。
空も暗くなり、場内の明かりがぽつぽつと灯った。宿泊している人たちそれぞれが楽しい時を過ごしているのだろう。そう思うと、心が温かくなる。

スキレットで焼くデザートのスモアタルトを食べ終わり、温かい飲み物を片手に窓を開ける。雨が少し弱まっているようだ。今がチャンスと、備え付けの薪を片手に外へと出た。客室のプライベートスペース内には、焚火ができるエリアがあるのだ。
焚火台の中に木を組み上げ、火をつける。小さかった火種がだんだんと大きくなり、オレンジ色の火の明かりとともに、その温かさが体を包む。飲み物を片手に、焚火を眺める夜。濃紺の空へ、煙が上がっていく。

あの雲の上には、きっと無数の星が瞬いているのだろう。見えなくても、空に近いここにいるだけで、その存在を感じることができる。この雨も含め、雄大な自然をまるごと体験しているのだ。そう思うと、身勝手な理由で自然に多くを期待しすぎている自分が、少し恥ずかしくなった。
パチパチと薪が爆ぜる音。火は徐々に弱まり、最後には焦げて小さくなった薪が、キラキラとゆらめきながら光った。弱まっていた雨は、焚火が終わるころになるとまた強く降り注いだ。気持ちが良い。今日は、良い夜だ。

焚火を眺めた後の、高揚したような、落ち着いたような、あの独特のどっちつかずの心持ちでドームテントへと戻り、ベッドに寝転がる。火を眺めていた目の奥は、じんわりとあたたかい。電気を消すと、外の光が部屋を照らし出した。そういえば園田さんが、雨の日は室内プラネタリウムもおすすめだと言っていたっけ。早速、部屋に備え付けてある機械のスイッチを入れる。すると、天井には一面の星空が広がった。

プラネタリウムは、なぜこんなにも、睡魔を誘うのだろう。しばらく天井を眺めた後、重くなってきた瞼を閉じた。降りしきる雨空の下、ふかふかのベッドで寝る。いつか見た絵本の世界みたいで、なんだかうれしかった。

冬はつとめて、グランピングも朝が良い

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目が覚めると、明るい光がドームテントに絶え間なく滴る水玉を照らしていた。外に出ると遠くの方に、霧の合間から少しだけ青みがかった稜線が見える。幻想的な景色と、ピリッと肌を刺す冬の空気。冬はやっぱり、早い朝が美しい。静かな気持ちでお湯をコップに注ぎ、息を吹きかけながら少しずつ飲む。

旅先での気持ちが盛り上がる夜も良いが、私はやっぱり朝が好きだ。少し早く起きて、ゆったりと過ごす時間は、何にも代えがたい。BBQ棟のグリルで、ホットサンドを焼く。ひとり気ままに朝食をとりながら、部屋の窓から景色を眺める。雲が動いていく様子は、いくら見ていても飽きない。じっくりと時間をかけて、食後のホットティーを飲めば、すっかり体が目覚めたようだ。

『mökki』が大切にしているのは、「世界観」と「体験」だという。グランピングならではの気軽にできる自然体験から、私たちはその豊かさや美しさを知ることができる。選ばれたものだけができるストイックな世界とは違い、老若男女を問わずに享受できることには、大きな価値があるはずだ。
また、それをさらに後押しするのが、この世界観だ。山の中にひっそりとある村のような、日常から隔てられた空間が醸し出す空気。心地よく過ごすための、インテリアや設備、そしてスタッフによる細やかなホスピタリティ。そういったところから、共に過ごす人や、自分自身との語らいが生まれ、それがまた体験を深めていくのだろう。

ドームテントに戻ると、インテリアたちは雨の日の朝の、少しアンニュイな雰囲気にとても調和していることに気づいた。こういう日は、のんびりと部屋で過ごすんだ。そう語りかけてくるようだった。北欧での厳しい冬、室内での快適な生活を送るために洗練されていったインテリアたち。その佇まいが、私を誘う。

持ってきた本をカバンから引っ張り出し、ベッドに体を収める。半分起き上がりながら、広げたページへと目を移す。体にも、心にも、ゆとりあるこのひととき。たまに目を閉じて、その贅沢さをかみしめる。今回の滞在を通して、グランピングというスタイルに、私はすっかりと魅了されてしまったようだ。

ふと目を上げれば、インテリアたちと、外の景色が見渡せる。ドームテントについた雨粒が、不規則に滴り落ちる。その様子が自然と、心を落ち着けてくれた。そうだった、このあとは、家に帰るのだった。そんなことも忘れるくらい、まるで自分の部屋のように、チェックアウトまでの時間をすっかりくつろいで過ごすのだった。


取材・撮影・文:櫻井 麻美


『mökki(モッキ) STARDUST GLAMPING achi village』
https://www.naganoachimura-glamping.com/

<著者プロフィール>
櫻井 麻美(Asami Sakurai)
ライター、ヨガ講師、たまにイラストレーター
世界一周したのちに日本各地の農家を渡り歩いた経験から、旅をするように人生を生きることをめざす。2019年に東京から長野に移住。「あそび」と「しごと」をまぜ合わせながら、日々を過ごす。
https://www.instagram.com/tariru_yoga/

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