With コロナ時代の旅
旅行者が気を付けるべき感染症対策のポイント

心も体もリフレッシュすることができる旅行。Withコロナの時代、楽しむだけでなく安全・安心して旅行をするために、旅行者自らが積極的に感染症対策を講じることが大切です。信州大学医学部附属病院・感染制御室の金井信一郎先生に、旅行者が気を付けるべき点を“旅マエ”“旅ナカ”“旅アト”に分けて教えていただきました。

人との距離・マスクの着用・手洗い
感染防止の3つの基本をおさらい

編集部
安全に楽しんで旅をするには、私たち旅行者自らも対策を万全にする必要があると感じています。本日はよろしくお願いいたします。

金井先生
おっしゃる通り、感染防止には事業者と旅行者の双方の取り組みと意識が大切です。これから旅行に行く人の参考になればうれしいです。

編集部
まず初めに、感染症対策の基本を今一度教えてください。

金井先生
新型コロナウイルスの対策として、まず3つの基本が挙げられます。人との距離、マスクの着用、手洗いは、旅行に限らず日常生活でも重要な感染防止策です。
さらに、いわゆる3密(密閉空間、密集場所、密接場面)の状態は感染リスクが高くなるため、「密」を避ける行動も引き続き意識していくことが大切です。

感染防止の3つの基本

人と人との距離をあける・できるだけ2m(最低1m)あける
・真正面を避けておしゃべりをする
マスク着用と咳エチケット・人混みではマスク着用と咳エチケットの徹底を
・周りに人がいたらマスクを着用
手洗い・手指消毒・手洗いは30秒かけて、ハンドソープと水で丁寧に洗う
・消毒用アルコールの利用も効果的
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※参考:「信州版 新たな旅のすゝめ」

旅マエ(=旅行前)の注意点
自分の行動を記録し、体調に異変がある時は中止する

編集部
3つの基本をおさらいしたところで、まず“旅マエ”の対策ポイントはどんなことでしょうか?

金井先生
よく言われていることではありますが、まずは旅行前の最大2週間は自分の体温や行動をメモしておきましょう。

編集部
感染症対策として“2週間”という期間がポイントだと思いますが、そもそもなぜ“2週間”なのでしょうか?

金井先生
新型コロナウイルスの潜伏期間がおおよそ2週間までと言われていることが理由です。旅マエの2週間は感染予防をより一層徹底し、安心して旅に行けるよう準備することが大切です。

編集部
自分の行動はどのくらい詳細にメモしておいた方がいいのでしょうか?

金井先生
普段の生活と違う行動をした、普段行かないような場所に行った場合はメモをとっておくのがベストです。例えば、会食などが当てはまります。

編集部
旅行出発日の体調確認は言うまでもないですよね。

金井先生
もちろんです。家を出る前に検温をして体調チェックをしましょう。少しでも異常がある場合は旅行を中止しましょう。熱がなく「喉が少し痛いな」「咳が少し出るな」程度でも出かけるのはやめましょう。残念ではありますが、中止する・予定を変更する勇気も大切です。

旅ナカ(=旅行中)の注意点
手をきれいにする、顔をさわらない

編集部
旅ナカでの具体的な対策はどうでしょうか?

金井先生
“常に手を綺麗にしておく”これが基本中の基本になります。手に着いたウイルスは口や目、鼻から侵入します。不特定多数の人が触る、ドアノブなどにふれた場合は手洗いや手指消毒を徹底しましょう。手にウイルスが付いただけでは感染しません。ウイルスの侵入口となるのは口や目、鼻。つまり顔を汚い手で触れなければ良いのです。無意識に触ってしまうこともあるので、手洗いや消毒をしてこまめに手をきれいにしましょう。

編集部
施設の入口にはほとんど消毒液が設置してありますよね。入る時に必ず利用することが大切ですね。

金井先生
そうですね。ところで入口に設置してある消毒液ですが、施設から出るときはどうしていますか?

編集部
出るときですか。そういえば何もしていないことが多いです。入る時に必ずしているので……。

金井先生
そうですよね。ほとんどの方は入る時に消毒していますが、出るときはそのまま出て行ってしまう方が多いです。ところが施設を出る際にも消毒は必須ですよ。
施設に入る時にする消毒は、自分の手についているウイルスを除去する意味があります。つまり、自分についているウイルスによって他の人を感染させないようにするということです。
一方、施設を出る際にする消毒は施設内で自分の手に付いたウイルスを除去する意味があります。自分が感染しないために行う消毒です。
入る時にする消毒、出る時にする消毒、行為は同じでも意味合いが違います。

編集部
なるほど。確かにそうですよね。例えばお土産選びの時も手に取って見たり、色々なところを触っていますよね。

金井先生
そうです。お土産選びの際も物に触るのはなるべく最小限にする意識も大切ですね。携帯用の消毒液をポケットに入れておくと良いですよ。
編集部
旅ナカでも自分の行動をメモしておいた方が良いですよね。

金井先生
旅行中は写真も撮るので“どこへ行った”ということは皆さん覚えているのですが、場所と併せて、“その場所に何時頃から何時頃までいたか”ということも是非記録しておいてください。万が一の際、時間がある程度分かれば濃厚接触者の後追い等がしやすくなります。

編集部
旅行先で最も気を付けた方が良い行動はありますか?

金井先生
いわゆる“3密”状態の場所を避けるということは基本中の基本ですが、マスクを外さざるを得ない食事中は最も感染リスクが高いといえます。新型コロナウイルス感染の原因の多くは飛沫感染です。旅行という楽しいイベントで忘れがちになってしまいますが、座席は対角線上に座る、大きな声でおしゃべりはしない、マスクを外している時間をなるべく短くするなど一人一人の意識が大切でしょう。
これからの旅行でスキーやスノーボードを楽しむ方も多いと思います。スキーやスノーボードは屋外で行うものなのでコロナ禍でも比較的安心して楽しめるコンテンツといえます。ただし、食事の際には同様に注意してください。ゲレンデのレストラン等を利用する場合は混雑した時間を避けるなどの工夫も良いと思います。

編集部
旅先への移動時の注意点はありますか?

金井先生
電車や新幹線、バスなどは換気に優れています。新幹線の座席は対面にせず、マスクと手指消毒を心がけていれば公共交通機関はほぼ問題ないでしょう。気を付けたいのがマイカーでの移動です。密閉空間になりやすいので、体調が悪い時は同乗しない・体調が悪い人を同乗させないことが重要です。

編集部
旅先で万が一、調子が悪くなったらどうすれば良いでしょうか?

金井先生
旅行中、少しでも体調が優れない場合は、予定を早めて宿に戻ることや旅行自体を中止することを検討しましょう。症状で不安な点がある場合は、滞在先の市町村を管轄する「受診・相談センター(保健所)」などにまずは電話で相談してください。

▶受診・相談センター一覧はこちら

旅アト(=旅行後)の注意点
健康チェックは引き続き継続しよう

編集部
旅行から帰ってきた後のポイントはありますか?

金井先生
健康チェックは引き続き継続しましょう。旅行に限ったことではありませんが、普段から自分の体調や体温を把握しておくことは大切です。また、特に旅行先が感染の流行地だった場合は旅アトの行動歴も念のためにメモしておいた方が安心です。もしかすると旅先で自分が感染しており、帰ってきた後に感染が判明するかもしれませんので。

編集部
各地の観光施設や飲食店などは一生懸命対策を講じていると思います。私たち旅行者も事業者の取り組みに協力する姿勢が大切ですね。

金井先生
その通りです。旅行者も受け身にならず、自ら積極的に対策を講じていくことがとても大切です。基本的な対策やマナーを守れば、過度に恐れる必要もありません。安全・安心に旅を楽しみましょう。

まとめ

・感染防止の3つの基本を徹底しよう
・体調管理をしっかりと。不安がある場合は旅行を中止する勇気も大切
・旅行中の行動歴は場所+時間をセットに記録
・食事中は高リスク。おしゃべりはほどほどに
・事業者の感染症対策に協力し、旅行者自ら積極的に対策を
・長野県が作成する「信州版 新たな旅のすゝめ」をよく読んで旅行をしよう

お話を聞いた人

金井信一郎(かない・しんいちろう)氏

信州大学医学部附属病院感染制御室副室長。信州大学医学部卒業後、信州大学医学部附属病院臨床検査部を経て、現職。長野県の新型コロナウイルス感染症専門家懇談会の構成員やクラスター対策班統括アドバイザーなどを務める。「信州より感染症からみんなを守りたい」をモットーに、大学病院の感染症専門医として感染症診療、感染症対策のコンサルテーション、職員の教育・啓発などに力を注ぐ。感染症対策関連の著書多数。