event

諏訪大社『式年造営御柱大祭(御柱祭)』とは?

7年(例年、寅と申の年)ごとに、4月から6月にかけて諏訪地域で実施される『御柱祭』。諏訪大社の宝殿の造営と社殿の四隅にある御柱を山から運び出し建て替えを行う神事のことで、坂をダイナミックにかけ下りる木落しを、一度は目にしたことがある人も多いはず。この記事では、御柱祭期間中に行われる行事、式典をまとめました。諏訪大社と御柱祭の歴史を知り、マナーをもって神事を見守りましょう。

更新日:2022/05/16

LINE Twitter Facebook

TOP PHOTO:御柱祭最大の見せ場、木落し(上社)の様子 ©︎諏訪地方観光連盟

2022年は、上社・下社ともに『山出し』は中止となりました

※新型コロナウイルス感染症対策により、曳行予定が変更になる場合があります。あらかじめ、諏訪地方観光連盟の公式サイトをご確認ください。

☞諏訪地方観光連盟 御柱祭観光情報センター
http://www.onbashira.jp/

諏訪大社『式年造営御柱大祭(御柱祭)』とは?

全国に1万以上ある諏訪神社の総本社・諏訪大社。起源は1500年から2000年前といわれ、日本最古の神社の一つです。寅と申の年に諏訪大社の宝殿をつくり直し、社殿の四隅にある御柱を建て替える諏訪地方の伝統的な神事が諏訪大社『式年造営御柱大祭(以下、御柱祭:おんばしらさい)』です。平安初期から続き、絵巻や古事記などに記載があるほど由緒ある祭りですが、実は御柱祭の起源や祭りを行う理由は、明らかになっていないのだとか。
そんな御柱祭には諏訪地方6市町村(岡谷市、諏訪市、茅野市、下諏訪町、富士見町、原村)、約20万人の氏子が参加。16本のモミの巨木が、氏子たちによって山から里、里から宮へと運び出されます。1本の御柱は約16トン。この大木を1000人から3000人の人力のみで移動させます。御柱祭は人と自然のエネルギーを感じられる神事なのです。
諏訪大社は、諏訪湖周辺に4つの境内があり、二社四宮でひとつの社となり、以下のようにわけられています。

・上社:「本宮」「前宮」
・下社:「秋宮」「春宮」

上社:「本宮」「前宮」とは

本宮:本宮幣拝殿は1835年に建立された国の重要文化財 ©︎諏訪地方観光連盟

前宮:前宮本殿は元あった本殿が取り壊され、1932年に現在の本殿が建立された。建築材には伊勢神宮の古材を使用 ©︎諏訪地方観光連盟

本宮(諏訪市)

幣拝殿(へいはいでん)と片拝殿(かたはいでん)のみで本殿をもたず、諏訪造りという独持の様式。ご神体は御山・守屋山。

前宮(茅野市)

諏訪信仰発祥の地と伝えられており、かつて諏訪大社の頂点に位置した役職・大祝(おおほうり)の住まいがあった。諏訪大社の中で唯一本殿をもつ。ご神体は御山・守屋山。

下社:「春宮」「秋宮」とは

春宮:春宮幣拝殿は1780年に建立された国の重要文化財 ©︎諏訪地方観光連盟

秋宮:秋宮神楽殿は1835年に建立された国の重要文化財。神楽殿守る狛犬は全長1.7mあり、青銅製の狛犬としては日本一の大きさ ©︎諏訪地方観光連盟

春宮(上諏訪町)
二重楼門造りの拝殿と左片拝殿及び右片拝殿が横に並ぶ。ご神木は杉の木。

秋宮(下諏訪町)
長さ13mの太注連縄をもつ神楽殿が特徴。拝殿、左右片拝殿と御宝殿は春宮と同様の様式でつくられている。ご神木はイチイの木。

御柱祭のはじまり。大迫力の『山出し』

全16本のモミの巨木の御柱は、『山出し』で里へと運ばれます。『山出し』は、御柱祭のなかでも、道中の難所の多さから氏子の技と団結力が試される緊張感ある行事です。
また、上社と下社ではルートも特色も異なります。全3日間の『山出し』のルートと上社、下社それぞれのポイントをご紹介します。

*新型コロナウイルス感染症対策により、曳行予定が変更になる場合があります。あらかじめ、諏訪地方観光連盟の公式サイトをご確認ください。

☞諏訪地方観光連盟 御柱祭観光情報センター
http://www.onbashira.jp/

上社『山出し』

11.9kmの道のり。2本の角メドデコをもつ御柱で進む迫力
ポイントは『穴山の大曲』『木落し』『川越し』!

雪解け水流れる宮川を渡る御柱。寒さをものともしない氏子の気迫と気合いが伝わる ©︎諏訪地方観光連盟

3日間かけて、氏子が八ヶ岳の麓から8本の御柱を御柱屋敷まで運び出す上社の『山出し』。氏子が縄を引き、難所である住宅地のカーブ、急坂、川を含む11.9kmの道のりに勇敢に挑みます。

【ルート】

1日目:八ヶ岳の麓1300mの網置場→穴山の大曲→子之神社
2日目:木落し上→木落し→川越し
3日目:(木落し上→木落し→)川越し→御柱屋敷

※上社の『山出し』は「本宮一」から「本宮四」、「前宮一」から「前宮四」に区分けされた計8本の御柱を曳行します。

   

【概要や歴史背景】
本宮と前宮からなる諏訪大社・上社。上社の『山出し』は、御柱を八ヶ岳の麓1300mの綱置場から曳き出すところからスタート。3日間かけて、難所を越えながら8本の御柱を11.9km曳行し、経由地の御柱屋敷まで運びます。上社の御柱の特徴は、柱から突き出した角メドデコ。曳行担当の地区は毎回変わり、御柱祭の実施年の2月に各地区の代表の氏子によって抽選で決定します。

   

【ポイント】
『穴山の大曲』:民家に囲まれた狭いカーブを通過する下社の『山出し』最初の難関。てこ棒を使って難所を少しずつ通過。力だけでなく技術も必要になるため、代々引き継がれてきた氏子の技が発揮される場面です。

『木落し』:メドデコに氏子を乗せたまま御柱が27度の傾斜を下っていく、『山出し』一番のポイント。大歓声のなか、急坂を下る様子は迫力満点です。

『川越し』:水温10度を下回る宮川を渡る『山出し』最後の難所。御柱を雪解け水で洗い清め、川沿いにある御柱屋敷に安置し、御柱祭最初の3日間を終えます。

メドデコにつかまる氏子が印象的な上社の木落し。御柱が急坂を下る緊張感高まる瞬間 ©︎諏訪地方観光連盟

下社『山出し』

注連掛(しめかけ)までの4.7kmを勇ましく曳行する。
難所は『萩倉の大曲』『木落し』!

   
急斜面を一気に滑り下りる下社の木落し。安全に下れるよう、担当地区ごとに御柱の角度や向きを調整して木落しに臨む ©︎諏訪地方観光連盟

棚木場から経由地・注連掛まで8本の御柱を運び出す『山出し』。全4.7kmの道のりに待ち構える全長100mの急坂を下る迫力満点の『木落し』は、地元男性の勇姿の場。

【ルート】
1日目:棚木場→斧立社(よきたてしゃ)→萩倉の大曲→木落し上→木落し→注連掛(しめかけ)
2日目:棚木場→斧立社(よきたてしゃ)→萩倉の大曲→木落し上→木落し→注連掛(しめかけ)
3日目:萩倉の大曲→木落し上→木落し→注連掛(しめかけ)

※下社の『山出し』は「春宮一」から「春宮四」、「秋宮一」から「秋宮四」に区分けされた計8本の御柱を曳行します。

   

 

【概要や歴史背景】
下社の『山出し』は、春宮と秋宮を目指して御柱を曳いていきます。御柱となるモミの巨木は、祭りの1年前に伐採し、皮を剥いて乾燥させたもの。下社の御柱伐採と曳行は、例年同じ地区が担当します。
東俣渓谷沿いにある棚木場をスタートした御柱は、氏子によって里に向かって曳行。3日間の『山出し』で御柱は棚木場から4.8kmの道のりを経て、最終地点の「注連掛(しめかけ)」へ。注連掛は御柱を清めて、『里曳き』まで御柱を安置する場所です。下社『山出し』の見せ場である木落しは有料観覧席のみ、ご覧いただけます。

   

【ポイント】
『萩倉の大曲』:民家に囲まれた狭いカーブを通過する『山出し』最初の難関。てこ棒を使って難所を少しずつ通過。力だけでなく技術も必要になるため、代々引き継がれてきた氏子の技が発揮される場面です。

『木落し』:『山出し』最大の見せ場。最大斜度35度、全長100mの斜面を下ります。御柱が崖の上からじりじりと曳かれ、急坂を下っていく様子は圧巻。

   
過酷な『山出し』の道中、沿道からの応援も氏子の力につながる。各地区ごと異なるカラフルな衣装 ©︎諏訪地方観光連盟

伝統芸能と御柱曳行が織りなす華やかな『里曳き』

*新型コロナウイルス感染症対策により、曳行予定が変更になる場合があります。あらかじめ、諏訪地方観光連盟の公式サイトをご確認ください。

☞諏訪地方観光連盟 御柱祭観光情報センター
http://www.onbashira.jp/

『山出し』の1ヵ月後に実施される『里曳き』。御柱祭のなかで最も華やかな3日間です。御柱は騎馬行列や花笠踊りなど伝統芸能を交えながら、氏子によって各神社の境内へと曳きつけられます。全3日間の『里曳き』についてご紹介します。

上社『里曳き』

前宮まで1.4km、本宮まで2.4kmの道のり
華やかな雰囲気のなか、御柱を曳く上社・『里曳き』!

みごとな騎馬行列を沿道から観覧する人々 ©︎諏訪地方観光連盟

3日間の『里曳き』で、御柱は最終目的地の前宮と本宮へと向かい、建御柱を経て諏訪大社を守る新たな存在に。本宮から出発する御柱迎えの行列や伝統芸能の賑やかさも印象的な行事です。

【ルート】
1日目:「前宮」なし
           「本宮」御柱屋敷→前宮本殿→わかされ
2日目:「前宮」御柱屋敷→前宮本殿
           「本宮」わかされ→本宮境内
3日目:「前宮」建御柱
           「本宮」建御柱

※『山出し』に引き続き、「本宮一」から「本宮四」、「前宮一」から「前宮四」に計8本の御柱を曳行します。

   

【概要や歴史背景】
御柱屋敷に約1ヵ月保管されていた御柱。『里曳き』の日程は、騎馬行列など華やかな雰囲気のなか行われます。上社の騎馬行列は神宮寺区(諏訪市)が行列を担当。3日間の『里曳き』で前宮までは1.4km、本宮までは2.4kmの道のりです。各宮への到着後、御柱からメデドコを外し柱の先端を三角錐状に切り落とす「冠落し」を行い、本宮と前宮の境内の四隅に御柱を立てます。こうして御柱は次回の御柱祭まで諏訪大社を守る存在に。

   

【ポイント】
『お舟』:曳行のスタートとともに本宮から迎えに来る宮司や御輿を担いだ行列のこと。3日間の『里曳き』のはじまりにふさわしい、気持ちが高まる演出です。

『建御柱』:『里曳き』のクライマックス。木遣りやラッパの演奏が行われるなか、御柱を人力で1時間かけて垂直に立てます。大木を人力で建てる技は、現代ではなかなか見られない貴重な光景で、緊張感も溢れます。

   
建御柱に向けて行われる御柱の冠落し。「斧(よき)取り」と呼ばれる役割の氏子が、斧を振り御柱の先端を三角錐状に切り落とす ©︎諏訪地方観光連盟

下社『里曳き』 

春宮まで1.7km、秋宮まで3.3kmの道のり。
『木落し』、長持の行列が圧巻の下社『里曳き』!

下社の『里曳き』のポイントのひとつ、長持行列。長持行列を担当する地区は、長持を担ぐための竿の選木、切り出しも行う ©︎諏訪地方観光連盟

下社の『里曳き』の3日間で、御柱は春宮、秋宮へと曳き付けられます。お宮への到着後、上社同様に冠落し、建御柱を実施。各宮までの道中、『里曳き』を盛り上げる賑いのなかでも『長持行列』の豪華さが目を惹きます。

【ルート】
1日目:「春宮」注連掛→春宮木落し→春宮
     「秋宮」注連掛→春宮木落し→春宮→下馬橋
2日目:「春宮」建御柱
     「秋宮」下馬橋→秋宮
3日目:「春宮」建御柱
           「秋宮」魁町→秋宮→建御柱

※『山出し』に引き続き、「春宮一」から「春宮四」、「秋宮一」から「秋宮四」に区分けされた計8本の御柱を曳行します。

上記のルートは、例年のスケジュールを参考にしており進行状況によって変更の可能性があります。

   

【概要や歴史背景】
注連掛を出発し、下社の『里曳き』がスタート。道中は神賑いが繰り広げられ、通りは賑やかな雰囲気に包まれます。下社の騎馬行列は例年、下諏訪町の第1区と第3区が担当。計8本の御柱は注連掛から春宮までは1.7km、秋宮までは3.3kmの道のり。無事に御柱が宮まで曳かれると、上社同様、冠落しを施し建御柱を行い、御柱祭は終焉を迎えます。

   

【ポイント】
『ミニ木落し』:『里曳き』の序盤、約1.2km地点で行われる春宮木落し。『山出し』ほどの落差ははありませんが、御柱によって、氏子を乗せたまま滑り下りたり、氏子を乗せずに下りたりと各地区によって個性が現れ、盛り上がる場面のひとつ。地元の人からは『ミニ木落し』と呼ばれています。

『長持行列』:下社の神賑いは、100竿を超える『長持(荷物を入れて運ぶ道具)行列』が魅力。総重量150キロを超える「長持」は、おかめの面が付けられていたり、たくさんの花で飾ってあったりとさまざまなバリエーションを楽しめます。

   
氏子を乗せ、ゆっくりと御柱を垂直に立てる建御柱。氏子は濃い桃色のおんべを振り、盛り上げる ©︎諏訪地方観光連盟

厳かな雰囲気の中行われる神事『宝殿遷座祭』

*新型コロナウイルス感染症対策により、曳行予定が変更になる場合があります。あらかじめ、諏訪地方観光連盟の公式サイトをご確認ください。

☞諏訪地方観光連盟 御柱祭観光情報センター
http://www.onbashira.jp/

上社『宝殿遷座祭』 
下社『宝殿遷座祭』 

『宝殿遷座祭(ほうでんせんざさい)』とは、諏訪大社の御霊代を改築した各宮の宝殿に移す神事のこと。地域の氏子がメインだった「『山出し』」「『里曳き』」とは雰囲気が異なり、諏訪大社主導で行われる重要な式典です。

まとめ

実施が迫っている『御柱祭』。諏訪大社と地域が一丸となってつくりだす神事は、厳かな雰囲気の中で行われます。2022年は残念ながら行われない式典もありますが、今一度、諏訪大社と御柱祭の歴史を知り、日本の伝統を学び直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

   

<著者プロフィール>
文:ナカノヒトミ
1990年生まれ / 長野県佐久市出身。2017年よりフリーライターとして活動開始。どこでも地元メディア『ジモコロ』などウェブメディアを中心に執筆を行う。2018年4月に雑貨屋〈シンカイ〉の店長になり、佐久市から長野市に引っ越す。2020年に出産し子育て&仕事の日々。

おすすめの記事

この体験をシェアする

LINE
Twitter
Facebook