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酒蔵ツーリズム「みなこいグランシェフ」プロジェクト始動! 宮田村、中川村、駒ヶ根市、飯島町の食×美酒×人の文化を未来へ

ふたつのアルプスに守られた「みなこい地域」の魅力を広く発信し、地域ブランド化をめざすDMO構想。その一事業である「みなこいグランシェフ」プロジェクト始動のイベントレポートをお届けします。

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食×酒×人を伝える「みなこいグランシェフ」プロジェクト

中央アルプスと南アルプスに抱かれた長野県伊南地域4市町村からなる「みなこい地域」。歴史的にもさまざまな分野で連携し、地域資源や歴史文化などを共有し合ってきた土壌がある宮田村(みやだむら)・中川村(なかがわむら)・駒ヶ根市(こまがねし)・飯島町(いいじままち)の頭文字をとった愛称で、この地域に「みんな来て!」との意味も込められています。
その「みなこい地域」の何よりの魅力が、ふたつのアルプスに守られた自然が寄り添う暮らしそのもの。そして、その独自性から生まれた食をはじめとするさまざまなコンテンツを結び付けることで新たな価値を生み出そうと、DMO構想のもと、市町村の枠を超えた企画が生まれています。

そのひとつが「アルプスの里五蔵(仮)酒蔵ツーリズム事業」です。ふたつのアルプスによる良質で豊富な水源に恵まれた「みなこい地域」は、ウイスキーや日本酒、ワイン、リキュールなど多様な酒蔵や醸造所が存在する、全国的にみても貴重なエリア。そうした特性を生かし、周遊・滞在型観光と地域ブランド化をめざす取り組みです。全国16カ所が選ばれた国税庁の「酒蔵ツーリズム」推進事業のひとつでもあります。

その一環として、地域の魅力を集めておいしいものを凝縮し、地元の酒を地域の店で飲める仕組みをつくろうと進めているプロジェクトが「みなこいグランシェフ」。5つの個性的な酒蔵の酒と、地域のクラフト作家の器、地元食材をふんだんに使った料理を五感を使って楽しむ、酒×食×器のペアリングです。

プロデューサーは、駒ヶ根市でブライダル演出などを手がける株式会社ワクワクカンパニー代表の渋谷浩之さん。

酒蔵は次の5つです。
【養命酒駒ヶ根工場(駒ヶ根市)】400年前から酒造りを手がけ、世界的知名度も高い「養命酒」を造るほか、人気のクラフトジンやリキュールなども製造。
【本坊酒造マルス信州蒸溜所(宮田村)】県内で唯一、ウイスキー蒸溜所の見学ができ、ワインも醸造。2020年9月リニューアルオープン。
【南信州ビール駒ヶ岳醸造所(宮田村)】柔らかい口当たりのビールを生み出す県内第一号のクラフトビールメーカー。
【米沢酒造今錦工場(中川村)】代表銘柄「今錦」をはじめ、全ての日本酒を伝統的な酒槽(さかぶね)で搾り、2020年世界酒蔵ランキング9位。
【長生社(駒ケ根市)】全ての日本酒を純米吟醸酒で醸す県内唯一の酒蔵。代表銘柄「信濃鶴」ブランドは100年を超える歴史も自慢。

そして、この個性豊かな酒蔵に合わせ、中川村の吹きガラス工房「スタジオプレパ」と「錬星舎(れんせいしゃ)」の4人の作家が、それぞれの酒のつくり手の思いも汲み取りながら、5種類の酒器を制作しました。

「みなこいグランシェフ」プロデューサーの渋谷浩之さん

吹きガラスによる個性豊かな5種類の酒器

みなこい五蔵の酒×美食「みなこい美食会」初開催!

こうした魅力を集結させた食事会「みなこい美食会」が、築100年の古民家をリノベーションした飯島町の一棟貸し古民家宿「nagare(ながれ)」で初開催されました。「みなこい地域」ならではの食材をフレンチのフルコースに仕立て、五蔵の酒とのマリアージュを楽しむ企画です。会場の装花は中川村のフラワーショップ「さくらびと」が担当。開演時間にちょうど花が美しく咲くようにつぼみの状態で装飾されたりと、細部までこだわりを感じる演出です。

2020年夏にオープンした、1日1組限定の貸切宿「nagare」

和の空間にマッチしつつ存在感を放つダイナミックな竹と花の装飾

卓上の可憐な花は開演時間に合わせてつぼみから開花

華やかなメニューがさらにイベントの気分を高めてくれる

そして、渋谷さんが「このプロジェクトは地域食材を紡ぐ料理人を一番にフォーカスしている」と話すほど力を入れている料理を手がけたのは、「伊那エリア全域のフランス料理で一番」と渋谷さんが絶賛する駒ヶ根市のフレンチレストラン「ビストロボンコパン」のシェフ・山本雅樹さん。「第一回目の美食会の料理人はこの人しかいない」として熱望して今回のイベントが実現したそう。その料理と合わせ、駒ヶ根市のバー「Arika」の松本明さんが五蔵の酒をセレクトしました。

本場フランスの星付きレストランで料理を学んだ経歴を誇る山本シェフ

「南信州ビール」での下積みを経て「Arika」を開いた松本さん

それでは、全マリアージュをご紹介します。

1品目:
【燻製した鹿肉】×【香の森】
中川村で獲れた野生の鹿を桜チップで軽く燻製にしたあとローストし、地元産のりんごのピュレを添えた一品。メイン料理に引けをとらないオードヴルで、クセも臭みもない鹿肉は、赤身肉ならではの肉の旨味と噛みごたえがありながら、りんごのピュレが後味を軽やかにしてくれます。
「香の森」は「養命酒」の人気のクラフトジン。香木「クロモジ」と18種類のボタニカルを組み合わせた森のような香りの高さが特徴で、食前酒としてはアルコール度数が高いことから、炭酸割で提供されました。マイヤーレモンを前日から漬け込んでいるのがポイント。通常のジンより香味成分を多く含んでいる「香の森」は、通常のようにレモンを絞って炭酸で割ると香味成分が析出して白濁してしまうため、焼酎の前割の発想で漬け込んだそう。ジンの力強い香りをマイヤーレモンの爽快感がまとめ、さっぱりとした味わいの鹿肉ともよく合います。

前菜「燻製した鹿肉」は添えられた山菜がこの時期ならではの旬も彩る

「香の森」炭酸割用に作られた「錬星舎」の酒器はステムで気泡を表現

静寂な森を思わせる香りと重厚感のある味わいの「香の森」

酸味が少なく糖度も高い中川村産マイヤーレモンも今が旬

2品目:
【宮田村産息吹サーモンと駒ヶ根産長芋のタルタルガトー仕立て】×【信濃鶴 純米吟醸55頑卓】
「息吹サーモン」は、通常1年半から2年ほどかけて育てるサーモンを、アルプスの麓の冷たい清流で4~5年かけてじっくりと成長させ、脂が少なくあっさりした味わい。抜群に引き締まったプリプリの身は長芋のシャキシャキとした食感と相性もよく、駒ヶ根産レフォール(西洋わさび)が効いたヴィネグレットソース(フレンチドレッシング)が全体をまとめます。添えられた鱒子は小粒なぶん、旨味が強く濃厚で、料理を引き立てるアクセントに。
「長生社」の「信濃鶴 純米吟醸55頑卓(がんたく)」は、地元産の美山錦を55%まで磨いた、しっかりとした香味と低温発酵によるコクを感じる落ち着いた味わい。「野菜とよく合う」と「長生社」の社長が松本産にすすめたことで今回の提供が決まったという、酒蔵お墨付きのマリアージュです。

目でも舌でも楽しめる芸術的な一皿

「信濃鶴」誕生100周年でリニューアルされた「純米吟醸55頑卓」

「頑卓」とは長生社二代目社長のあだ名だとか

野菜のおいしさを生かす調理山本シェフの得意とするところ

3品目:
【ハンガリー産フォアグラのテリーヌと春日さんが育てた“紅ほっぺ”のアンサンブル】×【純米大吟醸 年輪(NENRIN)】
渋谷さんが今回のイベントで唯一、山本シェフにリクエストしたメニューが、このフォアグラのテリーヌ。通常はポルト酒などの洋酒で仕込みますが、なんと「米沢酒造」の酒粕を使っています。「米沢酒造」が手がける酒槽搾りは機械に頼らずゆっくりと圧をかけて搾るため、酒粕にもアルコールや旨味が残り、通常の酒粕よりも豊潤で、料理に使うと芳醇で香り高い味わいに。甘みと酸味のバランスがよい大粒のいちご「紅ほっぺ」との相性も最高です。ソースは飯島町で酢造りをする「内堀醸造アルプス工場」のバルサミコ酢と、中川村の日本みつばちのハチミツ、赤ワインソースの3種類。それぞれに濃厚な脂とのバランスが絶妙で、口の中で旨味が広がりますが、なかでもハチミツと合わせると高級スイーツのよう。宮田村産ライ麦のパンがまたよく合います。
料理と合わせた「米沢酒造」の「純米大吟醸 年輪」は、山田錦を39%まで磨き、香りが高く柔らかな口当たりでフルーティー。同蔵の酒粕を使ったフォアグラのテリーヌと合わないはずがありません。なお、この酒は世界的な賞である「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2020」の純米大吟醸の部で金賞を受賞し、さらに「リージョナルトロフィー」を受賞してベスト8に選出された銘酒でもあります。
「錬星舎」のグラスは、純米吟醸酒はもちろん、純米酒もおいしく飲めるように香りを包み込みすぎない広口で、注いだ酒がきらきらと反射し美しく見えるように工夫された形状。「米沢酒造」の代表銘柄でもある「今錦・おたまじゃくし」も彷彿とさせるフォルムも特徴です。

レーズンバターのように濃厚なフォアグラのテリーヌがいちごと好相性

コロンとした可愛らしい形状でおたまじゃくしからカエルの変化を表現

「純米大吟醸 年輪」は1年熟成によりまろやかで角が取れた味わいに

こだわりの酒槽搾りを説明する「米沢酒造」松下一成常務

4品目:
【中川村産鹿スネ肉のコンソメで作った冬野菜のポトフ グリルした鹿肉とともに】×【アンバーエール】
チキンでブイヨンをとったあとに鹿のスネ肉でコンソメに仕立て、野趣あふれる味わいの鹿肉のグリルも楽しめる一皿。ゴボウとニンジン、大根といった根菜の力強い旨味もスープに凝縮しています。
その鹿肉の野性味に負けないパンチのある味わいの南信州ビールの「アンバーエール」は、ホップとカラメルモルトが効いた紅茶のような香りが特徴。鉄分が豊富な鹿肉の赤身と赤いアンバーエールの色味も合わせたマリアージュです。
「スタジオプレパ」のビールグラスのかたちも特徴的。口が広がったグラスの形状により最初に炭酸ガスが抜けるため、ビールの刺激が弱まり、柔らかさを感じます。丸みを帯びたグラスのスタイルは、古代エジプトの壁画に描かれたビールの容器に近いかたち。突起部分を指にかけ、手で包み込むようにすると安定感があり、手のひらで温めることで香りがどんどんと立ち上がるため、その変化も楽しめます。なお、茶色いグラスの色はUV対策が施されたビール瓶を表現していますが、今後は実際に南信州ビールの回収瓶でのリサイクルガラスを使う予定だとか。

栄養豊富なプチベールも煮込まれたポトフは冬にぴったり

琥珀色の「アンバーエール」は苦み、甘味、香味が好バランス

「純米大吟醸 グラスの持ち方をレクチャーする「南信州ビール」の竹平考輝常務

グラスの突起を親指または人差し指と中指の間にかけると手にフィット

5品目:
【活オマール海老と雪下ホウレン草のクレピネット】×【信濃鶴 純米大吟醸49 名田造無濾過生原酒】
テーブルに運ばれて来る前からオマール海老のよい香り! 文字だけでは想像がつかないようなメニューが並ぶ今回の料理のなかでも、一番の驚きがこちらです。帆立のムースとともにオマール海老を腸詰にしたクレピネットは、肉厚な海老のプリプリとした食感と上品で海老本来の甘さを感じる一品。寒さによって甘みを凝縮させた白菜のクリーム煮込みと、海老の殻から作ったクーリソース、ふたつのソースを絡めて食べると、しっかりと口の中で濃厚な味わいを楽しめます。そこから「信濃鶴 名田造無濾過生原酒」をひと口飲むと、なめらかな口当たりと華やかな香りの奥に上品な甘みや旨味が感じられる最高のマリアージュ。こちらも「長生社」の社長と料理長が「絶対に海老と合う」と松本さんに一切譲らず太鼓判を押した組み合わせだとか。ちなみに「名田造」とは創始者が灘で酒造りをしていたときに生まれた三男の名前で、のちの駒ヶ根市長だそう。命名のルーツも存在感のある銘酒です。
グラスもまた「長生社」社長の大のお気に入り。底の突起が日本酒のお猪口の蛇の目のような機能をもち、日本酒の透明度やゆらぎを確認できます。重量感もあるうえ、鼻頭が入る大きさなので、信濃鶴の甘くやさしい香りがそのまま感じられるのも特徴。試作品の段階で社長が惚れ込み、そのまま持って帰ったほどの出来栄えです。

豚肉の網脂で包むクレピネット。目でも楽しめるクリエイティブな一皿

白いソースは白菜のフリカッセ、黄色はオマール海老のクーリソース

ふわりと華やかな香りが漂う「名田造」。グラスは底の突起がポイント

オープンキッチンからテーブルの様子が見える配置

6品目:
【紫芝さんが育てた黒毛和牛フィレ肉のグリエ】×【信州みやだワイン紫輝 樽熟成】
黒胡椒を強めにふったメイヤーレモンのグラニテを経て、提供された肉料理は、信州プレミアム牛に選ばれた確かな味わいの飯島町「紫芝畜産」の黒毛和牛フィレ肉のグリエ。香りと食感に優れた長野県トップブランドの牛肉で、なめらかな脂肪と口どけのよさが魅力です。宮田村「やまだぶどう栽培組合」のヤマソービニオン種を丁寧に醸造した「マルス信州蒸溜所」の「信州みやだワイン紫輝」を使った奥深いソースが、肉の柔らかさと上品な脂のおいしさを引き立てます。添えられたシンプルなジャガイモのドフィノアがまた絶品。
その「信州みやだワイン紫輝」を樽熟成させたワインは、樽の香りによってヤマソービニオン種の野生味が落ち着いた味わいで、力強い料理の絶好の引き立て役。また、最初はヤマソービニオン種のワイルドさもありつつ、次第にカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインのニュアンスにシフトしていくので、味のグラデーションも楽しめるワインです。タンニンが口の中をリセットしてくれるので、次々と新しい味わいに出合える感覚も味わえます。

黒胡椒が効いたメイヤーレモンのグラニテで口直しを

絶妙な火入れもシェフの真骨頂。ドフィノアと山菜を添えて

特別に「マルス信州蒸溜所」ソムリエが登場。さらに本格派の雰囲気に

樽や木の温もりによる柔らかい風味のワインはメインディッシュに最適

7品目:
【3種のおつまみ】×【シングルモルト駒ヶ岳 リミテッドエディション2020】
「マルス信州蒸溜所」で3年目となる「リミテッドエディション」。3年ものを中心とした若いモルト原酒ながら、シェリー樽とアメリカンホワイトオーク樽で熟成されたウイスキーをブレンドし、上品な甘い香りとビターな香りなど、複雑な香りを楽しめる2020年限定瓶詰酒です。ディジェスティフ(食後酒)のようにウイスキーを楽しむ贅沢な今回のコース。そのウイスキーと合わせて作られたおつまみは、グラニュー糖を絡めたメイヤーレモンをシロップ漬けと、3日ウイスキーに漬け込んだ山本シェフ宅の干し柿、ブルーチーズといぶりがっこ。いずれもウイスキーとの相性抜群です。
グラスは「スタジオプレパ」のロックグラス。円筒ではなく円錐型で、通常のロックグラスよりひと回り小ぶりで女性にも持ちやすいかたちです。窯の中でガラスを吹くことで、透明ではなくあえてうっすらと茶色く色付いているのも特徴。吹きガラス独特のクラフト感も味わえます。

日が暮れ、シルエットが浮かび上がる様子も美しい「nagare」

オーソドックスながらロックでも水割りでも使える汎用性の高いグラス

左からブルーチーズといぶりがっこ、干し柿、マイヤーレモン

「ゆっくりと香りを楽しんで」と「マルス信州蒸溜所」折田浩之所長

8品目:
【紅ほっぺのミルフィーユショコラと飯島産ルレクチェのソルベ】×【マルスコーヒー】
最後まで贅沢なフルコース。濃厚なショコラのビターな味わいと、なめらかなソルベの食感に舌鼓を打ってフィニッシュへ……。猿田彦珈琲の生豆をウイスキー樽に貯蔵して熟成させ、焙煎した「マルスコーヒー」の格別なまろやかさが、さらにリッチな余韻を感じさせてくれました。

なめらかなチョコレートとパイ生地を丁寧に重ねたミルフィーユ

「駒ケ岳」のウイスキー樽で熟成させたコーヒーは深い味わいの名品

美食会の最後には山本シェフ自ら料理の説明も

「nagare」の蔵のライトアップでさらなる趣と特別感を演出

こうして「みなこい地域」の魅力をこのうえなく堪能した「みなこい美食会」。今後は、さらに地域独自の価値としてブラッシュアップし、「みなこい地域」全体に波及するよう取り組みを進めていくそうです。
観光において食は欠かせないコンテンツ。滋味豊かな食材、極上の料理は旅の目的にもなります。また、地元で世界クオリティのお酒や色が楽しめることが地域の魅力になり、また地元の人たちの誇りになっていくことでしょう。

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