Model
05

キャンパーと地域を守るのは『フィジカルディスタンス』と*『DX:デジタルトランスフォーメーション』
コロナ対策から見えてきた新たなキャンプの“かたち“とは

*DX:デジタルトランスフォーメーション=情報通信技術(ICT)の浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること「出典:総務省ホームページ」

取材日:2020/6/19

ウィズコロナ時代のキャンプ場運営を見据え、2020年6月1日営業を再開した『やすらぎの森オートキャンプ場』。キャンパーの不安と地域の不安を解消する仕組みを取り入れたキャンプ場運営から見えてきた、キャンプの未来形。

梅雨の中休み、雨上がりのキャンプ場は眩い緑と爽やかな風が迎えてくれました。ここは長野県信濃町にある『やすらぎの森オートキャンプ場』。妙高山や黒姫山を前に広大なキャンプエリアが広がる開放感抜群のキャンプ場。敷地内には法人向け貸し切り型リモートオフィス施設『信濃町ノマドワークセンター』が併設されており、Wi-Fi環境も抜群で、このとおりキャンプをしながらリモートワークも可能なキャンプ場です。

2020年6月1日、新たなキャンプ運営をスタートしたこのキャンプ場には受付がありません。通常、キャンプ場では到着後受付でチェックインを行い、支払いや利用にあたっての諸注意などの説明を受けますが、このキャンプ場ではファストチェックインシステムを導入しており、キャンパーは到着後すぐにキャンプを始められます。

これらの画期的な取り組みを確実に機能させるために、キャンパーは予約から支払い、施設利用規約の承諾など必要手続き全てをオンラインで完結するのです。

キャンプ場到着後、事前にキャンパーに送信された『QRコード』を確認するため、スタッフがテント付近に立ち寄りますが、特別な事由が発生しない限り、このあとスタッフと接触する機会はほとんどありません。キャンパーは自分のキャンプエリアでプライベート空間と自分の時間を心ゆくまで楽しむことができます。

キャンプ場周辺に住む地域住民との接触機会も可能な限り減らそうというのが、このキャンプ場のもう一つの取り組みです。食材の買い出しなどは、キャンパーが居住地で事前に購入したものを持参し、キャンプ場周辺のスーパーやコンビニでの買い物は控える協力を依頼しています。キャンプ場と地域住民の生活圏を切り分ける事により、地域への感染拡大防止に取り組み、地域住民の不安を軽減することが目的です。“人と人との接触機会を極限まで抑えること”で感染リスクを減らすという仕組みが、このキャンプ場の新たな運営スタイルとなっていました。

『フィジカルディスタンス』を取り入れたキャンプ場運営はどのような背景から生まれたのか。そしてこれから先どこへ向かって行くのか。キャンプ場の指定管理者として運営にあたっている『NPO法人Nature Service 』の信濃BASEエリアマネージャー月岡勇気さんにお話しを伺いました。

“『フィジカルディスタンス』を運営方針に取り入れた背景を教えてください” 感染拡大は地域医療の観点からも大きなリスクですし、スタッフもこの町在住ですので、ゴールデンウィークの営業は躊躇なく営業を停止しました。営業再開に向けて、人と人との接触が多い施設で今後どう営業するかという観点から、まずはお客さまとスタッフの接点を減らし、さらに地域住民への感染拡大防止のため、お客さまと地域住民の生活圏の切り分けが重要と考えました。


“その一つがファストチェックインシステムということですね” はい。当キャンプ場はお客さまアンケートで受付での対応やスタッフについて高い評価をいただいておりましたが、説明が丁寧すぎて、特に繁忙期には受付周辺で30分以上お待ち頂く事がありました。その解決策としてリピーターのお客さまに向けて『ファストチェックイン』という制度を昨年から導入していました。その仕組みを応用して、全てのお客さまに対して最短10秒でチェックインができるファストチェックインをご提供しています。


“コロナ禍に対応してシステムを新たに構築したのではないのですね” ITシステムは既に受け入れ側の準備はあったので、お客さま側の受け入れる環境が整ったという言い方があっているかもしれません。従来の考え方ではオンラインで全てが非接触で処理されると、人が対応するサービス感が薄れ、いわゆる“おもてなし”が足りないという風潮がありましたが、コロナ禍でお客さまの接触リスクを回避する意識が高まり、さまざまな部分をデジタル化させる「DX:デジタルトランスフォーメーション」が実現されました。


“なるほど、キャンプ場ではかなりハイテクな仕組みですね”  われわれの母体企業は、デジタルマーケティングやシステム開発を得意としており、キャンプ場経営においてもそのノウハウが生かされています。われわれが開発した『Nature Platform』では、さまざまなクラウドサービスがマッシュアップされており、予約から決済、メールの既読状況などが分かり、お客さま一人一人にカスタマイズされた情報提供が可能となっています。またキャンプ場利用者の地域経済波及効果なども可視化でき、信濃町役場ともデータがリアルタイムに共有される仕組みを構築しています。


“地域の反応はいかがですか” 『ソーシャルディスタンス』という社会的分断ではなく、『フィジカルディスタンス』として物理的な距離を保ち、地域住民の生活圏と観光客の行動範囲を分ける方針を強く発信していることに大きな評価を得ています。今は感染を拡大させないキャンプ場運営が重要で、状況を見ながら地域経済への波及効果が得られるような取り組みを行いたいと考えています。


“これからのキャンプ場運営の展望をお聞かせください” お客さまとデジタルの関係を最適化して満足度をあげられるキャンプ場にしたいですね。デジタル一辺倒では、経営効率は良くなってもお客様からは冷たい印象を持たれてしまいます。例えば、受付はデジタル化されても、周辺をそっと見守っているスタッフの存在は、お客さまにとって大きな満足度になります。デジタルとアナログの融合というか、デジタルに偏り過ぎずアナログの要素を加えた心地よいバランスがキャンプ場運営には必要かと思います。デジタルの利点を最大限引き出して、公共のキャンプ場経営をサポートし、質の高いキャンプ場を全国で増やしていきたいです。


県境をまたいだ移動が解除されたこの日、ソロキャンプをしながら取材を行いました。大自然の懐深く抱かれる当地ならではの環境を求めて、県内や首都圏からキャンパーが訪れていました。

近くにいたキャンパーにここを選んだ理由を聞いてみると、「*フルフックアップサイトでこの景色が楽しめるロケーションに惹かれ、何度も来ています。今日から2泊ここから動かず滞在する予定です」(50代夫婦 神奈川県)。「混み合わない環境と開放的な空間で、子供の行動が見渡せるのでよく利用します。スタッフもそっと見守ってくれていて安心感があります。」(30代家族 長野県) 守られた開放的な空間で自分たちの時間をゆっくり楽しむ、“心のゆとり”。その背景には、施設側と利用者の信頼関係があり、施設は取り組むべき事をしっかり行い、キャンパーはそのルールを守る。そこには「キャンプを心から楽しみたい」という共通言語が存在していました。『フィジカルディスタンス』を取り入れたキャンプ場には、デジタルの利点と人の温かさを実感しながら、自然の中で自分自身と向き合いゆっくり時間を楽しむ、キャンプ本来の姿がありました。

*フルフックアップサイト=キャンピングトレーラーの機能をフル活用するための電源、給水、排水、有線インターネット、テレビ用の配線が備えられたキャンプサイト「やすらぎの森オートキャンプ場ホームページより引用」

長野県信濃町 やすらぎの森オートキャンプ場
住所:長野県上水内郡信濃町野尻1200-45 「信濃町ノマドワークセンター(旧『矢保利の館』)」隣接
電話番号:049-287-8807(運営事務局)
https://yasuragi.natureservice.jp/

関連する記事

 
 
 

話題沸騰中!
『Snow Peak LAND STATION HAKUBA(スノーピークランドステーション白馬)』を現地リポート!
みんなが安心して楽しめる空間には”ウィズコロナ“と向き合うさまざまな工夫がありました。

 
 
 

飯田市の人気ドライブインが団体客の受け入れを再開
感染症対策を地元住民と共に探るシミュレーション
地域一丸となって“ウィズコロナ”に挑みます

 
 
 

地域連携DMO南信州観光公社 主催
「新型コロナウイルス対策の緊急セミナー」を追った(前編)

 
 
 

地域連携DMO南信州観光公社 主催
「新型コロナウイルス対策の緊急セミナー」を追った(後編)