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地域連携DMO南信州観光公社 主催 新型コロナウイルス対策の緊急セミナー

取材日:2020/6/18-6/19

都道府県をまたぐ移動制限が全面解除された6月19日の前日。飯田市を舞台にウィズコロナ、そしてアフターコロナへと県内観光戦略の未来を牽引すべく地域が連携する緊急セミナーが開催されました。

今回は、阿智☆昼神観光局の白澤裕次代表取締役や飯田保健福祉事務所長の松岡裕之所長など、計6名のパネリストが登壇。各専門分野でのキャリアから感染症対策と観光産業への提言がなされました。
会場はソーシャルディスタンスが保てるよう、1テーブルに1人ずつ着席するスタイルがとられました。さらに、動画投稿サイト「ユーチューブ」やビデオ会議サービス「Zoom(ズーム)」を用いてオンラインでも参加できる体制がとられ、合計で約240人が参加。シルクホテルにて感染症対策を講じたバイキング形式の昼食体験会も開催されました。
県内観光に焦点を置いた18日のセミナー内容を中心に前編・後編に分けて紹介します。

=南信州観光公社代表取締役 高橋充氏=

“ウィズコロナ”“アフターコロナ”時代の観光について、感染症対策に照らし合わせた受け入れ体制構築は大前提です。
その上で、今後は『国内旅行回帰』『自然回帰』『自身の健康や免疫力向上』などが旅の新たなキーワードになると予測しています。


~高橋充(たかはし・まこと)氏~
大手旅行代理店で教育旅行部門のセールスを担当。
飯田市に飯田観光協会職員として移住し、南信州観光公社設立より支配人として体験型観光の企画・プロモーション・受入コーディネートや地域連携システムの構築。
販売ツールの作成等を担う。専務取締役を経て現在は代表取締役社長を務める。

また、マイカーなどへの移動手段の変化に伴い、旅行単位が団体から個人へと加速していく。
これまでの低価格で大量集客の旅から、高品質・高価格・地域共生型のスタイルを提案することが地域観光の目指す方向性です。
地域との連携もますます重要になるだろう。事業者や住民一体で感染症に対する知識や工夫を共有しながら旅の仕掛けと企画を進めていきたい。

=長野県観光機構 佐藤啓介=

ウィズコロナやアフターコロナの観光戦略の方向性を考えるにあたり、私たちが注目している7つのポイントをご紹介します。
観光の現場として今後は感染症対策が重要な位置づけになるのは言うまでもありませんが、対策の一つとして物理的接触の削減があります。
例えば、旅館ではこれまで入口でお客様をお迎えして部屋まで荷物を運ぶなどの『おもてなし』が難しくなり、デジタル上での接客や無人化が進むはずです。これまで大切にされてきた『おもてなしの心』と物理的接触を減らす『デジタル技術の活用』をバランス良くサービスに組み込むことが重要です。


~佐藤啓介(さとう・けいすけ)~
2002年に広告会社に入社。
パブリック領域の広告プロデュース業務に従事し、2015年からは地方創生関連業務をメインに活動。
2018年7月に長野県観光機構に出向し、プロデュース業務やマーケティング業務に従事。
2020年3月からは茅野市観光アドバイザーにも就任。

今後はテーマパークなど人が密集する場所から山や海などのアウトドア・自然といったものが趣向されていくでしょう。長野県の強みを生かせるチャンスです。また、団体旅行から個人旅行、バイキング・ビュッフェから個室・貸し切りなどへとプライベートなサービスへの需要も高いでしょう。

今後の長野県観光攻略を考察するポイント
ポイント内容
1.安全・安心の再定義これまでの食品衛生や事故防止、熱中症対策に加え、感染症対策が新たな指標に
2.デジタルトランスフォーメーション物理的接触機会の削減へ。アナログからデジタルへの移行と新たな価値の創造
3.「個」化個人旅行/マイカー/個室・貸し切り/プライベートツアーなど、プライベートを意識したサービスへの転換
4.「疎」の価値海辺や山などアウトドアを趣向する割合の増加
5.休み方改革リモートワークの急速な普及。通勤時間減少などによって生まれる時間を有効活用できれば新たな観光チャンスに
6.ファンマーケティング 一過性ではなく、何度も訪れてもらえるようなファンづくりとサービス提供
7.厚利小売モデルへの転換高付加価値・高価値のサービス提供
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※佐藤の講演内容を基に作成

最近の注目事例として、あるゲストハウスの『オンライン宿泊』という取組をご紹介します。ゲストハウスに訪れる顧客は単なる宿泊ではなく出会いや交流に価値を置いていることに着目し、その価値をオンラインで提供するものです。オンライン上で“良い経験”をした顧客は高確率で実際に宿泊するはず。いかにオンラインでファンづくりを進めるか。ファンの気持ちを汲み取ったサービスを提供できるかがますます重要になってくるのではないでしょうか。

=阿智☆昼神観光局代表取締役 白澤裕次氏=


~白澤裕次(しらさわ・ゆうじ)氏~
故郷である阿智村の第三セクター「阿智総合開発」(現ジェイ・マウンテンズ・セントラル)に入社後、2010年に代表取締役。2016年には「阿智☆昼神観光局」代表取締役に就任。日本一の星空を軸とした地域づくり手掛け、阿智村の観光や地域発展の一翼を担う。また、南信州観光公社取締役として、広域観光振興にも提言を行う。

これまで阿智村・昼神温泉郷に訪れるお客さまの9割が県外在住者でした。緊急事態宣言が発令されたと同時に阿智村・昼神温泉郷の観光施設は一斉休業しました。県外のお客さまがほとんどを占め、感染リスクが高い地域だからこそ早く決断しなければいけないと感じました。

緊急事態宣言を受け、”StayHome”生活を余儀なくされている人たち向けに、SNSを利用したプレゼントキャンペーンを実施しました。『日本一の星空の村』『温泉の村』として、自宅でリラックスしていただければと双眼鏡や日食グラス、入浴剤を約1100名にプレゼント。キャンペーンを機にファンづくりやPRにもつながったと感じています。

6月1日からは村民・県民の受け入れを開始。県民向けキャンペーンでは、お客様に分かりやすい説明とスムーズな予約を進めるため、観光局で全て予約を受け付け・管理しました。これまであまり利用していただけなかった北信~中信のお客さまが中心で予約開始20日で5000人に至りました。「長野県の南には昼神温泉がある」という認識を少しでも広めることができた重要なステップだったと考えています。

感染症に対して基本的な対策は徹底していくことはもちろんですが、お客さまにしっかり情報発信していくことが大切です。施設での対策について動画を作成し、ホームページで公開しています。
また、阿智昼神観光局では、星空をデザインしたオリジナルマスクを作成し、旅館や観光施設に配布しました。接客スタッフが同一のマスクを着用することで、連帯感を持って感染症対策を継続することへのPRにもつながっています。

今後の集客・プロモーションとしては、地元需要の喚起は引き続き継続していく予定です。県民向けや近隣エリア、全エリアからの利用促進プランなどお客さまのエリア毎に焦点を置いたプランを企画しています。

阿智村・昼神温泉郷のポストコロナ戦略のポイントとしては主に5つです。

阿智村・昼神温泉郷のポスト コロナの基本
Point1旅館、ホテルの経営体質変化
稼働目標60%へ
従来品質の改善、品質向上、理解される高価格を実現する
Point2お客さまによる選択制で3密を念頭に置いたオペレーション実施
Point3個人のお客さまを受け入れるための投資
(快適さを追求した施設リノベーション等)
Point4入場制限や予約制の導入で客数の把握
→万が一の際に速やかな対応が可能
Point5長期滞在の需要による広域的な地域観光
市町村単位→エリア単位へ
滞在型の観光地をエリア一体として主導する必要性
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*白澤氏の資料と講演内容を基に作成

感染症対策として従来の60%の稼働を進めている中、品質向上などの工夫によりお客さまに理解される高価格の実現が重要です。
例えば、星空を観察できる『星空ナイトツアー』を提供しているが、レジャーシートではなくリクライニングチェアにグレードアップしたオプションの提供を考えています。また“幻の和牛“とも言われる阿智村のブランド牛『村沢牛』を使用した地産地消メニューの食事プランの導入も検討中です。

食事のスタイルや時間も様々なスタイルがあって良いでしょう。全施設がやり方を統一する必要もないし、お客さま自身が個室にするのか客室で食べるのか、食事時間も何時にするのか選択してもらう方法が浸透していけば良いと感じています。

入場制限や予約制の導入は、お客さまに安心を提供する上でも重要です。来場数や居住地を把握することで、万が一の時も速やかに対応が可能となるでしょう。
星空ナイトツアーも完全予約制です。こちらもサイト上に感染症対策の動画を載せ、お客さまへの周知を図っています。
ナイトツアーは悪天候時も楽しめるコンテンツを用意していますが、やはり天気や時期によって来場数のバラつきはあります。ダイナミックプライシング(需給に応じて価格を変動)を導入したところ、総客数は減少しましたが、売り上げは伸びました。

最後に、旅行マインドや旅行スタイルの変化の中で選ばれる地域になるためには、個別にPRするのではなくエリア一体でのプロデュースが求められます。
長期旅行地へと変化していくために、アクティビティ・体験・食事・宿泊などをかけ合わせたプランを関係機関が連携しながら一元的に売っていくことが不可欠です。マーケットの変化と共に私たち観光業界も同じように変化していかなければいけないでしょう。

前編 終

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