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コロナ禍で探る『中央アルプス国定公園』の未来
地域住民と参加したモニターで見えたもの

取材日:2020/07/03

復旧工事による約5カ月間の長期運休から営業を再開した『中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ』。晴れの門出を待っていたのは、新型コロナウィルスのパンデミックでした。日本を代表する観光地のウィズコロナ時代に対応した新たな取り組み。地域住民が参画する観光地域づくりの現場を紹介します。

2020年7月3日午前9時30分。千畳敷カールを目指す『中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ』の玄関口、菅の台バスセンター前。伊南DMO設立準備会(アルプスの里みなこい観光局)と当ロープウェイを運行する中央アルプス観光株式会社が立案した新型コロナウィルス感染症対策モニターが開催されました。駒ヶ根市と周辺町村(飯島町、中川村、宮田村)から参加した住民皆さまの真剣なまなざし。地域と共に考える感染症対策の始まりです。
今回のモニターでは、事前に参加者が専用ホームページで予約を行い、バス・ロープウェイは予約便による貸切で運行されました。感染症対策を取り入れた混雑解消の運行調査が狙いです。

ミーティングを終え、ロープウェイ乗り場行きバスへ乗車。人数制限された車内はかなりゆとりがあり、乗降口には消毒液も設置されています。車内からの景色を楽しみながらバスに揺られること約30分。バスはロープウェイ乗り場・しらび平駅に到着します。

ロープウェイの出発時間に合わせてバスが到着。今回のモニターでは予約便のため、混雑時に乗車待ちする利用者の横を通り抜けてロープウェイに乗り込むことができます。感染症対策の動画を視聴しながら待ち時間なく乗車します。通路にはマーカーが記載されており、混雑時でもソーシャルディスタンスを保つ工夫が施されていました。

定員60名のところ最大乗車人数が制限されたゴンドラ内は換気され、荷物を背負った状態でも人の邪魔にならない十分な空間があり、窓の外に広がる絶景をどこからでも楽しむことができました。当日は残念ながら曇り時々雨の天候。それでも雲海を抜けると後方窓の正面に富士山が顔をのぞかせてくれました。

約8分で標高2,612m山頂駅に到着。ロープウェイを降りると気温は12℃、湿度31%とすがすがしい風が迎えてくれました。外に出るとそびえ立つ宝剣岳の絶景と目の前に広がる千畳敷カールの大空間がありました。帰りの乗車時間まで1時間20分ほど、参加者は散策に出かけたり写真を撮ったりと自由に時間を楽しみました。

ロープウェイを降りしらび平駅に到着すると、待っていたのは帰りのバス。ここでも待ち時間なく乗車できすぐに出発となりました。ロープウェイ同様、混雑時も乗車待ちの列を通り抜けて乗車できるため、“密”を避け時間も有効活用できる利用者にとっては魅力的なサービスでした。

参加者に話を伺うと、「都内で働く娘が帰省したら連れて行きたいと思い下見にきました。参考になりました」(駒ヶ根市50代女性)。
「大好きで何度も来ていますが、友人に紹介したいので状況を確認しにきました」(宮田村50代女性)。
「以前から子どもにこの風景を見せてやりたいと思っていました。感染症対策を知ると安心できると考え参加を決めました」(駒ヶ根市40代家族)。
感染症対策の実施内容を体験し、身近にある観光スポットをよく知りたい、そして誰かに伝えたいという“思い”が生まれました。

地域住民を対象としたモニターの企画を担当した、一般社団法人駒ヶ根観光協会観光地域づくり事業部長の奈良成章さんと中央アルプス観光株式会社取締役営業本部長の下総浩嗣さんにお話を伺いました。

一般社団法人駒ヶ根観光協会 観光地域づくり事業部長/伊南DMO設立準備会(アルプスの里みなこい観光局)事務局 奈良成章(なら・しげあき)氏 ※撮影のためマスクは外しております。

企画の背景とねらいを教えていただけますか 伊南(駒ヶ根市、飯島町、中川村、宮田村)を中心とするDMO設立準備会(アルプスの里みなこい観光局)において、中央アルプス国定公園がこの地域のもっとも大きな宝でプロモーションの主軸としていこうという合意形成ができました。しかし地域の人があまり登っていないという現状が浮き彫りになり、地域の宝に誇りをもってもらうことが重要と考えました。また同時にコロナ禍において、地域住民が観光客に抱く恐怖心を払拭したいという狙いもあり、地域住民を対象としたモニターを中央アルプス観光株式会社と企画させていただきました。


中央アルプス観光株式会社 取締役 営業本部長/伊南DMO設立準備会(アルプスの里みなこい観光局)情報発信部会長 下総浩嗣(しもふさ・ひろつぐ)氏  ※撮影のためマスクは外しております。

地域の人はなぜあまり登らないのでしょうか 連休などに年数回発生するオーバーツーリズムの光景を目にしているからではないかと推測しています。利用するのに2、3時間待ちというイメージをもっていらっしゃる方もおられ、敬遠されているのだと思います。平日の利用状況や今回の企画のような予約制の仕組みを体感していただき、この風評被害を払拭したいという狙いもあります。


モニター実施において気をつけた点や課題を教えてください お並びいただくお客さまとのすみ分けに気を使いました。朝早くから来られたお客さまもいらっしゃる中で、予約便にご乗車いただくお客さまを優先させる事にご理解をいただけるよう、最新の注意を払いました。案内板の設置や場内アナウンスを通常より多くして対応しました。実用化に向けては、この課題があると考えています。今回のモニターを通じて解決方法を見つけることができればと期待しています。


観光地域づくりの観点からはいかがでしょう 予約便が実現すれば、地元で滞在する時間が今より延びることが期待できます。このロープウェイにいらっしゃったお客さまをいかに地域で周遊してもらうかが大きなミッションと考えています。体験型旅行商品などを造成し、中央アルプス観光株式会社とさらに連携を強化して、ロープウェイ基点の“みなこい”の魅力をさらに広げていきたいと考えています。


2020年3月27日、国定公園として認定された中央アルプス国定公園。そのシンボル的な役割を果たしてきた『中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ』。その魅力は、通年運行され、登山を経験したことのない方でも、標高2600m付近での四季折々の自然を気軽に楽しめることです。春から秋にかけては、多種多様な高山植物が咲き誇り天空の花園が楽しめます。秋には紅葉、そして冬には樹氷など自然の芸術や満点の星空を眺めることもできる絶景スポットです。

(写真提供:一般社団法人駒ヶ根観光協会)
(写真提供:一般社団法人駒ヶ根観光協会)

また、標高にまつわる数々の日本一があります(標高2,612m周辺)。日本一標高の高い駅=千畳敷駅、日本一標高の高いホテル=ホテル千畳敷、日本一標高の高いスキー場=千畳敷スキー場など。さらに*日本一(富士山)と、二(北岳)と、三(間ノ岳)が同時に見ることが可能な場所でもあり、宇宙に一番近い星空鑑賞会が開催されるなど話題満載です。

*「中央アルプス駒ケ岳ロープウェイホームページより引用」
(写真提供:一般社団法人駒ヶ根観光協会)

年間約20万人が訪れる『中央アルプス駒ケ岳ロープウェイ』。地域が通過点となるのではなく、地域全体がディスティネーション(旅行目的地)となる取り組みが今まさに動き始めていました。そのきっかけは、かつて体験したことがないコロナ対策でした。コロナ禍は私たちの暮らしとつながりのある観光という世界にもさまざまな問いかけをしているのかもしれません。


一般社団法人駒ヶ根観光協会
住所:長野県駒ヶ根市赤穂759-447 駒ヶ根ファームス内
電話:0265-81-7700
http://www.kankou-komagane.com


中央アルプス観光株式会社
住所:長野県駒ヶ根市赤穂759-489
電話番号:0265-83-3107
https://www.chuo-alps.com

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